宇宙作家クラブ
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No.2425 :イプシロンロケット5号機打ち上げ経過記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2021年11月12日(金)21時30分 投稿者 柴田孔明

 イプシロンロケット5号機は2021年11月9日午前9時55分16秒に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。当日13時より打ち上げ経過記者会見がオンラインで開催されています。回線の状態等により一部聞き取れなかった部分がありますがご了承ください。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・第1部(機関代表報告)登壇者
 文部科学省 研究開発局長 生川 浩史
 JAXA 理事長 山川 宏

・登壇者挨拶(生川)
 本日、イプシロンロケット5号機の打ち上げに成功し、搭載をしておりました革新的衛星技術実証2号機が所定の軌道に投入されたことを確認をいたしました。今回の打ち上げ成功により、イプシロンロケットとしては5機連続、基幹ロケットとしては52機連続での打ち上げ成功となり、着実に実績を積み重ねていることを喜ばしく思っているところであります。今回の打ち上げにご支援ご尽力いただいた関係者の皆様方にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
 今後打ち上げられた衛星にこめられた革新的な技術やアイディアが、宇宙空間での実証機会を通じて、我が国の宇宙産業の振興に貢献できるよう、文部科学省としても関係機関と共に引き続き尽力をしてまいりたいと考えております。また基幹ロケットの更なる安全性信頼性の向上にも取り組み、我が国の宇宙開発利用の発展に繋げていきたいという風に考えているところであります。今後ともぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

・打ち上げ経過報告(山川)
 本日9時55分16秒に革新的衛星技術実証2号機を搭載いたしましたイプシロンロケット5号機を打ち上げました。まず始めに10月の打ち上げ延期から本日の打ち上げまで関係者の皆様、特に地元地域でご協力をいただいております皆様、搭載衛星に関係する皆様には長らくお待ちいただくことになり、ご迷惑とご心配をおかけいたしました。今回の打ち上げでは革新的衛星技術実証プログラムの2号機として6つの実証テーマを搭載した100キログラムの小型実証衛星2号機RAISE-2、東京工業大学、三菱重工株式会社、川崎重工業株式会社、帝京大学によって開発された50キログラム級の超小型衛星を4基、及び千葉工業大学、青山学院大学、明星電気株式会社、高知工業高等専門学校によって開発されたキューブサットを4基、14機関の14実証テーマを実装した合計9基の衛星を打ち上げ、全て正常に分離しました。革新的衛星技術実証プログラムは宇宙基本計画の産業科学技術基盤をはじめとする宇宙活動を支える総合的な基盤の強化の一環として、イプシロンロケットで打ち上げる小型衛星・超小型衛星を活用して企業や大学、研究機関などが行う研究開発に対して、軌道上実証の機会を広く提供するものです。実証機会を2年程度の定期的な間隔で提供することにより、早いサイクルでの(不明)しています。イプシロンロケットにつきましては、今回で5機目の打ち上げとなりました。今回は4号機の複数衛星搭載構造を改修し、搭載可能な衛星数を向上させ、より柔軟に小型衛星・超小型衛星等の打ち上げ需要に対応できるようになりました。イプシロンロケットの特徴でありますコンパクトな打ち上げ運用、世界トップレベルの衛星搭載環境、高い軌道投入精度と併せて、よりユーザーにとって使いやすいロケットになっているものと考えます。これに加えまして、現在並行して開発を進めているイプシロンSロケットにより国際競争力を強化し、我が国の基幹ロケットとしてより進化をさせていきたいと考えております。2019年1月にイプシロンロケット4号機で打ち上げました革新的衛星技術実証1号機に搭載した実証テーマにおいては既に複数のテーマで軌道上実証の成果を踏まえた事業化が進んでおります。今回の革新的衛星技術実証2号機でも、様々な軌道上実証が行われます。革新的な成果が得られ、衛星産業の国際競争力強化、宇宙利用の拡大、宇宙産業のビジネス投資に繋がることを期待しております。なお革新的衛星技術実証プログラムにおいては、続く革新的衛星技術実証3号機も15の実証テーマが選定され現在開発が進んでいます。今後も確実に打ち上げ経験と実績を蓄積し、小型衛星の打ち上げ需要を有する顧客のニーズにより柔軟に対応しつつ、新たなイノベーション創出に挑戦してまいります。最後に皆様の大変あたたかいご支援をいただき、本日の打ち上げを無事終えることができました。肝付町の皆様をはじめ、関係機関の皆様のご支援ご協力にあらためて感謝申し上げます。なお本日はJAXAのミッションとして星出宇宙飛行士の地球帰還対応も行っておりました。記者会見開始前までに星出宇宙飛行士を搭載したクルードラゴン宇宙船Crew-2が着水したことを確認できております。帰還に関する行程が全て終了するまで引き続き気を引き締めて対応してまいります。以上でございます。ありがとうございました。

・質疑応答 (※回線の状態などもあり、所々で聞き取れないところがありました)
KTS・3度の延期から本日ようやく打ち上げが成功したが、率直な感想を教えてほしい。
山川・一言で申しますと大変ほっとしております。今回は従来に増して慎重に確認した上で臨んだということで、成功裏に全ての衛星を所定の軌道に分離することができて大変嬉しく思います。

NHK・地上設備のトラブルで、コネクタの緩みが原因で点検のし直しがあったが、射場を管理するJAXAはどう受け止めているか。宇宙の裾野を広げるということで高専や大学生の衛星が打ち上がったが、そこについての所感をいただきたい。イプシロンは5機連続成功になったが、基幹ロケットとしての固体ロケットは海外でもあまりないが、今後どのような位置付けで運用していきたいか。
山川・地上設備の不具合からの延期ということで、ロケット、衛星、地上系、全てを網羅的に慎重に点検することの重要性をあらためて認識した。今回の事象に関しましても考えられる全てのところに水平展開し全体を見直したということがあります。その上で今回の打ち上げに成功したと考えております。また10月1日に不具合のあったレーダに関しては、その後に準天頂衛星の打ち上げのために種子島で使用しておりまして、その時に問題無く機能していることもあり、その時と同じような点検をした上で今回の打ち上げに臨んでいます。
 今回初めて高専や大学生の作りました、非常に意欲的な超小型衛星を成功裏に打ち上げたが、やはり今回の革新的衛星技術実証の全体のプログラムは大学や企業等が新しい技術が欲しいという場で、できるだけ早く実証していただく、そういった機会を提供するものと考えておりまして、そういった観点からも非常に意義があるものであったのではないかという風に考えていると同時に、特に学生さんに対してはそういった事を通して非常に多くの学びを得ていただいたのではないかと考えております。私からの学生に対する希望としては、今回の経験は衛星運用で続いていくが、そういった知識も蓄積して後輩に繋げていっていただきたいのと同時に、将来できれば、願わくば宇宙の業界にどんどん進出していってほしいという風に考えております。
 イプシロンロケットですが、全段固体のロケットを運用しているという意味では非常に重要な役割を担っていると思っております。イプシロンロケットというのは我が国が最初に人工衛星を打ち上げた1970年の、それ以前からずっと開発あるいは運用をしてきておりまして、60年以上の歴史を積み重ねたものでありまして、我が国にとって非常に重要な、戦略的な技術であるという風に認識しております。そういった観点から政府から基幹ロケットとして位置付けられているものであります。今回の成功も我が国が基幹ロケットを連続して打ち上げに成功していることに繋がっている。それは日本が宇宙へのアクセスを確保し続けること、そして同時に(不明)そういった観点から非常に重要なロケットであると認識しております。

MBC・地上設備の不具合や10月7日の打ち上げでは前日の地震、天候など気をもむ事案が多かった打ち上げだったと思いますが、この1か月間どういう思いで取り組んでいらっしゃったか、またその経過を踏まえて今日の成功をどう受け止めていらっしゃいますか。
山川・最初の10月1日は地上系の不具合という事だった訳ですが、やはり打ち上げというものがロケット・衛星・地上系に天候も含めまして非常に巨大なシステムで、全てがうまく作動して初めて打ち上げが成功するということをあらためて認識した次第です。従いまして今回の動作不良という部分に関しましては、非常に大きな経験として得ることが出来たと思っております。関連する事項に水平展開しまして、あらためて考えられる全ての範囲で点検をし直したということでありまして、そういった事が今後の打ち上げにも繋がっていくという風に考えております。天候はどうにも制御できないことではありますけども、天候はロケットの打ち上げで非常に重要な条件となっておりまして、変わりゆく天候に対して柔軟に判断することの重要性も認識した次第となりました。そういった経緯も踏まえまして今回無事に9つの衛星を所定の軌道に投入することができたということで、非常に安堵していると同時に、今回の知見を今後の打ち上げに反映していきたいと考えております。今後というのはイプシロンロケットに限らずH−IIAロケットも含めて、こういった経験というものを繋げていきたいという風に思います。

