宇宙作家クラブ
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No.2376 :H-IIAロケット43号機の機体移動
投稿日 2020年11月29日(日)01時41分 投稿者 柴田孔明

三菱重工によると、H-IIAロケット43号機は2020年11月29日午前2時00分(JST)から機体移動を開始し、同日02時24分に終了したとのことです。

(※上の投稿時間はサーバー内時間のため、実際の投稿時間と異なる場合があります)

No.2375 :H-IIAロケット43号機第1回判断
投稿日 2020年11月28日(土)22時18分 投稿者 柴田孔明

2020年11月28日の23時前に連絡があり、H-IIAロケット43号機の第1回GO/NOGO判断会議の結果はGOとのことです。
(※上の投稿時間はサーバー内時間のため、実際の投稿時間と異なる場合があります。現状では+1時間すると実際の投稿時間と合うようです)

No.2374 :H−IIAロケット43号機打ち上げ前プレスブリーフィング
投稿日 2020年11月27日(金)22時59分 投稿者 柴田孔明

 2020年11月27日午後より、H-IIAロケット43号機/データ中継衛星1号機・光データ中継衛星の打ち上げ前プレスブリーフィングがリモートで行われました。
 回線の状態により聞き取れなかった部分がありますがご了承ください。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部付調査官 野田 浩絵
宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門 JDRSプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 高畑 博樹
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 MILSET長 鈴木 啓司

・打ち上げ日時について
 三菱重工業株式会社は、データ中継衛星1号機・光データ中継衛星を搭載したH-IIAロケット43号機の打上げについて、下記のとおり決定いたしましたのでお知らせいたします。

 打ち上げ日:2020年11月29日
 打ち上げ時刻:16時25分(日本標準時)
 打ち上げ時間帯:16時25分〜17時49分(日本標準時)
 打ち上げ予備期間:2020年11月30日〜2021年1月31日

・ロケットについて
 H−IIAロケット202型(※SRB−Aが2本の標準的な機体)
 4Sフェアリング

・打ち上げ準備状況
 ・11月25日(Y−3作業)
  1段/2段推進系・電気系・機構系点検作業
 ・11月26日(Y−2作業)
  火工品結線
  2段ガスジェット推進薬充填
 ・11月27日(Y−1作業・予定)
  電波系統点検
  推進系最終クローズアウト
  機体アーミング
  機構系/アンビリカル離脱系最終準備
  射点/貯蔵所系設備準備
 ・11月29日(Y−0作業・予定)
  機体移動
  射点設備系最終準備
  ターミナルカウントダウン

・打ち上げ制約条件についてはこれまでの標準的なH−IIAと同じ。

・気象状況について
 今日明日は風が強いが作業の支障になるものではない。
 打ち上げ時間帯は曇り一時晴れ。雲が多い予報だがロケットの打ち上げに支障のある気象条件にはならないと評価しています。

・質疑応答
読売新聞・打ち上げシーケンスで衛星分離の時間帯は何分後か。静止軌道に到達する日数はどれぐらいか。
鈴木・分離は打ち上げ後30分くらいを予定しています。軌道については分離の時点で静止トランスファ軌道に分離されます。

読売新聞・30分後に分離されたときの高度は何キロか。
鈴木・分離時の軌道は約300キロです。

読売新聞・最終的には三万六千キロの高度に到達するという認識で良いか。
野田・はい、静止軌道三万六千キロでございます。

読売新聞・何日後に到達するか。
野田・ロケットの投入精度にもよると思いますが、一般的には10数日かかるということでございます。

時事通信・打ち上げ時間帯の16時25分〜17時49分がこの日のウインドウで、このいちばん頭で打つということか。何らかの理由で遅れた場合、この時間帯の中であればどこでも打てるのか。
鈴木・最初の時間に打つかという質問に関してはイエスでございます。その時間に打てるように準備を進めています。トラブルや諸般の事情で打ち上げ時間を見直す場合は、打ち上げ時間帯の中で打ち上げることになります。この中でどこでも打ち上げて良い訳ではなくて、打ち上げ可能な詳細な時間がありますので、それに合致するように打ち上げてゆくことになります。

