宇宙作家クラブ
トップページ 活動報告ニュース掲示板 会員ニュース メンバーリスト 推薦図書

No.721 :電波確認 ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月9日(金)14時04分 投稿者 松浦晋

 13時52分にNASAゴールドストーン局は探査機MUSES−Cからの電波を確認しました。
(写真撮影は牧野)


No.719 :ロケット出現 ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月9日(金)11時34分 投稿者 松浦晋也

 本日午前10時半から、整備塔開扉、そしてM-Vロケットを乗せたランチャーが旋回しながら姿を現しました。10時50分現在、発射角を78度に設定する作業を行っています。

 現地は曇り。雲が厚く風が弱いので、打ち上げ時刻に雲が切れるかどうかは微妙なところです。


No.717 :射場の風景 ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月8日(木)22時12分 投稿者 松浦晋也

 宇宙研の打ち上げは、緊張した雰囲気の中厳格な手順で進行する種子島の打ち上げと異なり、どこか手作りの雰囲気があちこちに感じられます。一つには誰でも作業を行えるように徹底した文書管理を行うNASDAに対して、すべての権限を計画主任の教授に集中してあくまで人が物事を判断する宇宙研の違いが、雰囲気の中に現れているのでしょう。

 そんな宇宙研で一番興味深いのは、実は細々とした「宇宙科学というお仕事」のディティールです。
 ちょっとトリビアルな、しかし雰囲気を感じさせる写真を集めてみました。


 ところで、今週のNHK「プロジェクトX」は、宇宙研が1985年に行ったハレー彗星探査が取り上げられていました。

当地で聞いたお話。その1
 鹿児島では昨日が放送で、とある関係者が集まる宿ではテレビの前に皆集まって放映を待ったそうなのですが…放映が始まるとテレビの前から一人帰依二人消え、どんどん消えと見るのをやめていき、残った者の間では「探査機はどうした」「『さきがけ』『すいせい』という名前すら出てこなかったぞ。探査機が『特殊カメラに』にされてしまっていた」「あれは日本、ソ連、欧州の共同観測だったはずで一番ハレー彗星に近づいたのは欧州の『ジオット』だったのだがそういうことはひとこともでなかったぞ」と語り合いモードに突入したとかしないとか。

その2
 「プロジェクトX」ではH-IIロケットを扱った回(これはNASDAのOBが「島秀雄さんのことが一言も出てこないとは何事か」「アメリカは敵ではなく寛大な技術供与をしてくれたのだ」と猛反発した)、で宇宙研某教授が「宇宙研の貢献もあったのだ」とNHKに抗議したそうです。
 NHKの答えは「これはフィクションですので」というものだったとか。


No.716 :飛行シミュレーション ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月8日(木)22時05分 投稿者 松浦晋也

 コントロールセンターの大型の液晶ディスプレイに映し出された打ち上げ軌道シミュレーション。


No.715 :34mパラボラアンテナ ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月8日(木)22時04分 投稿者 松浦晋也

 探査機を追跡管制するための34mパラボラアンテナです。MUSES-Cは、地球から見て太陽の反対側を地球と併走する惑星間軌道に投入されるので、追跡管制はいつも夜になります。地球を回る衛星と違って惑星間軌道に入った探査機は、地球から見ると惑星のひとつのように動きます。つまり夜空の星のように見えるわけなので、一回の可視時間は長いのですが、MUSES-Cのように地球よりも外の軌道に入ると運用はいつも夜にならざるを得ません。

 内之浦では最初3回のパス(衛星が見える時間帯)の運用を行い、4パス目からは神奈川県相模原市宇宙研本所に管制を移します。これは単純に探査機関係者が皆内之浦に詰めているからで、徐々に相模原に戻った段階で管制を相模原に移すわけです。


No.714 :飛行安全卓 ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月8日(木)22時02分 投稿者 松浦晋也

  施設の老朽化は進み、予算が少ないために更新もままならない内之浦ですが、それでも少しずつですが新しい設備が入りつつあります。これは飛行安全を監視するコンソール。万一の時にロケットへ破壊指令を送る席です。


No.713 :コントロールセンター ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月8日(木)22時00分 投稿者 松浦晋也

 コントロールセンターの内部。もはや宇宙研名物といっていいアナログの進行表は今回も現役で使われていました、


No.712 :打ち上げシーケンス ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月8日(木)21時58分 投稿者 松浦晋也

 打ち上げ直後から視界没までの間飛行するロケットを監視するコントロールセンターには、打ち上げシーケンスの手書きの表が張ってありました。今回の打ち上げは4段式で、地球を回るパーキング軌道に入れずに直接惑星間軌道に探査機を投入します。

0秒第1段点火、リフトオフ
75秒第2段点火と同時に第1段切り離し
151秒第2段燃焼終了
186秒ノースフェアリング開頭
200秒第2段分離
205秒第3段燃焼開始
307秒第3段燃焼終了
359秒スピンモーター点火
370秒第3段分離
374秒第4段点火
468秒第4段燃焼終了
610秒探査機分離