・第2部(技術説明)登壇者
 JAXAイプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行
 JAXA 革新的衛星技術実証グループ長 金子 豊

・井元
 本日、イプシロンロケット5号機を打ち上げまして、無事成功に終わりました。配付資料に打ち上げシーケンスがありますが、ほぼ計画した通りのシーケンスで9基の衛星を無事成功させることができました。ペイロードの方々には大変お待たせしましたということと、地元の方々をはじめとした関係機関の方々には本当にご協力深く感謝いたします。どうもありがとうございました。

・金子
 私はペイロード側となります。今回9基の衛星を無事に宇宙に送り届けることが出来、革新的衛星技術としては各機関の取りまとめを行っており、無事に送り出すことが出来て、非常にほっとしています。ただ衛星はこれから運用がはじまるということで、まだスタートラインに立ったところですので、引き続き気を引き締めて運用を実施していきたい。

・質疑応答
南日本新聞社・今回延期になったことで打ち上げ費用は58億円から変わっていないのか。またこの58億円というのはイプシロン開発当初の30億以下という目標から少し遠いが、その点はどのように捉えているか。
井元・まず打ち上げ延期に伴いまして費用は追加になります。そこは精査が必用ということで、今後検討していく形になります。当初との違いですが、まず当初は消費税抜きということと、打ち上げ安全管理というものを抜きにした実機価格で30億でありました。それに対しまして今回は複数衛星搭載構造でありますとか、消費税でありますとか、打ち上げ安全管理など全てを含んだ形での費用ということで、そういった差分が出ているのは事実であります。そういったところは今後イプシロンSで当初設定した価格といったものを達成していくという形になる予定であります。

朝日新聞・打ち上げ時刻が5分程度遅れたが、星出さんの帰還に影響が出ないようにしたというのは本当か。予定通り打ち上げた場合はどういった懸念があったか。
井元・それは事実です。クルードラゴン2の帰還のシーケンスとか軌道をNASAからいただいて、その状況を見つつ、そちらの方に影響の無いようにということで打ち上げ時刻を変更いたしました。当初設定した時刻ですと、クルードラゴンの方に影響する可能性があるということが事前の検討でわかっておりましたので、リスクを避けるという観点で打ち上げ時刻を変更いたしました。

朝日新聞・リスクがある可能性があるというのは、最悪衝突するということか。
井元・そうです。最悪はそうなります。

NHK・クルードラゴンについて10分前という直前に判明したように感じたが、シーケンスをもらったのが直前だったのか。また51分から55分という4分違いで回避ができるものか。
井元・クルードラゴンの帰還の方につきましては、もともとプライムとバックアップというものがありまして、プライムの方ですと特に干渉は無かったという形であります。バックアップに移行したというのが最近でして、そこから軌道をいただきまして解析をするといったところで回避する計画を立てておりました。バックアップの軌道でも何通りかの軌道がありますが、今回打ち上げる最後の時刻ですとリスクは無いということで解析評価をしておりますので、その時刻に変更して打ち上げたという形になります。

NHK・打ち上げ時刻はもともとクルードラゴンと調整していたのか。
井元・その事実については私は承知しておりません。安全管理の方で解析しておりますので、詳細はそちらに聞かないとわからない。

MBC・今回打ち上げられた衛星の今後の運用について、JAXAとしてどのようなサポートがあるのか、今回の機会をどう生かしてもらいたいか。
金子・基本的には各機関の衛星の運用については、自分達で行うのが原則です。我々のサポートという意味では、例えば不具合があったとしてどうしたらいいかなど、そういったことについての支援等は行う予定にしています。今後については、大学や高専がありますけども、次の方にもこんな風に実証ができるのだということを広めていただいて革新プログラムへの応募を盛んにしていただけたらと思っています。

読売新聞・最新のイプシロンの打ち上げ予定を教えて下さい。
井元・まず来年度にイプシロン6号を打ち上げます。これは革新的衛星技術実証3号機になります。2023年度にイプシロンSロケットの実証機で、ベトナムの衛星を打ち上げるという所までが決まっています。それ以降については調整中です。

読売新聞・来年度に6号機の1機、再来年度にイプシロンSの1機ということで良いか。
井元・はい、その通りです。

以上です。


No.2424 :イプシロンロケット5号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2021年11月9日(火)16時55分 投稿者 柴田孔明

イプシロンロケット5号機は2021年11月9日9時55分16秒(JST)に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。
搭載した衛星9機は、正常に分離されたことが確認されしています。


No.2423 :H-IIAロケット44号機打ち上げ経過記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2021年10月27日(水)00時42分 投稿者 柴田孔明

 H-IIAロケット44号機は2021年10月26日午前11時19分37秒(JST)に種子島宇宙センターから打ち上げられ、準天頂衛星初号機後継機を所定の軌道に投入しました。同日午後より打ち上げ経過記者会見がリモートで行われています。回線の状態により聞き取れなかった部分がありますがご了承ください。
 写真提供:三菱重工
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 審議官 岡村 直子
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部長 西ヶ谷 知栄
・側面列席者
内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室長 上野 麻子

・H−IIAロケット44号機による「みちびき初号機後継機」の打上げ結果について(西ヶ谷)
 三菱重工業株式会社は、本日(2021年10月26日)11時19分37秒(JST)に、準天頂衛星みちびき初号機後継機を搭載したH-IIAロケット44号機を種子島宇宙センターから打ち上げました。ロケットは正常に飛行を行い、みちびき初号機後継機を所定の軌道で分離することに成功いたしました。ロケット打上げ時の天候は快晴、東の風、風力は2.8m/sでございました。
 今回の打上げ実施にあたりましては、大変多くの皆様にご支援ご協力を頂きました。ここに厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

・準天頂衛星「みちびき初号機後継機」の打上げについて
 【内閣府特命担当大臣(宇宙政策)談話】
 本日、H-IIAロケット44号機による準天頂衛星「みちびき初号機後継機」の打上げが成功したことを確認いたしました。今回打ち上げられた初号機後継機は、これまでの初号機に比べ、耐久性の向上・長寿命化を図っており、より安定したサービスの提供が可能となります。引き続き、本衛星によるサービス開始に向け万全を期してまいります。
 準天頂衛星システムは、現在4機体制で運用しておりますが、2023年度をめどとする準天頂衛星システム7機体制確立に向け、開発・整備を着実に進めてまいります。
 内閣府特命担当大臣宇宙政策担当として、今後も我が国の宇宙開発利用を精力的に進めてまいります。
 令和3年10月26日内閣府特命担当大臣(宇宙政策) 小林 鷹之

・質疑応答
NHK・天候による延期があったが、今日は非常に綺麗な打ち上げだった。今回の打ち上げを振り返ってみたところをお聞きしたい。
西ヶ谷・もともとの予定の25日から26日に天候判断で1日延期しておりますが、今日は結果的に見事な快晴でした。こういった天気の回復を予想した。この先を見渡しますと、また台風の進路予想などを見まして、26日に行こうというような判断をしております。今回の44号機の振り返りをしますと、前号機43号機が昨年の11月末の打ち上げでございましたので、およそ11ヶ月ぶり、1年近くぶりということでありました。我々の物作り、品質の確認といったところで、久しぶりといったところをキーワードにして、ここが確実着実に製造が進んでいるかといったところを確認しながら今日に至っておりまして、うまく成功に導けて安堵しているところです。もう一つは新型コロナ感染対策です。昨年来この対策をきっちり図りながらということで、パートナーの皆さんにも協力いただいてここにたどり着いている訳ですけども、特に全国的に第5波といったものが8月のお盆前後にありました。今号機を種子島に搬入しましたのが丁度8月下旬でありまして、そのタイミングは非常にコロナの厳しい状況が続いており、そういった中で種子島の地元の自治体ですとか住民の皆様にもご理解いただきながら進めることができた。そういったところを振り返っておりました。

