宇宙作家クラブ
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No.168 :STS-92カウントダウン再開は日本時間午後6時過ぎ
投稿日 2000年10月9日(月)15時22分 投稿者 江藤 巌

 相変わらず天候の悪化が予想されるケネディ宇宙センターだが、打ち上げ当日を迎えて準備自体は着々と進行している。
 整備作業のため閉じていた発射台の回転整備構造は、現地時間の午前1時(日本時間午後2時)ころに開かれてディスカヴァリーが姿を現したはずで(154の画像の状態になる)、カウントダウンは現地時間午前5時40分(午後6時10分)にTマイナス11時間から再開されることになっている。外部タンク(ET)への推進剤充填は午前10時40分(午後11時40分)から始まる。

No.167 :シャトル9日打ち上げ準備再開
投稿日 2000年10月9日(月)11時08分 投稿者 江藤 巌

 スペースシャトル・ディスカヴァリーは、10月9日東部夏時間午後8時5分(日本時間10日午前9時5分)にシャトルの100回目の打ち上げ(STS-92)を行うスケジュールで、準備を再開した。カウントダウンは現在Tマイナス11時間で停止している。
 打ち上げ延期の原因となったポゴ抑制バルブはすでに交換されている。またもう一つの懸念材料だった外部タンク(ET)との結合ボルトについては、これまでの打ち上げの映像記録を詳しく分析した結果、ボルトが完全に収納されなくともオービターとETとの安全な分離に支障がないと判断され、そのまま打ち上げることに決定した。
FLORIDA TODAYの記事
SpaceDailyの記事
 打ち上げの最大の障害は天候で、いまのところ9日夜は強風で打ち上げに不適の可能性が70%との予報は変わっていない。ケネディ宇宙センター(KSC)の気象現況

No.166 :ディスカヴァリーのバルブ交換完了
投稿日 2000年10月8日(日)12時39分 投稿者 江藤 巌

 スペースシャトル・ディスカヴァリーは、39A発射台上でのポゴ抑制バルブの交換作業を完了し、点検もパスした。こちらの面では9日夜(日本時間10日朝)の打ち上げの障害はなくなったわけである。しかし9日の天候は打ち上げに適さない確率が70%と予想されている。
 もう一つ打ち上げ延期の原因となった外部タンク(ET)の分離ボルトだが、FLORIDA TODAYに分かりやすい説明がある。また問題とされた前回の打ち上げの分離の際のボルトの映像と、正常に作動したボルトの映像がある。中央に同心円上に見えるのがオービターとETの結合部で、影の伸び方からボルトの突出が分かるだろう。

No.165 :プレスバッジ ●添付画像ファイル
投稿日 2000年10月7日(土)21時55分 投稿者 笹本祐一

 打ち上げも延期になりましたので小物の紹介です。
 これが今回の取材バッジ。
 シャトルに限らず、NASAの施設は通常は一般人は立ち入り禁止だから、何かイベントがあるたびに外部向けの入構バッジが発行される。シャトル打ち上げで発効されるプレスバッジは、打ち上げ四日前のケネディ宇宙センターのクルー到着からシャトルが着陸する日まで有効というもの。もっともこれでケネディ宇宙センターのどこにでも行けるようになるのかというとそんなことはなく、署員の同行なしに立ち入りできるのはプレスサイトと食事のためのカフェテリアに限定されている。


No.164 :N-SAT-110打ち上げ成功
投稿日 2000年10月7日(土)13時29分 投稿者 江藤 巌

 宇宙通信JSATの両社が共同運用する静止通信衛星N-SAT-110が、日本時間7日の午後8時に、フランス領ギアナのクールー宇宙センターからアリアン42Lで打ち上げられて、静止遷移軌道に投入された。
 N-SAT-110は赤道上の東経110度の上空に静止する予定で、2001年後半からCSディジタル放送に利用されることになっている。東経110度には現在放送衛星(BS)が静止しており、N-SAT-110が稼働するようになれば、これまでは別々に向けたアンテナが必要だったBSとCSとが、共通のアンテナで受信できるようになる。
宇宙通信のプレス・リリース
JSATのプレス・リリース
アリアンスペース社のプレス・リリース
 