 およそ10分ほどで、MUSES-Cは地球の重力圏を脱出する惑星間軌道に投入されます。この時の速度は秒速11.5kmにもなっています。


No.711 :プレスツアーの写真 ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月8日(木)21時56分 投稿者 松浦晋也

 本日は打ち上げ前日でスタッフの大部分は休養を取っています。さして広くない内之浦の町では、どこを見ても打ち上げスタッフが歩いているという状態で、昼食時にラーメン屋に並んでいるのも生協で買い物をしているのも宿舎の庭でバーベキューをやっているのもみな打ち上げ関係者といった調子です。
 今晩、早い者は午後11時から、遅い者でも午前3時には射場に入り持ち場に着きます。明日の午後1時半までの長い緊張する労働の始まりです。

 朝はひどい雨だったのですが昼過ぎから晴れて良い天気になりました。明日も晴れとのことです。

 それでは昨日のプレスツアーの写真を掲載します。


 まずはカウントゼロの瞬間まで打ち上げを指揮するロケット管制室の風景。打ち上げ主任の小野田教授に何事かをささやく的川教授です。


No.709 :小惑星探査と山頭火 ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月7日(水)19時25分 投稿者 松浦晋也

 ちなみにこちらはオリジナル(配布されたコピーなのでモノクロですがもちろん本物はカラー)です。このパロディは蔵元の承諾をきちんととってあるとのこと。



 的川教授による解説は以下の通りです。
 銘酒『虎の児』と山頭火
                               的川泰宣

 MUSES−Cの性能計算書の表紙を飾る酒のラベルを考えていて、ふと山頭火を思い出しました。つたない記憶をもとに全周を紐解いて行くと・・・・。あったあった! まさにMUSES−Cがめざす小惑星にぴったり。小惑星は、太陽系の起源と進化を探るための、まさに「虎の児」ですから。

 MUSES−Cが、イオンエンジン、高度な自律機能、独創的なサンプル収集、惑星間空間からの直接帰還などの技術を最大限確立して、来たるべき小天体サンプルリターン時代の基礎をがっちりと築いて欲しいとの願いを込めて、ここに銘酒『虎の児』を送ります。奇しくも、このたび松尾弘毅先生を継いで宇宙科学研究所の所長になった鶴田浩一郎先生の故郷、佐賀の一品です。

 山頭火は行乞の旅の途中、二度ほど嬉野温泉に立ち寄っています。最初は昭和七年の一月三一日です。以下は彼の書いた日記の一節。

「宿は新湯の傍、なかなかよい、よいだけ客が多いのでうるさい。飲んだ、たらふく飲んだ(中略)酒銘『一人娘』『虎の児』。武雄温泉にはあまり好意が持てなかった、それだけこの温泉には好意が持てる。湧出量が豊富だ、(中略)温度も高い、安くて明るい、普通湯は二銭だが、宿から湯札を貰えば一銭だ。茶の生産地だけあって、茶畑が多い、茶の花のさみしいこと。嬉野はうれしいの(神功皇后のお言葉)。休み過ぎた、だらけた一句も生れない。ぐっすり寝た、アルコールと入浴のおかげで、しかし、もっと、もっと、しっかりしなければならない」

 山頭火は酒と温泉好きで有名ですが、銘酒「虎の児」はその後もずっと今も作られていたわけです。宇宙学校もやったおとなりの武雄温泉には気の毒ですが、嬉野をことのほか気にいったようです。そのときは一泊だけして、翌朝すぐに長崎方面に発っています。日記を読んでいて感心するのは、たいそう気に入った温泉でも俳友宅でもたいてい一泊しただけで、すぐに発っているところです。

 さぞや後ろ髪を引かれたでしょうが、「雲のように、水のように」旅をしたいと彼は自らを戒めていたのでしょう。



No.708 :その名は虎之児 ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月7日(水)19時23分 投稿者 松浦晋也


 今回も出ました。日本酒ラベルのパロディ。これは性能計算書の表紙です。打ち上げの性能計算は最後の最後まで詰めるので、詳細は計画書の別刷りになります。1970年の最初の衛星「おおすみ」以来このようなパロディが表紙を飾っています。

 「おおすみ」の時は衛星になるかどうか分からなかったので「ハテライト」そのころはタバコをもじっていた。その時代によってたばこだったり洋酒だったり、このところは日本酒とのこと。
 
 日本で初めて惑星間空間に飛び出した「さきがけ」の時は「酔心」という日本酒のラベルに引っかけて「彗心」としたものでした。

 細かいところまで凝っているのでとくとごらんあれ。


No.707 :川口教授ブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月7日(水)19時21分 投稿者 松浦晋也