NHK・今回後継機が打ち上がったことで7機体制への弾みと言えるか。
岡村・初号機の後継機につきましては、初号機自体が2010年の9月に打ち上げられたものでございまして、現在11年が経っているものでございます。そういったことで最新の後継機に代替されることで耐久性が向上しまして、より安定したサービスの提供が期待できるという風に考えております。7機体制でご質問をいただいておりますが、準天頂システムが提供します位置情報ですとか時刻情報というものは、我が国の経済社会活動とデジタル化を支える重要な社会基盤であるという風に認識しております。準天頂衛星システムはGPS信号の届きにくい都市部のビルの谷間ですとか山間部にもサービスの提供が可能でございます。みちびきの民間での活用としましては、現在発売されている大半のスマートフォンやカーナビで実際に利用されるなどGPSと一体として用いられることにより、衛星測位サービスの精度の向上に役立てられています。またみちびきが提供します高精度測位信号を活用いたしまして、自動車やドローンをはじめとする様々な分野で製品化への取り組みが行われており、そして実装が進みつつある状況でございます。私達内閣府といたしましても実証事業というものを実施しておりまして、これを通じて社会実装を進める取り組みの後押しをさせていただいております。今後も幅広い分野で利活用が進みまして、イノベーションですとか新たなビジネスの創出に貢献することを期待して下ります。さらに準天頂衛星の7機体制を2023年度を目処に確立することによりまして、我が国自体の安全保障の能力の維持強化、これに必要不可欠な位置の認識とか評定、それから時刻同期の能力、これを自立的に確立することが可能となります。具体的には1日を通じていつでも他国の衛星に頼ることなく、我が国の準天頂衛星システムのみで測位を行うことが可能となります。このように期待の大きい7機体制でございますので、私共も引き続き7機体制の確立に向けまして努力をしてまいりたいと思います。

・会見第2部
・登壇者
内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室長 上野 麻子
三菱重工業株式会社 H-IIA打上執行責任者 徳永 建 
・側面列席者
内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室 企画官 前田 剛
JAXA 宇宙輸送技術部門鹿児島宇宙センター射場技術開発ユニット ユニット長 砂坂 義則

・質疑応答
MBC・H−IIAの1号機打ち上げから今年で20年だが、この間の歩みをどう受け止めているか。また次のH3に向けて今回の成功をどう受け止めているか。
徳永・H−IIAの1号機から打ち上げまして、最初は宇宙開発事業団様が打ち上げられたロケットを私共三菱重工で引き継ぎまして打上げ輸送サービス事業を続けているということで、やっと節目のところに来れたという感じでおります。今までひとつひとつ確実に着実にやっていくということをモットーとしてやってまいりましたので、その結果としてここに来れたことは非常に喜ばしく思っている。ここで私共がやっていますようなH−IIAでの取り組みは、そのままH3に向けても活かしていけると思っています。今までやって来た実績をそのまま引き継げるようにこれからもやっていきたいという風に思っています。

日本経済新聞・今回で打ち上げ成功率とオンタイム率はどれくらいになったか。また衛星が分離された時間はいつか。
徳永・H−IIAロケットとH−IIBロケットをあわせまして打上げ成功率は98.1%に達しました。またオンタイムは81.1%という所に達しております。衛星分離時刻につきましては日本標準時で11時47分43秒となっております。

日本経済新聞・98.1%の成功率はこれまで45機打ち上げた成功率という理解で良いか。
徳永・H−IIAロケットとH−IIBロケットの9機を合わせた52機の数となっております。H−IIAだけで申し上げますと44機中43機となっておりますので、成功率は97.7%となります。

日本経済新聞・H−IIAのオンタイム率はいくつになるか。
徳永・オンタイム率はH−IIAでは81.8%になりました。

NHK・内之浦のイプシロンのときに可搬型レーダ設備にトラブルがあって延期になったが、それを種子島でも共用しているということで、今回何か特別な対策をとられたのか。
徳永・イプシロンで使用したドップラーレーダ装置につきましては、JAXAさんの方で修理していただきまして、良好になった状態で今回使わせていただいております。
砂坂・今回レーダにつきましては、しっかり準備をしまして万全の態勢で臨みました。レーダー以外につきましても同様な問題を起こさないか、コネクタ等を重点的に点検をして、問題無いことを確認した上で打ち上げに臨ませていただきました。

NHK・衛星の状況はどうなっているか。順調に準天頂軌道に向かっているのか。
上野・衛星の今の状態でございますが、予定されているシーケンスは順調に進行しております。現時点で衛星の信号の捕捉に成功しておりまして、太陽電池パドルの方も展開が確認できております。これから準天頂軌道に向けて遷移していくことになりますけども、本日の打ち上げから9日ほどかけて、現在の予定ですと11月3日に到達予定ということで、引き続き衛星の詳細を見守りながら万全の態勢で準天頂軌道に乗せるべく進めてまいります。
 (※当初の10月25日打ち上げの場合は11月2日に到達予定だった)

フリーランス鳥嶋・今回からH3用の新しいドーリーを使用するとあったが、実際にロケットを運んだことの感想と課題をお聞きしたい。
徳永・今回H3用に準備したドーリーをH−IIAに適用してみました。実際に機体を移動させる際の運搬状況は、私も現場で確認致しまして、非常に動きがスムーズで、機体を射座に据え置く際も非常にスムーズな形で置けていて、心配になるところはございませんでした。このまま実績を積んで、H−IIAの方に使用していくという形で考えいきたいと思っております。

フリーランス鳥嶋・スムーズというのはこれまで使われていたものと比較してという事で良いか。
徳永・それぞれの装置で特徴があると思いますので、今回の新しいドーリーではそのような動きだったという感想です。

共同通信・みちびきの軌道高度について、内閣府資料では3万6千キロと書いてあり、前の初号機のときの初期軌道には3万3千から3万9千と表記されていたと思います。最近見ると3万2千から3万9千という表記もあり、この辺りを整理していただけたらと思います。
前田・準天頂軌道ですが、静止軌道から傾斜した軌道でして、なおかつ少し楕円の形状の軌道になっておりますので、3万6千キロではなく幅を持った軌道となっております。質問の3万3千もしくは3万2千の違いについては、申し訳ございませんが私も正確に把握しておりませんが、もしかしたら時期によっての季節的な問題かなと思います。正確なところは申し訳ありませんが把握しておりません。

共同通信・すると内閣府の資料の3万6千は、かなり丸めて書かれているのか。
前田・恐らく3万6千キロと表記してあるのは、3号機の静止軌道の軌道高度ではないかと思います。

以上です。


No.2422 :H-IIAロケット44号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2021年10月26日(火)14時33分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット44号機は2021年10月26日11時19分37秒(JST)に打ち上げられ、搭載した準天頂衛星初号機後継機を正常に分離しました。
写真提供:三菱重工


No.2421 :最終作業開始可
投稿日 2021年10月26日(火)10時21分 投稿者 柴田孔明

2021年10月26日10時18分頃に連絡があり、H-IIAロケット44号機の第3回Go/NoGo判断会議の結果はGoとのことです。最終(X-60分)作業開始可と判断されました。

No.2420 :第2回の判断結果
投稿日 2021年10月26日(火)01時26分 投稿者 柴田孔明

2021年10月26日1時17分頃に連絡があり、H-IIAロケット44号機の第2回Go/NoGo判断会議の結果はGoとなりました。
これによりターミナルカウントダウン作業開始可となり、液酸/液水の充填などの準備作業が始まります。

No.2419 :H-IIAロケット44号機の機体移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2021年10月25日(月)23時28分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット44号機の機体移動が2021年10月25日20時01分から開始され、同日20時30分に完了しました。
写真提供:三菱重工 (※元は動画です)


No.2418 :第1回判断
投稿日 2021年10月25日(月)18時34分 投稿者 柴田孔明

2021年10月25日17時30分頃に連絡があり、H-IIAロケット44号機の第1回Go/NoG判断会議の結果はGoとなりました。同日20時頃から機体移動が行われます。

No.2417 :打ち上げ日時について
投稿日 2021年10月24日(日)15時58分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット44号機の打ち上げ予定日時は2021年10月26日午前11時19分37秒(JST)となりました。

No.2416 :H-IIAロケット44号機打ち上げ前プレスブリーフィング
投稿日 2021年10月24日(日)02時17分 投稿者 柴田孔明

 2021年10月23日午後より準天頂衛星初号機後継機「QZS−1R」/H−IIAロケット44号機の打ち上げ前プレスブリーフィングが開催されました。今回も新型コロナウイルス感染拡大防止のためリモートで行われています。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室 企画官 前田 剛
 三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 MILSET長 鈴木 啓司

・H-IIAロケット44号機による準天頂衛星初号機後継機の打上げ延期について(発表文)

 三菱重工業株式会社は、種子島宇宙センターから準天頂衛星初号機後継機を搭載したH-IIAロケット44号機の打上げを2021年10月25日に予定しておりましたが、天候の悪化が予想されることから、下記のとおり変更いたします。