時事通信・雲が多くなるとのことだが、氷結層の心配が無い雲か。
鈴木・打ち上げ時刻付近で予想されているのは、比較的低層の薄い雲と伺っております。氷結層を含む雲が出てくると打ち上げに影響を与える可能性がございますが、現在予報されている雲はそれよりも温度帯が高い雲、かつ薄い雲ということで、打ち上げに支障のある雲では無いと評価しています。

NHK鹿児島・機体移動の時間はいつか。13時間前とかその辺りか。
鈴木・機体移動は通常のH−IIAの標準的なシーケンスとだいたい同じ時間帯を考えています。詳細な説明はこの場ではご容赦願います。

NHK鹿児島・13〜14時間前とかその辺りか。
鈴木・概ねそうです。

NHK鹿児島・データ中継衛星が初めて運用されることで、情報収集の体制がどのように広がっていくと期待されているか。また10機体制になるのは何年度を目指しているか。
野田・これまでは情報収集衛星が地上を通過する時のみやりとりが出来たが、データ中継衛星の導入によって、データ中継衛星から見える位置にある時間帯には地上とのやりとりが出来るようになり、地上と通信可能な時間帯が大幅に増加して即時性の向上やデータ伝送能力の向上に資するものと考えております。10機体制については、現状の宇宙基本計画の行程表では令和9年度としておりますけれども、最新の状況といたしましては衛星に必要な機能・性能ですとか、開発スケジュールを精査しておりまして、現在のところ令和10年度以降となる見込みでございます。

NHK鹿児島・通信可能な時間が増えることと即時性の向上について、安全保障面や災害面で具体的なイメージがあれば。
野田・詳細について具体的には申し上げられないが、これまでですと地上局の上空に来るまで待たなければならなかったが、それよりも短い時間で地上に画像データ等を送ることが出来るということで、即時性が向上するということでございます。

NVS・もし打ち上げ日が変更される場合、1日につき何分くらい打ち上げ時刻がずれるか。
鈴木・詳細な説明はご容赦願います。これまで説明させていただいている打ち上げ時間帯である16時15分から18時15分の間で、延期の場合も打ち上げを行うとご理解いただけたらと思います。

日本経済新聞社・基本的なことで、成功と失敗の場合のH−IIAの成功率を確認したい。また三菱重工として今回の43号機で初めてのところはあるか。今回の光通信衛星は一般の人にどう関係してくるか。
鈴木・H−IIAに関しましては今回が43回目の打ち上げになりまして、今回成功するとそのうち42機が成功となりますので、成功率としては97.7%ということになります。失敗した場合の成功率は計算してこなかったのでご容赦ください。機体について特に大きく変更した所はございません。標準的なH−IIAであるとご理解ください。
野田・光通信に関してはJAXAさんのミッションの方で、今回は2つのミッションが相乗りをしております。当方は情報収集衛星のデータ中継で、情報収集衛星の中にデータ中継機能が導入される。これまでより、より早く必要な情報を日本政府としてとることが出来ることになりますので、それが国民の皆様にも裨益すると考えております。

日本経済新聞社・JAXAでの位置付けをお伺いしたい。
高畑・今回は光データ中継衛星ということで、これは私共が過去に「こだま」というデータ中継衛星、「きらり」という光データ通信衛星を打ち上げておりまして、両方の技術を融合させた形で新しい光データ中継衛星というものの技術実証と運用実証を行うものでございます。

日本経済新聞社・数字的にこういったところを改善したというものはあるか。
高畑・端的な数値で申しますと、「こだま」のときはデータ中継が240Mbpsだった。今回の光データ中継衛星は1.8Gbps、7倍以上も伝送速度を上げた。

南日本新聞社・データ中継衛星が軌道投入されたら、いつから使うか。
野田・一般論として打ち上げられた人工衛星は運用開始前に所要の確認作業に一定の時間を要することになりますので、データ中継衛星も一定の期間を要すると考えています。

南日本新聞社・具体的には。
野田・一概には言えないが、概ね数ヶ月はかかるという感覚でご理解いただきたい。

南日本新聞社・光通信だが、データを中継衛星は受け取るだけか、地球観測衛星とやりとりをするのか。
高畑・実際には光データ中継衛星を打ち上げて、低軌道の観測衛星で観測されたデータを、光データ中継衛星経由で地上にデータを伝送することでございまして、具体的には来年度以降打ち上げが予定されているALOS3(先進光学衛星)に光機器を搭載して、そのALOS3と光データ中継衛星の間でデータの受け渡し、そのALOS3のデータを地上に降ろす実証を行っていくものでございます。