No.163 :天候悪化の懸念
投稿日 2000年10月7日(土)12時58分 投稿者 江藤 巌

 スペースシャトル・ディスカヴァリーは、打ち上げ延期の原因になったポゴ抑制バルブの交換作業に入っている。
作業そのものは半日程度で完了し、試験や点検を済ませれば9日夜(日本時間10日朝)には再度の打ち上げの試みも可能だが、問題は天候の悪化が予想されていることである。
寒冷前線の通過でケネディ宇宙センター(KSC)周辺は9日、10日ともに強い風が吹くと予想されている。
KSCのシャトル滑走路に横風が吹きつけていると、打ち上げ事故でオービターが緊急着陸する際に支障があるので、打ち上げの際の横風に関しては厳しい規定が設けられている。
現在の天気予報では、9日10日はともに打ち上げに適した気象条件になる確率は30%、11日には70%だとのことである。
12日には、隣接するケイプ・カナヴェラル空軍ステーション(CCAFS)からアトラス2Aが打ち上げられる予定なので、シャトルが11日までに打ち上げられないと空軍のスケジュールが優先され、
シャトル打ち上げはアトラス2Aが上がってからのことになる。

No.162 :ケネディ宇宙センター、シャトル打ち上げ延期記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2000年10月7日(土)00時28分 投稿者 笹本祐一

 ケネディ宇宙センターのニュースセンターで、六日の午前一〇時から延期記者会見が行われた。
 現在のところ、打ち上げは九日月曜日夜に予定されている。宇宙飛行士は引続きケネディ宇宙センターに滞在する模様。
 なお、射ち上げが一二日まで延びるとアトラスの打ち上げと重なるため、さらに延期される可能性も出て来る。

 なお、この記者会見場、実はあまり広くない。幅は、普通の教室くらいはあるが、記者席はパイプ椅子が六列ほど、大きさとしては種子島宇宙センターの半分ほどである。


No.161 :シャトル打ち上げは9日以降まで延期に
投稿日 2000年10月6日(金)13時07分 投稿者 江藤 巌

 もう笹本・あさり両特派員にも情報が入っているとは思うが、
スペースシャトルSTS-92の打ち上げは早くとも9日月曜までは行われないことになった。
NASAではメイン・エンジンのポゴ・バルブを交換することに決定し、交換作業と交換後の試験の時間を考えると、打ち上げは9日以降となる。
 この間にNASAでは、もう一つの懸念材料となったETの爆発ボルトの問題の詳しい分析を行い、結論を出したい意向である。
 9日に打ち上げが行われるとすれば、打ち上げ時刻は国際宇宙ステーションの軌道の関係で5日の場合よりも早まり、午後8時5分(日本時間8日午前9時5分)頃になると思われる。

No.160 :J-1改開発見直しか
投稿日 2000年10月6日(金)11時27分 投稿者 江藤 巌

 今朝の日経新聞は、科学技術庁が中小型衛星打ち上げ用ロケット「J1改」の官民共同開発計画を見直す方針を決め、2004年の初打ち上げの予定が延期されるという記事を載せている。NIKKEI NET
 J-1改こと先端技術実証ロケットは、低高度軌道に3.5〜4トン、静止遷移軌道に1トンのペイロードを投入できる中級打ち上げ機で、現在は開発段階にある。
 先端技術実証ロケットは、第1段にはアトラスの弾体を流用し、ロケット・エンジンは旧ソ連が有人月着陸計画のN-1打ち上げ機用に開発したクズネツォフNK-33を使用する。第2段にはまったくの新規開発になる、世界初の液化天然ガス(LNG)燃料のロケット・エンジンを使用する予定である。
 ところで、このJ-1改と言う通称も、下の144で松浦晋也が指摘したのと同じ問題をはらんでいる。すなわち、名称こそJ-1ロケットの改良型のようだが、J-1改はまったく別の打ち上げ機なのである。もともとH-2の固体ロケット・ブースターとM(ミュー)-3SIIの上段という有り物を組み合わせて開発した全固体ロケットのJ-1と、全液体ロケットのJ-1改とでは、技術的共通点はまったくないと言って良い。ただし現在NASDAでは公式にはJ-1改の通称を使っていない。