 打上げ日 : 2021年10月26日(火)
 打上げ予定時間帯 : 11時00分〜12時00分(日本標準時)(※1)
 打上げ予備期間 : 2021年10月27日(水)〜2021年11月30日(火)
 (※1) 予備期間中の打上げ予定時間帯は打上げ日毎に設定する。
 なお、10月26日の打上げの可否については、明日以降の天候状況を踏まえ、再度判断してまいります。

・ロケットの準備状況について(鈴木)

  ・H-IIAロケット44号機は飛島工場を8月18日に出荷後、射場作業を開始。
  ・以下の射場整備作業を良好に実施。
   ・機能点検(〜10月9日) 機体の各機器が正常に作動することを確認
   ・カウントダウン・リハーサル(10月12日) 関係要員に対し打上げ当日の対応手順を周知徹底するために、打上げ時の作業を模擬。
   ・準天頂衛星初号機後継機とロケット機体の結合作業(〜10月16日)
   ・ロケット機体の最終的な機能点検(〜10月18日)
   ・発射整備作業を実施中(10月21日〜)。
  ・10月23日天候悪化の予想により打上げを延期。

 ・H−IIAロケット44号機:202型4Sフェアリング
 ・VABから射点への機体移動は10月25日20時頃を予定。
 ・衛星分離は打ち上げ後28分11秒を計画している。

・気象状況(鈴木)

 ・現在日本付近は高気圧が張り出していて、射場は概ね晴れ。このあと高気圧が移動し、次第に高気圧の周辺部に入り、天気は次第に下り坂になる予報。
 ・当初の打ち上げ予定だった10月25日の11時から12時は気圧の谷が通過する影響で雲が広がり雨の降りやすい天気になると予報されている。打ち上げ時間帯に制約を満足できない見込みが強く、延期する判断をしている。10月26日以降に関しては次第に回復傾向となり、10月26日の11時から12時の時間帯に関しては現在の所、打ち上げ制約条件を満足できる気象条件となる可能性が高いと考えており、打ち上げを26日にする判断を致しております。

・衛星の準備状況について(前田)

 ・準天頂衛星システム開発の道のり
  ・2010年9月:「みちびき」初号機打ち上げ。現在運用12年目。
  ・2017年:2、3、4号機の打ち上げに成功し、4機体制整備。
  ・2018年11月1日:準天頂衛星システム(みちびき)が正式にサービスを開始。
  ・2021年10月26日:初号機後継機を打上げ予定。
  ・2023年度を目途として持続測位可能な7機体制での運用を開始予定。

 ・準天頂衛星システムの役割
  1.衛星測位サービス(GPSの補完)
   →衛星数増加による測位精度の向上
   (上空視界の限られた都市部や山間部を中心に改善が図られる)
  2.測位補強サービス(GPSの補強) ※専用受信機が必用
   →衛星測位の精度向上(電子基準点を活用してセンチメートル級精度を実現)
  3.メッセージサービス ※専用受信機が必用
   →災害・危機管理通報 
   →衛星安否確認サービス(3号機機能)

 ・準天頂衛星システムの軌道(4機体制)
  ・準天頂衛星システムの軌道は、「準天頂軌道(3機)」と「静止軌道(1機)」の2種類。
  ・「静止軌道」は赤道面上にあり、高度約36,000kmの円軌道で、地球の自転と同期して約24時間で1周する軌道。そのため、衛星は地上からは静止したように見える。
  ・「準天頂軌道」は、静止軌道に対して軌道面を40〜50度傾けた楕円軌道で、静止軌道と同様に地球の自転と同期して約24時間で1周する軌道。東経135度近傍を中心とした8の字を描き、日本の真上に長く滞在するという特徴を有する。

 ・準天頂衛星初号機後継機について
  ・搭載アンテナ
   ・L帯平面アンテナ:L1-C/A、L1-C/B、L1C、L2C、L5、L6信号用
   ・L1Sアンテナ:L1S信号用
   ・L5Sアンテナ:L5S信号用
   (※今号機からL1−C/Bを追加。L1−C/AコードをBOC(Binary Offset Carrier)変調して送信する信号。また2号機以降からL5S信号を追加しており、初号機はこれが無い)
  ・軌道:準天頂軌道
  ・発生電力(太陽電池パドル):6.3kW(2枚構成2翼)
   (※初号機は5.3kW (3枚構成2翼))
  ・ドライ質量:1550kg (※初号機は1800kg)
  ・打ち上げ質量:4000kg (※初号機は4000kg)

 ・準天頂衛星初号機後継機打上げ準備状況
  ・9月12日:種子島宇宙センター搬入。
  ・9月13日〜10月7日:機能確認、燃料充填作業等。
  ・10月10日:衛星分離部結合。
  ・10月12日:フェアリング結合。
  ・10月16日:ロケットへの搭載。

 ・今後の予定
  ・10月26日:打上げ
  〜約10日:準天頂軌道到達。
  〜約2ヶ月:衛星搭載機器機能確認完了。
  〜約3ヶ月:QZSS End to End確認。
  〜約4ヶ月:測位チューニング。様々なパラメータの最終確認。
  ・2022年3月〜:サービス開始。


・質疑応答
MBC・週間気象情報では25日と26日のどちらも雨が降りやすい天気となっているが、違いは何か。
鈴木・今回の場合は雲の発生状況がいちばん大きな違いになります。25日は低いところから上空まで厚い雲に覆われる予報になっていますが、26日についてはそれが次第に薄くなってくる予報になっています。

MBC・25日は氷結層の発生があるのか。
鈴木・はい、ございます。氷結層の条件に関しては、25日は制約条件を満足できない見通しとなっています。

NHK・確認だが天候に関しては氷結層が25日に発生するためということか。これは今日の何時の天候判断か。
鈴木・氷結層かという質問にはYesです。14時半から開催した天候判断会議の結果でございます。

NHK・打ち上げ日が変わってもシーケンスは変わらないのか。また打ち上げ時刻はずれていくのか。
鈴木・シーケンスに関しては変わりません。打ち上げ時刻に関しては少しずつずれてまいります。

NHK・どれくらいずれるのか。
前田・1日あたり4分ずつ早くなっていきます。

読売新聞・制約条件としては氷結層の発生が予測されることが理由だが、その他に制約条件を満たしていないものはあるか。
鈴木・気象状況自体が不安定で他にも注視すべき条件がありますが、現時点で具体的に満足しないものに関しては氷結層であると考えて結構です。

読売新聞・次の判断の時期と、報道関係者への通知日時はいつ頃になるか。
鈴木・10月24日は14時半に判断会議を開催することを予定しています。ここでの結果を速やかにお知らせする計画となっています。

読売新聞・目安として本日くらいになるのか。
鈴木・そうです。
(※この日は15時50分頃に延期等の資料が配付された)

JSTサイエンスポータル・今回の初号機後継機は2号機と4号機をベースに開発し、仕様などは同じと見ていいのか。新規開発の要素は盛り込まれているか。
前田・2号機4号機とほぼ同じ設計となります。細かいところは多少違いがありますがサービスを利用していただくには同じと理解していただいて結構です。1つだけ判りやすい違いは、メインとなるアンテナが3号機と同じ平面アンテナを搭載しています。
(※2号機と4号機はヘリカルアンテナ)

JSTサイエンスポータル・3号機と同じ次の静止衛星は何号機になるのか。
前田・現在、5、6、7号機を開発中でして、今の予定ですと5号機が準天頂軌道、6号機が静止軌道、7号機が静止軌道に近い準静止軌道となります。(7号機は)若干の軌道傾斜角を持った軌道となります。

JSTサイエンスポータル・7機体制の中で静止衛星は何機になるか。
前田・7号機を静止衛星に近いとご理解していただいてかまわないと思いますが、そうしますと3号機、6号機、7号機の3機が静止軌道の衛星となります。

日本経済新聞・この後継機は何号機と呼ぶのか。今回の打ち上げはこの後継機1つのみか。
前田・今回は初号機後継機と表現させていただいておりまして、それ以外の表現は特に採用しておりません。今回の打ち上げは初号機後継機ひとつとなります。

フリーランス鳥嶋・今号機で平面アンテナに変わったことのメリットと理由は何か。
前田・技術的理由というよりも衛星システム全体の効率化を図っている形となります。一例として形状が若干シンプルになっています。軽量化と理解していただいて良いと思います。機能と性能につきましては特に大きな差異はございません。