南日本新聞社・データ中継衛星側からすると、データを地球観測衛星から受け取る形になるのか。
高畑・メインは受け取る側だが、送る方もできます。

南日本新聞社・地上局には渡すだけになるのか、受け渡しができるのか。
高畑・受け渡しは出来ます。実際には観測されたデータを光データ中継衛星で受けて地上に降ろす、それからALOS3に対してコマンドを地上から光データ中継衛星を介してALOS3に届けるということでございます。

以上です。

(※上の投稿時間はサーバー内時間のため、実際の投稿時間と異なる場合があります。このサーバーでは日本時間にも夏・冬時間を適用しているようです)

No.2373 :H-IIAロケット43号機について
投稿日 2020年11月27日(金)13時54分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット43号機の打ち上げ予定日時は2020年11月29日16時25分(JST)となりました。打ち上げ可能時間帯は同日16時25分〜17時49分(JST)となっています。

(※上の投稿時間はサーバー内時間のため、実際の投稿時間と異なる場合があります)

No.2372 :H-IIAロケット42号機打ち上げ後記者会見
投稿日 2020年8月11日(火)01時12分 投稿者 柴田孔明

 H-IIAロケット42号機は2020年7月20日6時58分14秒に種子島宇宙センターから打ち上げられ、搭載されたUAEの火星探査機「HOPE」を正常に分離しました。同日、Webで打ち上げ後記者会見が開催されています。
 回線の状態により聞き取れなかった部分がありますがご了承ください。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
先進技術省 大臣 サラ・アル アミリ閣下
アラブ首長国連邦 宇宙庁 長官 ムハンマド・アルアハバビ閣下
ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター 長官 ユーサフ・ハマド・アルシャイバニ閣下
ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター エミレーツ火星ミッション プロジェクトディレクター オムラン・シャラフ
三菱重工業株式会社 執行役員 防衛・宇宙セグメント長 阿部 直彦

・打ち上げ結果報告(阿部)
三菱重工業株式会社及び宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから2020年7月20日6時58分14秒に、火星探査機「HOPE 」を搭載したH-IIAロケット42号機を予定通り打ち上げました。
 ロケットは計画どおり飛行し、火星探査機を正常に分離、予定の軌道に投入した事を確認しました。ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、南南西の風7m/s、気温27.7度Cでした。
 火星探査機「HOPE」が軌道上での初期機能確認を無事終了し、火星までの航海ならびに火星での所定のミッションを成功裏に完遂されることを心より願っております。
 本日の打ち上げ成功でH-IIAは通算42機中41機の成功、成功率は97.6%です。H-IIBを合わせると、通算51機中50機の成功、成功率98.0%です。またH-IIA/H-IIB、45機連続の打ち上げ成功となりました。
 今回は2018年10月の「KhalifaSat」に次ぐ2回目のUAEミッションでした。また2012年5月の「KOMPSAT-3」、2015年11月の「Telstar 12 VANTAGE」とあわせ、4回目の海外顧客対応となりました。特に今回の火星探査機「HOPE」についてはUAE建国50年の記念行事とかかっており、無事打ち上げる事が出来て大変安堵しています。
 当社は引き続き安定的な打ち上げを提供できるよう更に心を引き締め、細心の注意と最大限の努力を傾注してまいります。
 今回の打ち上げに際し、コロナウィルスや豪雨による困難な状況の中、UAEからの関係者をあたたかく迎え入れていただいた地元の方々、ならびに政府地元自治体の皆様方をはじめ、これまでの打ち上げと同様、多くの方々にご協力ご支援をいただきました。あらためて皆様に心よりお礼を申し上げるとともに、引き続きご支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
(※ここからは英語による挨拶です)
 最後にUAE宇宙庁とMBRSCの皆様に英語でお礼を申し上げたいと思います。UAE宇宙庁そしてMBRSCが引き続きご支援をしていただくことにお礼を申し上げたいと思います。2016年3月の契約以来4年間にわたり、ご支援をいただきました。またコロナウィルスにより3週間の滞在にご協力いただいたことにもお礼を申し上げたいと思います。今回の打ち上げ成功によりましてUAEと日本の関係がさらに良くなることができたと思います。「HOPE」の成功を祈念いたします。