 

No.159 :シャトル打ち上げ延期の理由
投稿日 2000年10月6日(金)09時21分 投稿者 江藤 巌

 打ち上げの約9時間前に突然延期が決まったスペースシャトルSTS-92だが、延期の理由は二つあるようだ。
 一つはメイン・エンジンに推進剤を送る配管の途中にあるバルブの一つが、点検中に正常でない作動を示したこと。このバルブはポゴ・バルブと呼ばれ、推進剤の流量の変動によりロケットの燃焼が不整になり振動を起こす現象を抑制する働きがある。もしこのバルブが飛行に不適と判断されれば、ディスカヴァリーのエンジン室に作業員が潜り込んでバルブを交換する必要があり、打ち上げは数日遅れることになろう。
 もう一つの理由はいま一つ明確ではないが、オービターと外部タンク(External Tank)とを結合していて、ETの推進剤を使い切った後両者を分離するための爆発ボルトの作動が疑わしい可能性が出て来たようだ。前回の打ち上げの記録の分析からボルトの作動不良が生じて、オービターとETが完全に分離せず衝突する恐れがあるとのことだが、どうもこちらは点検中に問題が発見されたわけではないらしく、なぜ打ち上げ直前の土壇場になってこのような問題が取り上げられたのか不明である。
 どちらの問題も、潜在的には1日以上の打ち上げ延期を招く可能性があるが、現段階ではNASAの対処方針は明らかにされていない。
 いずれにしろ打ち上げは少なくとも24時間は延期されたのだが、天候は現在悪化しつつあり、6日夜(日本時間7日昼)に打ち上げが行われる可能性はむしろ前日よりも低くなっている。
宇宙開発事業団(NASDA)の発表
FLORIDA TODAY Space Onlineの打ち上げ速報
FLORIDA TODAY Space Onlineのニュース記事
SpaceDailyのニュース記事

No.158 :打上げ延期とカウントダウンボード ●添付画像ファイル
投稿日 2000年10月6日(金)09時11分 投稿者 笹本祐一

 乗組員のウォークダウンに間に合うような時間にケネディ宇宙センターのニュースセンターに戻ったら、なんとカウントダウン・タイマーがプラスになり、しかも数字が刻々と増えている。
 あれ、知らないうちに打ち上げになった?でも発射台にシャトルいるよなあ。
 事情を聞いてみると、ちょっとした問題が発生したため最低二四時間の延期が現地時間の二時前に決定されたらしい。
 原因は、前回宇宙ステーションから帰還したシャトル、「アトランティス」と、外部燃料タンクを結合するボルトが、オービターとの分離後、外部燃料タンク側に適切に収納されたいなかったことが判明していたため、技術的に検討する必要が生じたため。

 さーて、延泊だあ。
 なお、二四時間延期で打ち上げられる場合、打ち上げは宇宙ステーションの軌道の関係で三〇分ほど早まります。……てことは、二三時間半の延期か?
 ところで、これがニュースによく出て来る、あのカウントダウンボードである。
 ご覧のとおりでかい。対比のために立っているのは笹本。
 で、実はこの写真の左側にシャトルが写っている。なんせ相手は五・六キロ先、こんなに小さくなってしまうのである。


No.156 :シャトル打ち上げ延期!
投稿日 2000年10月6日(金)03時02分 投稿者 江藤 巌

 いま飛び込んで来たニュースだが、スペースシャトルSTS-92の打ち上げは、
6日の夜(日本時間7日昼)まで約24時間延期されるようだ。
理由は外部タンク(ET)との連結ボルトの問題とのことだが、詳細はまだ不明である。

No.155 :シャトルの発射台他
投稿日 2000年10月6日(金)00時47分 投稿者 江藤 巌

 さて、シャトルの発射台と言う場合、それに相当する語が実は二つある。
一つはLaunch Pad。これは打ち上げが行われる場所を指す。パッドは39Aと39Bの2個所あり、固定サービス施設が立っている。
もう一つはMobile Launch Platform(MLP)。下の写真で、シャトルの載っている碁盤のような大きな台を言う。
 MLPは名前のように移動式で、この下に巨大な無限軌道車Crawler Transporterをあてがって動かす。シャトルはVAB(Vehicle Assembly Building)の中でこのMLPの上に組み立てられ、長い道路をパッドまで移動して行くのである。パッドに付いたMLPは4本の足を降ろして固定され、MLPを降ろしたクローラーは元の道を戻って行く。