フリーランス鳥嶋・今号機からこれまでなかったBinary Offset Carrier変調(L1−C/B)を追加しているが、具体的にどのようなもので、これまでとどこが違うのか。利用するにあたってのメリットは何か。
前田・技術的な細かい話になるが、採用した理由につきましては測位衛星が使用している電波の帯域がL帯という限られた帯域を使っておりますので、GPSと同じ帯域を使っております。そのため干渉レベルを少しでも低減する工夫をしてBOC変調というような電波の変調方式を採用しております。周波数干渉を避けるためと理解していただければと思います。受信するためにはこの変調方式に対応していただく必用があります。現在、受信機メーカーの皆様と技術的な調整を並行して進めているところです。受信機に大きな負担は無い変調方式だと我々は考えております。サービスの性能面では特段の変更はございません。周波数の干渉を避ける技術とご理解ください。

フリーランス鳥嶋・周波数の干渉という点では以前からあったと思われるが、今号機で初めて搭載した理由は何か。
前田・正確な経緯は今記憶しておりませんが、ここ数年ではなく、随分前からGPSを運用しているアメリカ等と議論しておりまして、とある時期で一定の調整が固まりましたので、その結果を反映したということになります。そのため5号機以降でもこの新しい変調方式を継続して採用する計画となっております。

NHK・発射管制棟(ブロックハウス)はH3からLCCに変えていくことになっているが、今回は既存のブロックハウスに作業する方がいるということか。
鈴木・その通りです。H−IIAではブロックハウスを継続します。

NHK・今回の後継機がサービス開始したあと、1号機は運用を続けるのか、それとも後継機の運用開始後にストップするのか。
前田・今年度末までの作業が完了した時点で交代をする形で初号機はサービスを中断させていただいて、待機衛星という扱いになります。軌道上での運用は継続させていただく予定です。

東京とびもの学会・イプシロンロケットと打ち上げの順番が入れ替わったが、共用の可搬レーダー以外に入れ替わった理由はあるか。
鈴木・順番が入れ替わった理由はスケジュールの関係でございまして、みちびき初号機後継機を打ち上げる約束がございましたので、こちらを先に打ち上げさせていただく事になりました。

東京とびもの学会・H3用の運搬装置(ドーリー)がH−IIAにも使える設計とのことだが、今回も含めてH−IIAで使う予定はあるか。
鈴木・H3用に整備した運搬台車を今回のH−IIA用にも使用します。そのため従来のドーリーではなく新しいドーリーを使ってVABからLP1へH−IIAを移動します。

東京とびもの学会・H3の本格的な運用が始まった場合、旧ドーリーは退役するのか。あるいは予備機として残すのか。
砂坂・基本的に新ドーリーで今後は運用をやっていく。これが軌道に乗れば古い方は退役を考えています。
(※JAXA 宇宙輸送技術部門鹿児島宇宙センター射場技術開発ユニット ユニット長 砂坂 義則)

東京とびもの学会・古い方は前回の運用で退役となるのか。
砂坂・何回やってからというのはこれから評価してからになりますが、いずれは退役する予定になっています。

東京とびもの学会・今回の打ち上げでH3用と共用するものは他にあるか。
砂坂・JAXAで安全管理を担っておりますが、安全管理を行うロケットの追尾系、データ処理を行う部分、そういったものについては共用している部分が多くて、H3でも今後使っていくものが多数ございます。

以上です。

No.2415 :イプシロンロケット5号機の打ち上げ時期について
投稿日 2021年10月8日(金)18時48分 投稿者 柴田孔明

イプシロンロケット5号機ですが2021年10月8日17時にJAXAより以下の発表がありました。
『国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、革新的衛星技術実証2号機を搭載したイプシロンロケット5号機の新たな打上げ時期について検討した結果、現在の天候予測が、当面の間イプシロンロケットの打上げに適した天候とならないこと、また、イプシロンロケットはH-IIAロケットと打上げに供する設備等に共通するものがあることから、イプシロンロケット5号機の打上げ時期をH-IIAロケット44号機の打上げ後に設定することといたしました。』

No.2414 :打ち上げ延期
投稿日 2021年10月7日(木)15時04分 投稿者 柴田孔明

2021年10月7日に予定されていたイプシロンロケット5号機の打ち上げは、上空の風が制約条件を満たさないため中止になりました。

No.2413 :イプシロンロケット5号機の打ち上げ日時について
投稿日 2021年10月5日(火)18時12分 投稿者 柴田孔明

イプシロンロケット5号機の打ち上げ予定日時は2021年10月7日午前9時51分21秒(JST)に再設定されました。

No.2412 :イプシロンロケット5号機の記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2021年10月5日(火)01時11分 投稿者 柴田孔明

 延期されていたイプシロンロケット5号機の新たな打ち上げ日の発表と、前回の原因に関する記者会見が2021年10月4日夕方に開催されました。
(※一部敬称を省略させていただきます)
(※写真は時刻装置の接続部分。写真提供JAXA)

・登壇者
JAXA 宇宙輸送技術部門イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行
JAXA 宇宙輸送技術部門鹿児島宇宙センター所長 川上 道生
JAXA 宇宙輸送技術部門鹿児島宇宙センター射場技術開発ユニット ユニット長 砂坂 義則

・イプシロンロケット5号機による革新的衛星技術実証2号機の打上げについて(発表文)

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、内之浦宇宙空間観測所から革新的衛星技術実証2号機を搭載したイプシロンロケット5号機について、地上設備に確認すべき事象が発生したため、10月1日の打上げを中止いたしましたが、調査の結果、原因を特定し、対策処置を完了いたしました。
 上記の調査結果・処置状況等を踏まえ、イプシロンロケット5号機の打上げ日を下記のとおり決定しましたので、お知らせいたします。

 打ち上げ日時 : 2021年10月7日(木)
 打ち上げ時間帯 : 9時51分21秒〜9時55分16秒(日本標準時)
 打ち上げ予備期間 : 2021年10月8日(金)〜2021年11月30日(火)
 
 なお、10月7日(木)の打上げの可否につきましては、明日以降の天候状況を踏まえ、再度判断いたします。

・イプシロンロケット5号機の打上げ中止に関する原因究明結果について

 まずはじめに10月1日の打ち上げにおきましては、打ち上げの直前に緊急停止をすることになりまして、多くの皆様、特にご協力をいただいている皆様、関係機関、また搭載されております衛星関係の皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけ致しました。打ち上げ中止の直後より原因の究明を進め特定され、処置の結果、対策の後の機能点検を含め良好な状態にあることを確認できましたので、先のご報告の通り打ち上げられることになりました。

 ・発生事象の概要
  ・内之浦にある可搬型ドップラーレーダ設備から種子島にある竹崎RCCに送信されたデータに含まれる観測時刻が、竹崎RCC側の時刻と大きく異なることを確認した。
  ・事象および設備の健全性確認を継続しているなか、打上げ直前まで事象が断続的に発生した。
  ・並行してこの事象がネットワークに起因するものであるのか、実事象ではなく誤信号であるのかの確認を続けた。
  ・ぎりぎりまで確認を続けたが、可搬型ドップラーレーダ設備の健全性を確認できなかったため、X−19秒で緊急停止させたのが当日の事象となります。

 ・データ解析結果
  ※可搬型ドップラーレーダ設備は、レーダ装置で観測した位置・速度のデータを処理部に送り込む。一方GPSアンテナから時刻装置を経て時刻データが処理部に送られ、レーダーデータに時刻データを付与し、竹崎RCCに送り込む構成になっている。
  ・10月1日の打上げ時に取得していたデータを事後解析した結果、レーダデータは健全であり、時刻が付加された後のデータにX−24〜3分の間に計8回の異常(※)があったことを確認した。
  (※)実際の時刻との差が−25800秒(過去の時刻) 〜 +720秒(未来の時刻)
  ・断続する事象であるため、10月1日の夜に可搬型ドップラーレーダ設備の運転を継続させて各機器間のデータをモニタしたところ、時刻装置から処理部に出力される時刻データが一時的に異常となる事象が確認された。
  ・このことから、時刻装置、GPS受信アンテナ、ケーブルに原因があると絞りこんだ。

 ・発生原因
  ・データ解析結果を踏まえ、要因の可能性がある装置類を再点検し、GPS信号をアンテナから時刻装置に取り込むコネクタに緩みを確認した。
  ・本コネクタ部に接続されるケーブルに軽く触れると、それと連動し時刻装置から出力される時刻データが正常になったり異常になったりすること、また、コネクタ部に緩みが確認されたことから、当該コネクタ部での接触不良が生じていると特定した。
  ・当該コネクタに接触不良が生じ、フィルタ処理部および回線I/F装置に異常な時刻データが入力されることで、打上げ当日に確認された異常に至ることを確認した。

 ・コネクタ部の不具合要因
 (※構成)「GPSアンテナからのBNCコネクタ」>「BNC→SMAコネクタ変換器」>「機器側のSMAジャック」
 ・コネクタ変換器と時刻装置を接続している部分に緩みが確認された。
 ・移設前後のケーブルの脱着は、BNCコネクタ側で実施している。