 プレスツアーの後、記者室で今回の探査機MUSES-Cの探査主任である川口淳一郎教授がブリーフィングを行いました。

主に探査機本体の質問が集まったのですが、その中で一番印象に残ったのは以下の言葉でした。

川口教授
 今回の探査機は大きく4つの新しい技術開発要素(イオンエンジンによる惑星間航行、重力が微少な小惑星への自立航法による接近、小惑星表面のサンプル採取、小型カプセルによるサンプル回収)があり、それらが時系列に直列にならんでいる。そのどれが成功しても大きな成果だ。だから成功かどうかについては、加点法で考えて欲しい。全体は500点で、打ち上げ後に3週間目にイオンエンジンが無事に稼働したならば、その時点で100点と考えて欲しい。

 小惑星探査機ということになっていますが、実はMUSESシリーズ工学試験衛星であり、新しい技術を軌道上で検証するための宇宙機です。ただし、サイエンス的に価値のある探査を目指す技術である以上、実際に探査を行いつつ検証するべきという考えから、小惑星の探査を実際に行うミッションとなりました。

この後的川教授から補足がありました。

的川教授
 技術開発開発要素を一つずつ軌道上で試験できればいいのだけれども、現在の予算規模では次のチャンスがいつになるか分からず、どうしても「このチャンスにあれもこれも」という欲張った計画にならざるを得ない。

 おそらくMUSES-Cのサンプル回収が最終的に失敗した場合、メディアは「小惑星探査機失敗」と報じるのでしょう。しかし実際には、技術試験要素が非常に強く、その一つ一つが成功しただけでも大きな成果であるということなのです。


No.706 :的川教授ブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月7日(水)19時18分 投稿者 松浦晋也

午前9時過ぎから記者室で開かれたブリーフィングの様子です。説明は的川教授
 

 本日は夜中から電波テストを開始して午前9時を打ち上げに想定して電波テスト実施中。電波テストとはリハーサルのこと。

 午前7時半頃にいったんロケットを出したが、雨雲が垂れ込めているので、再度閉めた。この後打ち上げまで整備塔からロケットが出ることはない。電波テストはロケットを整備塔の中においたままで行った。

前回打ち上げに失敗した4号機と今回の5号機の変更点。

・前回のM-V4号機の打ち上げ時に損傷して打ち上げ失敗の原因となったノズルスロート部材質を、グラファイトから、3次元カーボン・カーボンに変更した。第1段から第4段まですべてのロケットモーターで材質変更をしている、
 前回の失敗はグラファイト内部の欠陥だったと推定されたため。グラファイトは脆い材料だが過去40年以上安定して使われてきた。M−Vの事故のようなグラファイトのスロート破損は、アメリカのスカウトロケット上段が30年以上昔に事故を起こしたことがある。M-Vの事故はそれ以来だった。グラファイトは非破壊検査が不可能だが、カーボン・カーボンは可能。価格が高いのだが、今回3年の時間をかけて燃焼試験を行いすべての段で変更した。

・第2段ロケットモーター:金属削りだしからカーボン・カーボン系のフィラメントワインディングに変更した。2段目のロケットモーターの燃焼圧力を2倍近く上げることができた(60気圧から100気圧へ)。
 また2段姿勢制御を可動ノズルに変更。これまでは固定したノズル内に液体を噴射することで流体力学的に推力方向を変更していた。これにより姿勢制御能力が向上した。
 第1段と第2段との継ぎ手を今までは開傘型(傘のように開く)だったが、これを非開傘型に変えた。これにより信頼性を向上させた。
 軽量化した分、ほかの部分で補強を入れたりしたので重量は変わらない。信頼性は向上している。

 ロケット価格は約70億円。

 打ち上げ参加スタッフは約300人。うち100人程度が衛星。


 セキュリティは情報収集衛星以降きびしくなっています。NASDA、NALとの統合を控えて、セキュリティをきびしく管理すべしということになっていて、報道にも今まで通りにお見せできないことがあります。


##打ち上げ準備で必死になっている職員の横で、地元のおばさん達がカラフルなエプロンでお弁当を作っていたりする、「手作り宇宙開発」の雰囲気が内之浦の大きな魅力でした。セキュリティ強化でこの宇宙と人間の体温が同居した雰囲気がなくなってしまうとしたら大変残念なことです。


No.705 :スタッフとロケット ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月7日(水)17時43分 投稿者 松浦晋也

 ロケットを見上げるスタッフ。(写真提供:宇宙科学研究所)


No.704 :M-V下半分 ●添付画像ファイル
投稿日 2003年5月7日(水)17時41分 投稿者 松浦晋也

 M−Vロケット5号機の下半分。4号機はグラファイト製のノズルスロート部(ロケット噴射口内部の一番すぼまった部分)が破損して打ち上げに失敗した。5号機では全段のノズルスロートをグラファイトから3次元織りのカーボン・カーボン複合材に変更した。(写真提供:秋山演亮氏)