・サラ・アル アミリ閣下
 UAEそして日本の皆様、両方の国にとって初めての火星への打ち上げとなりました。今回成功したことにおめでとうございます。いま、火星へと向かっております。今回のミッションですが、UAEの建国50周年を祝うものであります。そして次のステージへ科学技術の発展、これまで50年間私達は非常に複雑なシステムのデザインを行ってきましたが、こういったことの能力を欠いておりました。このようなサイエンティフィックをしっかり打ち立て、初めて火星に到達することで、火星の1年間の中で気候がどのように変わっているかを把握していきたいと思います。このような成功に結びついたのは、日本のMHIの皆様、そして日本政府の皆様のおかげです。特にこのようなコロナウィルスの流行の中、種子島の皆様にも私達の打ち上げをサポートしていただきました。このような環境で私達が打ち上げを成功裏におさめることに不可欠なサポートをしていただいたと思います。日本政府、そしてJAXA、三菱重工の皆様、このような困難な時期にサポートをいただきましたことを感謝申し上げます。UAEの火星探査チームを代表いたしまして、そしてUAEの宇宙庁、そしてグローバルなパートナーの皆様のご尽力無しには、私達はここまで到達することができませんでした。様々なご尽力をいただいたことを感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

・ムハンマド・アルアハバビ閣下
 このような機会をいただき非常に嬉しく思います。関係する皆様にお祝いを申し上げます。また成功することが出来て非常に嬉しく思います。2年前には私達の衛星である「KhalifaSat」を成功することができました。UAEと日本が宇宙関係の協力を2016年から行っていることも嬉しく思います。UAEとJAXAで戦略的宇宙開発の合意もいたしました。この2年間でそれを進めることができました。チームのメンバーにもお礼を申し上げたいと思います。チームも非常に嬉しく思っています。素晴らしい成功を収めることができて嬉しく思っています。また私達が感謝していることをお伝えしたいと思います。ここ種子島の素晴らしい皆様方のおもてなしをいただきまして、特にこのような難しい時期において、あたたかく支援していただきまして本当にありがとうございます。

・ユーサフ・ハマド・アルシャイバニ閣下
 今回のミッションは私達UAEにとって、そして地域にとって非常に大きなマイルストーンでした。何百万人の若い人にとって非常に大きな力を与えています。今まで不可能だと思っていた夢を成し遂げたということです。特にJAXAの皆様にサポートの感謝を申し上げたいと思います。そして三菱重工の皆様、この美しいローンチをしていただいたことに感謝申し上げたいと思います。今回の契約からスペースクラフトを打ち上げるまでお立ち会いいただきました。日本政府、そしてUAE、様々なサポートをいただきまして、コロナの流行の中、チームを日本に連れてきていただきました。そしてチームの皆さん、そしてUAE宇宙庁のリーダーシップの皆さん、EMM(※エミレーツ・マーズ・ミッション)の皆さん、これまで努力をしていただいて、この火星探査機「HOPE」を打ち上げていただきました。日本と皆さんのパートナーとまた近い未来に一緒にお仕事をさせていただく日を楽しみにしています。ありがとうございました。

・質疑応答
南日本放送・海外から受注した衛星打ち上げが4回目の成功だが、H3でも海外の受注が決まっていると思うが、今回の成功が今後の海外ビジネスにどう繋がるか。
阿部・やはり我々の信頼性の高さというものをH3に引き継いでいくことだと思っています。それによってH3のファンも増えていく。そして少しずつですが、海外のお客様に利用していただけるようになっていくのではないかと思っています。

読売新聞・中東でも初めての火星探査に挑戦しているが、今回のミッションを今後のUAEの火星探査や移住計画にどう繋げていくのか。
ムハンマド・アルアハバビ閣下・私達は最初の火星ミッションを打ち上げることができました。そしてもちろん科学の分野にフォーカスしていきたいと思います。UAEの政府は数年前に宇宙探査の長期的な計画を発表しました。今回がファーストステージとなっています。そしてこの宇宙セクターを、より科学に、そして宇宙探査にフォーカスすることで強めていきたいと思います。データがこのエミレーツのミッションから送られてきます。このデータを元に発展していきたいと思います。国際的な宇宙関連機関、宇宙探査の皆さんには興味があるところだと思います。UAEも今クラブのメンバーとなっております。これからどんどん知見を深めてまいります。そして私達の宇宙探査をどんどん発展させていきたいという風に考えております。