 ・要因分析
  ・変換コネクタ部分が緩んだ要因
   ・輸送時の振動環境やBNC側コネクタの脱着時に緩む可能性がある。
   ・コネクタ変換器は常時接続であり、定期的な緩み確認は実施されていなかった。
  ・接触不良に至った要因
   ・ケーブルの自重がコネクタ変換器にかかることによる負荷と、上記緩みから生じた。

 ・処置対策
  ・不具合の原因である緩みが発生していた時刻装置のケーブルコネクタを確実にトルクをかけて接続し、コネクタにケーブルの荷重による負荷がかからないようケーブルを支持する対策を実施した。
  ・打ち上げ時と同様の機能確認を行い、不具合は再発せず、可搬型ドップラーレーダ設備が良好に作動することを確認した。
  ・同様の変換器が他の箇所に使用されてないことを確認した。また、可搬型ドップラーレーダ設備および同様に種子島から内之浦へ移設させた高速度カメラ等の設備を対象に、コネクタが確実に接続されていることを、全数再点検した。
  ・以上より、打ち上げに向けた準備が整っていることを確認した。

・質疑応答
共同通信・GPS信号を取り込むケーブルの接続部分の緩みが原因で時刻情報に狂いが生じたということか。
・そのように考えております。

共同通信・当該部分の締め付けは特殊な装置を使うのか、あるいは手や一般的なレンチか。
・レンチなどの工具で締めます。

共同通信・普通のレンチで締めるのか。
・そうです。ただし通常時の輸送前後にここは取り外しはいたしませんので、締め付けは行っていません。

NHK・今回は打ち上げ前に見つかったので中止できたが、もし打ち上げ直後に時刻がずれたらどういう対処方法があったか。指令破壊するしかないのか。
・打ち上げの状態は複数のデータソースから得ていまして、もちろん冗長化も組まれておりますので、この装置のみが異常を示しただけでは飛行中断の処置にはなりません。

NHK・仮に気付くのが遅れて打ち上げても大事には至らなかった可能性があるということか。
・他のセンサが健全であればという前提がつきますがそうです。

読売新聞・図ではレーダー装置とGPS装置が独立しているように見えるが、これは独立のものなのか、同じ設備と考えて良いか。
・物理的には別の物でございまして、(GPS装置は)別の位置にあります。建屋の中にありケーブルで繋いでいます。

読売新聞・つまり結果的にはレーダ設備の不具合ではなかったのか。
・レーダー装置そのものではないが、可搬型ドップラーレーダ設備には含まれます。

NHK・建屋に時刻装置があるとのことだが、どういったことをする部屋か。
・建屋の中には他にもテレメータを受信する設備がある。(時刻装置を)持ち込んだ際にはそれを置く場所があり、接続して打ち上げに供する。

NHK・時刻装置とはどういったものか。
・GPS衛星の持っている時刻情報から時刻を取り出す装置でございます。ラックのスロットのひとつに設置されるものです。

NHK・2013年の運用開始から今回の部分は繋ぎっぱなしなのか。
・種子島と内之浦を行き来していまして、それぞれの場所で接続します。当該の緩んでいた部分については輸送のときには取り外さない部分です。

NHK・つまり該当部分は取り外しはしていないのか。
・そのように考えています。基本的には外さなかった部分と考えています。

NHK・リハーサルやX−20分頃まで事象が生じなかったのはどうしてか。
・そこは我々も何故あのタイミングでという所については、何か特異なことがあったのではないかと検討したが、今のところ特段何かあったということは見つけられておりません。緩みが確認された事象から、緩みが突然生じたと思っていませんので、運び込んで点検している時の緩みはあったのであろう、ただし接触不良という状態には至っていなかった、その状態で機能点検とリハーサルをすり抜けたものが、あの時点で接触不良になったと考えています。

NHK・持ち込まれた時点で点検はされていたということか。
・緩みという観点での点検はできていませんでした。(GPSアンテナからの)接続は確実に接続されていることを確認しましたが、常に繋がっている(コネクタ変換器)部分には注意が至らなかったと考えています。

NHK・注意が至らなかったということは、そこも含めて点検した方が良いと考えているのか。
・そうでございます。緩むポテンシャルがあったことが判りましたので、こういった所の改善を図る必要があると考えています。

NHK・対策で「ケーブルを支持する」とは具体的にどうやったのか。
・もともとの状態ですと、今回緩んだ変換器の箇所は何も支持されずケーブルが垂れ下がっている状態で、ケーブルの荷重がコネクタの接続部に付加される状態であった。対策としまして、コネクタ変換機の部分を上から紐で支えるような対策をいたしました。紐で巻いてケーブルの荷重がコネクタに伝わらないようにしたということです。

東京とびもの学会・可搬型ドップラーレーダは内之浦に持ってきて宮原に設置していると思うが、図ではデータを受けるのが種子島のRCCになっているが、内之浦のレーダセンターでは可搬型ドップラーレーダは見ていないのか。
・現地は現地で作業者を配置しておりますが、打ち上げ全体の管制を行いますのは種子島の総合指令管制棟ですので、そちらにこういった情報を一元的に集約している。

東京とびもの学会・内之浦のイプシロン管制センターとの役割分担はどのようになっているか。
・イプシロン管制センターはロケットと衛星の管制になります。飛行安全・射場系につきましては種子島が総合指令をするという役割分担となります。

東京とびもの学会同・打ち上げの際、各地上局は種子島が管轄していて、ロケットとペイロードのみを宮原のイプシロン管制センターでモニタリングしているということか。
・そのように理解していただいて結構です。

共同通信・今回原因が特定できたことで月末のH2A打ち上げには影響は無いという理解で良いか。
・今日発表した打ち上げ日で打ち上がればという前提ですが、今のところ影響ないと考えています。

読売新聞・図で(可搬型ドップラーレーダからの表示が)「データ」となっている部分はロケットの位置や座標が表示されていると考えて良いか。
・そのように考えていただいて結構です。

JSTサイエンスポータル・原因がアナログ的と感じたが、(アンテナからの)コネクタの接続のときに変換器のぐらつきなどに気付かなかったのか。
川上・結果的に気付けなかったのは事実でございます。

JSTサイエンスポータル・特に異常は確認できなかったという表現で良いか。
・そうです。

JSTサイエンスポータル・対策として全数を再点検したとあるが何カ所くらいか。
・変換機を挟んだものは他にはございません。一般的な接続箇所として、200〜300箇所ございました。

NVS・コネクタはとBNCコネクタとF型コネクタか。
川上・(GPSアンテナ側は)BNCコネクタと、(機器側は)SMAコネクタと呼んでおります。

NHK・監視画面の表示のタイミングはどれくらいの間隔か。
・0.1秒毎にデータが追加されていきます。

NHK・打ち上げ日は明日の天候会議を行ったあとに再度発表されるのか。
・明日、天候判断をして再度発表いたします。夕方くらいになると思います。

以上です。


No.2411 :イプシロンロケット5号機打ち上げ中止会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2021年10月3日(日)15時09分 投稿者 柴田孔明

 イプシロンロケット5号機は2021年10月1日9時51分21秒に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げ予定でしたが、地上局の問題から同日は中止となりました。午後からこの件に関する記者会見がリモートで開催されています。
(※一部敬称を省略させていただきます)
(※写真は可搬型ドップラーレーダ。全長約6メートル、幅約2.5メートル、高さ約4メートル、質量約14トン、運用開始は2013年のイプシロンロケット試験機より。写真提供JAXA)

・登壇者
JAXA イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行
JAXA 宇宙輸送技術部門 鹿児島宇宙センター所長 川上 道生
JAXA 鹿児島宇宙センター 射場技術開発ユニット ユニット長 砂坂 義則

・発表文:イプシロンロケット5号機による革新的衛星技術実証2号機の本日の打上げ中止について
 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、内之浦宇宙空間観測所から革新的衛星技術実証2号機を搭載したイプシロンロケット5号機の打上げを2021年10月1日9時51分21秒(日本標準時)に予定し、作業を進めておりましたが、ロケットの自動カウントダウンシーケンス中に、地上設備において確認すべき事象が発生したため、打上げ約19秒前に緊急停止しました。本日の打上げを中止いたしました。
 現在、詳細状況を確認中です。
 なお、新たな打上げ日については、決定し次第お知らせいたします。