 ケネディ宇宙センター(KSC)の地理については、こちらの地図の方が分かりやすいかもしれない。これも左が北で、上が大西洋である。KSCの周辺は湿地帯で、バナナ川と呼ばれる入り江が入り込んでいる。中段やや左寄りにVABがあり、そこから真上(方角は西)にクローラウェイが延び、海岸の二つの発射パッドに達している。
 右上に突き出た部分がカナヴェラル岬(Cape Canaveral)で、KSCが地理的にもカナヴェラル岬にはないことが分かるだろう。この一体はケイプ・カナヴェラル空軍ステーションの敷地である。その右(南)にはカナヴェラル港があって、大西洋にパラシュートで落下したシャトルの固体ロケット・ブースター(SRB)回収するタグボートの基地となっている。
 地図の中段左寄りにあるSLFはShuttle Landing Facilityと呼ばれる着陸用の滑走路である。滑走路は長さ4572m、幅91.4mある。この滑走路はミッションを終えた帰還の際だけでなく、打上げ時の異常事態でオービターがKSCに緊急着陸(Return To Launch Site abort)する場合にも使われる。

No.154 :夜明けのディスカバリー ●添付画像ファイル
投稿日 2000年10月6日(金)00時00分 投稿者 笹本祐一

 さて、我々は一〇月五日の早朝に起き出し、まだ暗い中をケネディ宇宙センターに出掛けた。本日最初の報道イベントは、発射台解放後のシャトルの公開。
 通常ならこの発射台解放というイベント自体が公開されるのだが、今回は発射時間の関係でこれが午前一時半から三時半という非人間的な時間に行われる。だもんで、早朝からその姿を現わしたシャトル公開ということになったのである。
 夜明けのシャトルは、リドリー・スコットの映像のようで良い。陽が上がってしまうと、いつもどおりの見慣れたジェームズ・キャメロンのようになってしまうけど。


No.153 :国際宇宙ステーションを理解するために
投稿日 2000年10月5日(木)22時43分 投稿者 松浦晋也

 今回の打ち上げSTS-92は国際宇宙ステーション(ISS)組立を目的としています。

 しかし,ISSが「バラ色の未来の城」ではないことも理解しておかなくてはなりません。ISSは非軍事分野では過去に例がない大規模な国際協力プロジェクトです。
 ですが,ここに至るまでの歴史は「混乱」の一言でした。混乱の多くは主導国アメリカの国内事情によるものでしたが,過去15年の国際情勢も計画には大きな影を落としています。

 以下はISSの簡単な歴史です。

 ISSは1984年にレーガン大統領が,コロンブスのアメリカ到達500周年の1992年完成を目標に国際協力で建設するという構想を発表して始まりました。
 しかしその後1986年のチャレンジャー爆発事故により計画は大幅に遅れました。
 さらに,アポロ計画のような強い全米国民的モチベーションがないことと,NASAマネジメントの官僚化と硬直化により計画は二転三転を続けます。
 さらに国際協力という名の国家観の綱引きが,状況の混乱に輪をかけました。
 
 計画の停滞にいらだつ共和党ブッシュ政権は,予算に厳しい制限を付け,80年代末から90年代はじめにかけて議会からは打ち切り動議が毎年のように出されてはかろうじて否決となる状態が続きました。

 1987年には,巨大な一本のトラスに8枚の太陽電池パドル,カナダのロボットアーム米2モジュール,欧州1モジュール,日本1モジュールの4モジュール定員8人の基本設計が固まり,「フリーダム」とレーガン好みの名前がつきました。
 しかし1989年には大規模な規模縮小「Scrub89」が実施され,モジュールは小型化され,太陽電池パドルは6枚に,専用宇宙服などの技術開発は中止,定員4人にまで規模を縮小しました。