読売新聞・今回の打ち上げサービスについて、良かった点は何か。
オムラン・シャラフ・打ち上げサービスのプロバイダーを選ぶときにいろんなオプションを考えました。いろんな基準があった訳です。技術的な要件も見ましたし、そして様々な他の要件もありました。打ち上げの能力、そして価格、そして成功率という所を見てきました。いくつかのオプションを考えまして、世界の中でMHIが1番だと思いました。いくつかの企業をアプローチしたが、その中からMHIを選んだということです。非常にエクセレントなサービスをしていただいたと思っています。日本は私達UAEにとって戦略的なパートナーであります。特に宇宙セクターはそうです。JAXAとMHIとは長い期間にわたって協力をしています。そしてMHIとも過去のミッションで非常に良い経験をさせていただきました。関係が非常に良いと感じております。今回の打ち上げも、この関係を強めるものだと思っております。今後に向け関係をさらに強化していきたいと考えています。

NHK鹿児島・日本のロケットのどこに強みを感じたか。今後、海外の皆さんが日本のロケットを使うために求めたいことは何か。
オムラン・シャラフ・日本の強みは成功率だと思います。これが非常に素晴らしいと思います。ですので海外の顧客が日本を選ぶ理由が高い成功率になると思います。MHIの実績が素晴らしいです。ですので、そこからさらに強みを作り上げていくことができると思います。また日本は進歩が非常に早かったと思います。海外の顧客のペイロードを打ち上げるという事に関しても、非常に進歩が早かったと思います。ですので今後更に効率を上げていくことが課題だと思いますが、MHIの実績、そしてJAXAも協力をしていただきまして、常にどこか改善できるところはないかと聞いてきてくださいました。MHIとJAXA、私達のチームが一体になってミッションを完遂することができたのは、引き続き改善をしてきたからだと思います。に敬意を表したいと思います。日本はこういったことを新たに経験していると思います。たとえばヨーロッパでは以前から商業打ち上げをしている実績が長い国があります。フィードバックを顧客から得て、実際にプロジェクトを進めながら改善をしていくということをやってきた今回のプロジェクトは素晴らしかったと思います。JAXAとMHIの人達が私達から何かリクエストをしてこうしてほしいと伝えると、それを実現して下さるということができました。各ミッション、各国はそれぞれ違った条件があります。方向性も違うでしょう。でもそれを聞き入れて下さって、私達の改善のプロセスを回してくださいました。これが素晴らしかったと思います。これがこのプロジェクトの強みだったと思います。

UAEメディア・日本とのパートナーシップについて。日本は探査機「はやぶさ」やロケット製造で知られているが、UAEに対してどのような知識の移転が可能なのか。
オムラン・シャラフ・日本とのパートナーシップですが、今回は打ち上げにフォーカスしてきました。知識の移転となりますとアメリカのパートナーがおります。コロラド州ボルダーの大学です。そしてカリフォルニア州バークレー校、このような大学が知識移転の対象となっています。しかし今回このミッションからデータを取得していきますと、宇宙に関わる人達にデータを共有していきたいと考えています。そして日本の科学界にも結果をもたらしていきたいと思います。この火星探査機から得られるデータによって、その能力をどんどん高めていくことができると思います。科学全体に影響があると思います。今は打ち上げにフォーカスしていました。打ち上げに絞ったサービスを受けていたという認識をしていました。
阿部・今回の私共の役割は打ち上げのサービスを提供するということでございます。それとは平行してUAEと日本の間、JAXAさんとUAEの間に協力関係があり、2国間の協力の下で我々が打ち上げサービスをやらせていただいた。技術的な交流という観点ではJAXAさんにお答えいただくのがよろしいと思います。
JAXA・回答できる立場でないため細かい話についてはできませんが、今後もできる協力についてはぜひやっていきたいと思います。

フリー鳥嶋・UAEは「KhalifaSat」で衛星の国産化に成功して今回火星探査機を作り出したが、次の展開としてどのような計画や展開を考えているか。
ユーサフ・ハマド・アルシャイバニ閣下・沢山プロジェクトがあります。しかしプロジェクトの正式なアナウンスは将来にとっておきたいと思います。