・本日発生した事象について(川上)
 本日準備万端整えて打ち上げに臨んだ訳でありますが、結果的に中止ということになってしまいました。原因についてはまだ調査中でございますが、鹿児島宇宙センターの所掌する、打ち上げ時には打ち上げ安全管理業務、ロケットを安全に打ち上げるために使用する設備に原因があるというところまでは判ってございますので、私の方からご説明致します。
 本日10月1日9時51分21秒に打ち上げを予定しておりましたが、ロケットのカウントダウン中に、地上設備において確認すべき事象が発生しました。打ち上げ時の制約条件を満たさないことから、打ち上げの約19秒前に緊急停止したというものでございます。打ち上げ時の制約条件と申しますのは飛行安全系・射場系の各設備のところにございます「各設備が正常に動作し、データ取得及び飛行安全管制に支障がないこと」に抵触したということでございます。
 当該設備はここ内之浦宇宙空間観測所に設置してございますレーダー設備でございます。ロケットの飛行初期の位置とか速度を計測する役割を担っているというものでございます。このレーダー設備の出力に時刻と位置の情報がございますが、その時刻の情報が一時的に誤った時刻となる事象がカウントダウン中に発見されましたことから、このまま打ち上げると飛行中のロケットのモニタが正常にできない可能性があると判断し緊急停止しました。
 繰り返しますが原因については究明しているところでございますが、この設備以外のロケット・衛星等は正常な状態が維持されています。

・質疑応答
東京とびもの学会金木・今回不具合が出たものは初期追尾レーダーと呼ばれるものか。
川上・その言い方は私は承知しておりませんが、意味合いとしてはリフトオフからしばらく追尾するものでございます。

東京とびもの学会・誤った時刻がロケットにどのように影響するのか。
川上・飛行中の位置と速度を監視する訳だが、それはある時刻にどこにあるという情報が必要になります。その時刻がずれてたりしていると正しい位置を示さないことになり、誤った判断に至ってしまう可能性があります。

東京とびもの学会・ロケットは正常であっても、レーダ側の時刻に不具合があると本来の位置から外れていると検知される可能性があるということか。
川上・はい。

NHK堀川・当該設備はどういう設備なのか。いつ設置して、どういったことに運用されているのか。
川上・まさにアンテナでございまして、アンテナから発振してロケットから反射する信号を捉える。その跳ね返った角度や時間によってその時点でロケットがどこにいるかを知るといったものでございます。当該設備はイプシロンロケットの初号機前に整備しておりますけど、H2Aロケットでも使用しております。2013年から運用しております。

NHK堀川・H2Aでも使うということは直近の43号機でも使用して異常は無かったのか。
川上・その通りでございます。

NHK堀川・新たな打ち上げ日の目処はいつか。
川上・原因が何か特定して、どういった対策を取るか、それにかかっておりますので、現時点では申し上げられない状況です。

NHK・10月25日の種子島でのH2Aロケット44号機への影響も出るということか。
川上・影響の無い範囲で処置をしたいと全力で原因究明に取り組んでいます。

JSTサイエンスポータル草下・過去に同様の事象はあったか。事象の希少度はどうか。
川上・現在判っている状況では、これまで経験はございません。

JSTサイエンスポータル草下・2013年の初号機でも19秒前に緊急停止したが、19秒はたまたま一致したのか。あるいはカウントダウンの特定のタイミングで共通しているのか。
井元・全くたまたまです。

共同通信須江・時刻誤りの発生状況をもう少し詳しく。発覚したのは通常の確認手順の中で発覚したのか、あるいは異常信号等でアラームが鳴って判ったのか。「一時的」とあるのは、誤った時刻のあとに復旧したのか。
・発生を確認したのはカウントダウンに入った後です。常におかしなデータが来るわけではなくて、正常なデータがあれば異常なデータもある状態が続いたということです。

共同通信・復旧を試みたがしなかったのか、それともこういった事象なのでとにかく止めたのか。
・直前でしたので新しい操作をしたのではなく、状況を見て事象が改善するかモニタしたがしなかったという事でございます。

共同通信・ディスプレイなどを目視して判ったのか、それともアラームが出て判ったのか。
・データは常にモニタしていて、時刻ですので普通ならシーケンシャルに出るところが、飛んだりあり得ない時刻が表示されたりしたことを目でも確認した。

フリーランス鳥嶋・イプシロンは4号機からレーダーではなく飛行安全のセンサで追尾し、レーダー設備のコスト削減を行っていると伺っているが、今回のレーダーはどういったものか。
井元・レーダー局を無くしたのは二次レーダーの話で、機体に搭載するレーダートランスポンダというものがあります。それに対して地上設備は飛行安全管制区間をずっと地上設備で管制するものが3号機までのものです。それに対して4号機以降は二次レーダーは無くしました。今回は一次レーダーになるのですが、これはリフトオフ直後で、機体には搭載物は無くて、地上設備だけでロケットを追尾する設備です。その設備は使っている。

フリーランス鳥嶋・これは内之浦にあって飛行初期だけ見ているということか。
井元・はい。

フリーランス鳥嶋・他にもレーダーが飛行経路の先にあって監視しているのか。
井元・いえ、レーダーはこれだけです。後は自分で場所や速度を計測してテレメータというデータを地上に降ろす装置と地上設備で計測しています。

フリーランス鳥嶋・このレーダーは宮原地区にあるのか、それとも数年前に入った可搬式か。
井元・可搬式です。種子島と内之浦を往復して使っています。

読売新聞中居・今回の問題は2013年にカウントダウンが止まったときもコンピュータのトラブルだったが、その事象とは全く別なのか。
川上・全く別と言えると思います。

読売新聞・時刻情報が一時的に誤ったということで、本来その時点の時刻が表示されるべきなのか。
川上・そうです、レーダーで観測した時刻が付与されるのが正しい状態です。

読売新聞・原因究明はどのくらいかかりそうかという見通しもまだ判らないのか。
川上・そうです。

読売新聞・機体はいったん格納されるのか。今後どうなるのか。
川上・ランチャは打つときだけ旋回して打ち上げるもので、普段は整備塔という建物の中に格納します。その関係で機体は既に格納された状態にあります。

時事通信・神田・当該のレーダー設備はH2Aの打ち上げでも使うとのことだが、10月の「みちびき」打ち上げに関しては、これが解決されないと同じ物を種子島に持っていって使う事ができないということか。
川上・そうです。これを使う予定ですので解決させる必用がございます。

時事通信・可搬式ということで1台だけを種子島と内之浦の間で運んで運用しているのか。
川上・その通りでございます。

フリーランス秋山・衛星運用で地方太陽時が9時台になるように設定されるように運用するとの話だったが、次に同じ条件になる間隔は何日ぐらいか。
井元・これは毎日同じ時刻で大丈夫です。

フリーランス秋山・するとその制約で2週間後になったり6日後になったりすることは無いということか。
井元・はい、それはありません。

宇宙作家クラブ渡部・19秒前に停止したが、機体だけなら再打ち上げはいつ可能になるか。
川上・電池の充電をしないといけないという話と、Y−0という打ち上げ当日の作業の作業をしないといけない。機体のみで点検しないで済む状況であればそこそこすぐ打てます。

宇宙作家クラブ渡部・1日くらいか。
川上・1日はさすがに無理かもしれない。作業者も休ませなければいけない。

JSTサイエンスポータル草下・現段階で最短でいつとか、あるいは最短でも向こう何日は打ち上げは無いという言い方はできるか。
・そこは原因究明をしっかりやらなければならない今度同じような事を起こさないように原因究明と対策をきっちりやらなければならないので、現段階で最短でいつという話はできない。

KKB柏野・今回トラブルが出たレーダーはJAXAでは何と呼ばれているか。
砂坂・正しくは「可搬型ドップラーレーダ」です。可搬型で、レーダーの方式はドップラを使用したものです。

KKB・問題があったのは地上設備で、機体や衛星は無いということか。
・ロケットと衛星は問題ありません。

共同通信須江・設備で地上局が7つあったと思うが、内之浦以外の6箇所はテレメータの受信専用か。あとチリとアメリカとオーストラリアの3つはJAXAから海外機関にお願いして運用してもらっているのか。
・地上局は全部で9つ用意していまして、内之浦にレーダーとテレメータ、種子島に2つ、沖縄に1つ、海外に3つ、合計9つの地上局を用意しています。今回のレーダー以外はテレメータを受信する地上局になります。海外は今回すべてJAXA側で用意した地上局で運用しています。