 さらに1990年の東西ドイツ統一により,欧州宇宙機関の主要推進国だったドイツが財政難に陥って欧州モジュールを縮小(その後間隙を付くようにしてイタリアがノード3などでステーションへの発言権を拡大するというオチまで付いた),1992年のクリントン政権成立により,計画はさらに縮小されることになり,同年NASAは縮小に対抗する「ウルトラC」としてロシアを計画に引き込みます。

 ロシアの財政難により建設が危ぶまれていた「ミール2」のモジュールをそれまでの設計に継いだ現在の「軌道上温泉旅館」的設計となり,投入軌道もシャトルによる輸送に最適な軌道傾斜角28度から,バイコヌールからの打ち上げを考慮した51.6度に変更され,結果,建設に必要なシャトル打ち上げ回数も増加しました。この時点でフリーダムの名称は消え,「国際宇宙ステーションアルファ」になり,その後「アルファ」も取れて単純なISSという名前となり,現在に至っています。

 ロシアの参加と設計変更は計画参加各国への事前了解なしに行われ,国際的には大きな不満を残しました。日本モジュールは欧州モジュールと共に,いきなり進行方向に腹を見せる位置に持ってこられたためにスペースデブリ対策のバンパーを追加しなくてはなりませんでした。
 また,無重力実験の条件がよい重心位置から遠い位置になったために,実験の条件は悪化しました。ちなみに米研究モジュールは,ほぼ重心の理想的な位置に配置されています。このあたり国際協力計画に参加する際に,今後よくよく考慮する必要があるでしょう。

 国際協力を銘打ち参加国を募り,他を圧する予算によって主導権を握った上で,計画途中のトラブルのツケは参加国に回すというのはアメリカの常套手段です。例えばシャトルのカーゴベイに搭載する宇宙実験室「スペースラブ」は米欧協力で開発されましたが,結局欧州はシャトル本体の運行予定が大幅に縮小されたこともあり,十分にスペースラブを利用できないまま,アメリカにスペースラブそのものを売却しています。

 しかしこのような大規模計画を独自に実施する政治的動機が日欧にはない,というのも事実です。このことを忘れて反米感情に身を任せるのも建設的ではありません。


 当初完成年度から遅れること6年,1998年11月から建設が始まりましたが,今度は運用初期に中核となるロシアのモジュール「スヴェズダ」がロシアの財政難のために打ち上げが1年以上遅れるという事態をまねきました。

 また,主に科学分野からは「ステーションに科学的な意義は薄い。むしろ惑星探査などを予算的に圧迫するため,有害な存在である」「あまりに建設に時間がかかったために搭載実験装置が時代遅れになっている。これでは有意義な実験はできない」とする意見が出ています。

 実際,15年を想定している運用期間の最終段階利用法として,最近では無重力を利用した芸術の創造などが上がっており,逆に科学的な価値が下がっていることを伺わせています。

 それでもISSの建設が続く理由は,巨大な国際計画は一度動き出すと止められないという事実,さらにはISS時代が米国内で公共投資的な意味合いを持っており,地元に航空宇宙産業が立地する議員が賛成してきたという歴史があるからです。

 積極的な理由としては,なんであれ常時7名が継続して軌道上に滞在する人類初めての施設であり,その経験蓄積だけでも大きな意味があるということは言えるでしょう。

 ただしISSがもたらすマイナス面もはっきり理解しておく必要があります。

 アメリカではジェット推進研究所が準備してきた冥王星探査機「プルート・エクスプレス」が凍結されました。予算不足が理由ですが,その背景に,建設が本格化したISSに予算を食われて他に手が回らないという事実があるとみて間違いありません。
 日本も他人事ではありません。NASDAでも今後,年間300億円といわれる日本モジュール「きぼう」の運営予算の捻出が問題になるはずです。特にNASDAでは,当初「既存計画を圧迫しない」ということで担当したはずの情報収集衛星が,いつのまにか既存予算にっくいこんで来ているという問題(これは大蔵省の常套手段であり,権限拡大とばかりに計画を引き受けた科技庁の決定にも問題があると考えますが)を抱えているので,日本独自の宇宙計画を圧迫しないような,財政運営が必要となります。

(S.MATSU)