南日本新聞・今回の成功が打上サービスの海外受注にとってどういった位置付けになったか。また今後の展望を考えた上で課題は何か。
阿部・海外受注という観点では信頼性、先ほどもUAEの方からお話がありましたように、それをまたひとつ積み上げたということだと思っています。あとはご存じのようにH-IIAからH3へと切り替える時期に来ています。従ってH3にH-IIAの信頼度を引き継いでいって、そしてH-IIAでご愛顧いただいたお客様に同じようにH3もご利用いただくということが我々の進む道かなという風に思っています。課題については我々は海外からの顧客が4回目で、まだまだ積み上げないと、顧客に対する対応、それから効率といったところがこなれてこないのかなと思っています。これも一気にはなかなかいかないので、1つずつ1機ずつ打ち上げながら身につけていくのかなという風に思っています。

・記者会見第2部

・登壇者
ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター エミレーツ火星ミッション プロジェクトディレクター オムラン・シャラフ
三菱重工業株式会社 打上執行責任者 田村 篤俊

・質疑応答
フリー鳥嶋・UAEは「KhalifaSat」で地球観測衛星の国産化に成功したが、今回火星探査機を開発するにあたり難しかった点や、火星探査機として工夫された点について。
オムラン・シャラフ・「KhalifaSat」は地球探査機だったが、今回の火星探査機は5倍難しかったと思います。地球探査機でも知識移転のプログラムを行いました。そして火星探査機でも行いまして、その結果(開発に)成功することができた訳です。今回の火星探査はコロラド大学から知識移転をしていただきました。ミッションとしては5倍難しかったと感じております。

NVS・衛星とコミュニケーションがとれているとのことだが、衛星の情報でわかっていることがあれば教えて下さい。
オムラン・シャラフ・まず最初の信号を受け取りました。そして今情報を分析しているところです。今後、ドバイの1時くらいに火星探査機の状態をアナウンスすることになっています。正式名アナウンスをお待ちください。

南日本新聞・HOPEの観測期間はどれくらいか。
オムラン・シャラフ・科学的観測であれば(地球時間で)2年、火星の年月では1年ということになります。それで私達の科学ミッションは完了となります。

南日本新聞・具体的に2021年の何月からいつまでか。
オムラン・シャラフ・2021年2月に火星に到達します。それから1〜2ヶ月くらい調整をして観測軌道に入ります。軌道に入りますとキャリブレーションを行います。恐らく2021年9月からデータのリリースをできると思います。データに関しては全ての皆さんと共有し開示することになっています。

南日本新聞・観測期間は2021年9月から2022年9月ということか。
オムラン・シャラフ・科学的観測は地球年で2年、火星年で1年です。

南日本新聞・ということは2021年9月から2023年9月で良いか。
オムラン・シャラフ・そうです。観測は地球年で2年必要です。

南日本新聞・火星の大気を観測するとのことだが、大気の何を観測するのか。
オムラン・シャラフ・下層と上層の大気の関係を見ていきます。こういった研究は世界で初めてです。1日の中で、そして1年を通して観測するのは世界でも初めての試みとなります。

南日本新聞・大気の何を見るのか。
オムラン・シャラフ・下層大気と上層大気の関係を調べます。水素、酸素、蒸気を見ていきます。砂塵や嵐についても見ていきたいと思います。

日本経済新聞社・細かいことにも対応してもらえたということだが、どういうことに対応してもらえたのか。また火星移住はかなり大きなプロジェクトになると思うが、その重要性について。
オムラン・シャラフ・協力関係については様々なディスカッションをしました。プロセスについて顧客を巻き込んだ形になっていきました。どのように基準と連動させていくのか、評価もそうですが様々な選択肢があったり、打ち上げ期間の話であったり、様々なすりあわせのディスカッションがありました。私達のリクエストを聞いて実現していただきました。
 UAEの宇宙プログラムは、火星をよりよく理解するためのものです。火星で何が起こっているのかを理解することに主眼を置いています。またUAEは、例えば将来人類が火星に居住することになったら、今回の火星探査で得たデータを使って協力をしたいということです。

日本経済新聞社・H3で価格が半分くらいになるが、今後のUAEのプロジェクトでより低価格なロケットに興味はあるか。
オムラン・シャラフ・UAEの宇宙プログラムの中で日本はとても重要なパートナーです。そのためとても楽しみにしています。将来の協力も楽しみにしています。もちろん様々な分野で検討して協力体制を整えていくことになりますけども、今後の発表の中でそういったことも含めていきたいと思います。