共同通信・海外局は全てJAXAの地上局と言って良いか。
・2つは以前からJAXAで使っていたもので、北米局は今回新たに追加で用意したものです。

鹿児島テレビ上枝・可搬式レーダーはJAXAの設備か。
川上・JAXAの設備でして、種子島と内之浦を必用な時に移動して使用しているものでございます。

鹿児島テレビ・移動式レーダ設備に不具合があって今回打ち上げを中止したという言い方で良いか。
川上・はい、そう見ております。

鹿児島テレビ・これはリハーサルでは使用したのか。
川上・はい、確認しておりまして、そのときは正常でございました。

鹿児島テレビ・これの修理を終えないと今月下旬のH2Aの打ち上げにも影響が出る可能性あるという認識で良いか。
川上・はい。

鹿児島テレビ・具体的にどういった事象が起きたか。
川上・観測した時刻と位置情報がセットで記録されるものだが、過去の時刻が出て来たり、未来の時間が表示されたりする事象でした。

東京とびもの学会金木・搭載衛星は延期で再整備や補充電などは発生するか。
井元・9基の衛星を搭載しているが、それぞれ補充電の時期が決まっています。RAISE−2につきましては数日であれば補充電は特に不要で、それ以上長引くと補充電の可能性が出てくる。残りの衛星につきましては、当面は不要になります。

東京とびもの学会・他に延期によって搭載衛星に及ぼす影響があれば教えて欲しい。
井元・全体的な確認は必要ですが、今のところ特に影響があるとは聞いておりません。

東京とびもの学会・レーダーの不具合が解消されて、ロケットの点検が終われば再度打ち上げに臨む態勢であるということか。
井元・その通りです。

NHK堀川・可搬式レーダーは普段どこにあるのか。
砂坂・普段は種子島に置いていて、今回イプシロンの打ち上げに向けて先月中旬頃に移動させてきて準備を進めてきたものです。

NHK・これはその頃からずっと起動しているのか、今朝起動したものか。
砂坂・基本的には毎日、使用する前、点検する前に起動をかけます。

NHK・今日はいつ起動して、いつ事象が起こったか。
砂坂・正確な起動時刻は今待ち合わせていませんが、作業を開始したのは昨夜22時前後になるので、その頃に起動をかけていると思います。事象についてはカウントダウンに入ってX−20分程度前から確認されたとの報告を受けています。

NHK・打ち上げに関係無く、これまでの経験でこういった事例はあったか。またその受け止め。
川上・同じ事象は経験がございません。設備が原因で打ち上げが出来なかったことについては、重く受け止めています。

読売新聞中居・時刻と位置の情報がセットで表示されるとのことだが、どのくらいの頻度で表示されるものか。
・100ms毎、1秒間に10回記録されるものです。

読売新聞・表示をイメージしたいが、何時何分という表示なのか、日付だけでなく年まで出ているのか。
砂坂・正確なことはこれからの調査になります。100ミリ秒に1回という周期で送っていますので、事象が長く続けば気付く。今回は1秒程度出たということで目視でも確認できた。通常は自動判定で連続性が無いと判断したときに、連続性が無いと表示される。

読売新聞・時刻に併せてエラーのメッセージのようなものが表示されるのか。
砂坂・0.1秒刻みでデータと時刻が変わっていくところが、それ以上になったり、過去に戻ったりした場合はエラーとして棄却されるなどの処理が行われます。

読売新聞・エラーのメッセージも出るのか。
砂坂・そうです。

読売新聞・表示される時刻はどういった形式か。年月日からか。
砂坂・ディスプレイの詳細まではわかりません。伝送しているデータの中身としては年月日秒が入っています。

朝日新聞小川・明日明後日の直近での打ち上げはありえるか。何日前に打ち上げを発表するか。
川上・原因を突き止めてからなので明日は無い。新たな打ち上げ日に関しては関係機関等と調整した上で決定するものでございますので、現時点で具体的なことは申し上げられない。

共同通信須江・可搬式レーダーの原因解明はどこで行うか。内之浦で行えるのか、東京などに運んで精密に調べる必用があるのか。
・今のところ現地で原因が突き止められると考えて進めています。

共同通信・トラブルはいつ確認したか。X−20秒前か。
・この辺の時刻も今詳細を詰めているところです。この状態で打ち上げができるかどうかの確認に入ったのは10分より少し後です。これも原因を突き止めた上で報告させていただきたいと思います。

共同通信・打ち上げの10数分前からトラブルが起こったということか。
・そうです。時々そういう異常なデータが出るという状況が見られまして、このまま打ち上げられるかという検討確認を進めた結果、緊急停止せざるを得ないという判断に至ったというものでございます。いつからについては、もう少しデータをきっちりと見る必用があるかと思っておりますが、確認に入ったのはそういう時間です。

共同通信・地上設備は9つとのことだが、7箇所で9つの設備ということか。
・はい。

KYT園田・正しい時刻が表示されないと、具体的にどういったトラブルが起きる可能性があるか。
川上・あらかじめ正常な場合に飛行する経路を我々は解析で求めておりますので、ある時刻にどこにあるというのが正しい情報になるが、その時刻情報がずれたりしますと、正しい位置にロケットがあってもずれた位置にあると誤認識してしまう可能性があるということでございます。

KYT・誤った判断が衛星分離にも影響してくるということか。
川上・ロケットを安全に飛行させることが必用でございますので、警戒区域外に向かうように見えてしまう事が起こりうる。そういった場合には安全化処置を行わざるを得ないということになりますので、そういった事を避ける必要があるということでございます。

東京とびもの学会金木・緊急停止をかけた時の操作は、ロケット側が自律的に止めたのか、人間がそれを見て止めたのか。
井元・射場系のメンバーが制約条件に抵触すると判断して手動で止めました。

東京とびもの学会・その場合は緊急停止のスイッチを押すのか。
井元・はい。

時事通信神田・手動で止めたとのことだが、例えばこういう状態が起きていてそのまま走らせるとよくないという状態で、自動的に止める方法はあったか。あるいは手動で止めないとそのまま飛んでいってしまうのか。
井元・ここは自動で止める仕組みが無いので手動で止めるしかありません。ありえないが、もし気付かず止めなかったら、そのまま飛んでいきます。

時事通信・初号機では誤検知ではあったがクリティカルだとして自動的に止まったが、今回のものはそこまでクリティカルにはならないという設計思想みたいなものがあるのか。
井元・普通に考えると打ち上げ直近にこういう事が起こるとはあまり考えにくい。判断に対しては時間的余裕があるものになります。そういう観点でいろんな設備があるが全て自動で止まる訳ではなくて、健全性を確認して準備完了ということを確認して打ち上げるのが常で、万が一止めないといけない時には自動ではなくて手動で止める。これは毎回訓練しています。

時事通信・最終的に止められないのは何秒前か。
井元・打ち上げ直前です。点火信号が出る直前まで止められる。

NHK堀川・可搬型レーダーの大きさが判れば教えていただきたい。事象の発生が当初の説明ですとX−20分頃ということだったが、先ほどはX−10数分頃とのことだったので確認したい。
・時間は詳細にデータを見る必用がございますが、最終的に緊急停止に至ったデータが確認されたのは10数分前です。
・レーダーの大きさですが、どう表現するかは難しいのですが、アンテナ本体はパラボラではなくて平板型で、概ね畳一畳の大きさのアンテナが左右に1枚ずつ計2枚ついているもので、片方が送信用のアンテナで片方が受信用のアンテナという形になっています。レーダー本体は牽引できる形態になっていまして、概ね長さが6m程度のトレーラーになっています。

JSTサイエンスポータル草下・原因究明が出来た段階や打ち上げ日時決定後に、説明の機会はあるか。
岸・原因究明を行い状況が判明した段階で会見なりプレスリリースなど適切な形で皆様にお伝えすること考えています。

フリーランス鳥嶋・レーダーについて昔は地上に置いていたと思うが、可搬型を導入された理由は何か。使い回せればコストダウンになるということか。
・大きな理由はコストダウンです。

フリーランス鳥嶋・移動のコストを考えても可搬型の方が安いのか。
・そうです。

フリーランス鳥嶋・これは1台だけしかないとのことだが、予備が無くて1台しか用意していない理由は何か。
・整備コストもございますし、1台ではございますが中に冗長な部分とか、予備品を持っているとか、そういう風に対応しています。

フリーランス鳥嶋・このレーダーは既製品か、特注か。
・基本は販売されているものですが、それをJAXAのロケットを追尾できるようにモディファイして開発したものです。

フリーランス鳥嶋・国産か輸入か。
・主要な部分は輸入品になります。

フリーランス鳥嶋・メーカーはどこか。
・デンマークから輸入したものです。メーカー名は差し控えさせていただきます。

フリーランス鳥嶋・輸入して使っているものか、輸入した上で改修したものか。
・基本は輸入品で、JAXAの仕様に合わせて一部手を加えていただいたものを輸入致しました。さらに日本に来てからJAXAのシステムのインターフェイスで使えるようにするために手を加えたものです。

以上です。