日本経済新聞社・火星探査衛星ということで、地球周回衛星と違う難しさはあるか。
田村・ロケットとしては同じでございます。火星探査機といって何か特別に難しいことはありませんでした。ただオンタイム打ち上げということで、「こうのとり」と一緒ではございますが、決められた時間に打つということは、今までひとつひとつ確実に行ってきたことをあらためて行った結果、今日もそれが達成出来たということだと思っています。

JSTサイエンスポータル・探査機の運用体制で、どこに管制センターがあり、どのような人員体制で行うのか。観測成果の世界への共有はどのようなルートで行うのか。
オムラン・シャラフ・データの共有は全ての方々を対象にしています。探査機が軌道に入りましたら、遷移軌道から科学軌道に入っていくことになります。2021年9月からはデータが共有されることになります。プラットフォームを用意しまして、そこでデータ共有を開始することになります。

以上です。

No.2371 :H-IIAロケット42号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2020年7月21日(火)00時52分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット42号機は2020年7月20日06時58分14秒にリフトオフし、同07時55分10秒に火星探査機「HOPE」を正常に分離しました。画像提供:三菱重工


No.2370 :3回目の判断もGo
投稿日 2020年7月20日(月)06時19分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット42号機の第3回Go/NoGo判断会議の結果はGoです。最終(X-60分)作業開始可となりました。(2020/07/20 6:00(JST)現在)

No.2369 :第2回判断と機体移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年7月19日(日)21時48分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット42号機、第2回Go/NoGo判断会議の結果はGo。ターミナルカウントダウン作業開始可となりました。(2020/07/19 21:20現在)
なお機体移動は2020年7月19日16時30分から開始し、同16:54に完了しています。写真提供は三菱重工


No.2368 :再・第1回判断 (H-IIA F42)
投稿日 2020年7月19日(日)13時47分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット42号機の第1回Go/NoGo判断会議の結果はGoです。(2020/07/19 13:30現在)

No.2367 :打ち上げ前プレスブリーフィング(H-IIA F42) 【日付修正】
投稿日 2020年7月19日(日)13時43分 投稿者 柴田孔明

 2020年7月13日午後よりH-IIAロケット42号機の打ち上げ前プレスブリーフィングが行われました。前回のH-IIBロケットに引き続き、今回も新型コロナウイルス感染拡大防止のため種子島宇宙センターでの報道関係者による取材は行わず、インターネットを介しての取材となっています。
 なお2020年7月14日午後に天候の悪化が予想されるとして、同15日の打ち上げは延期されていますが、このブリーフィング時には同15日の打ち上げを前提に進んでいます。
 そして新たな打ち上げ予定日時が2020年7月20日6時58分14秒(JST)になったことが、同17日に発表されました。

(※一部敬称を省略させていただきます。また回線の状態により聞き取れなかった部分がありますがご了承ください)

・登壇者
ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター(MBRSC) エミレーツ火星ミッション プロジェクトディレクター オムラン・シャラフ
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 MILSET長 鈴木 啓司

・打ち上げ予定日時について(※三菱重工配付資料より抜粋・鈴木)
 ・さきほど作業移行の可否判断会議を実施し、打ち上げに向けての作業を進めることを決定しております。(2020/07/13 14時発表)
 ・三菱重工業株式会社は、H-IIAロケット42号機によるアラブ首長国連邦 のドバイ政府宇宙機関であるMBRSC(The Mohammed bin Rashid Space Centre) のUAE火星探査機「HOPE」の打ち上げについて、下記のとおり実施することをお知らせいたします。

 打ち上げ日:2020年7月15日(水)
 (※7月14日の天候判断で延期され、2020年7月20日に変更になっています)
 打ち上げ予定時刻:午前5時51分27秒(日本標準時)
 (※同6時58分14秒に変更されています)
 打ち上げ予備期間:2020年7月16日(木)〜2020年8月13日(木)
 ※予備期間中の打ち上げ時刻については、打ち上げ日毎に設定。

・はじめに(三菱重工の配付資料より・鈴木)
 はじめに、このたびの九州をはじめとした日本各地の豪雨により、被災された皆さまに謹んでお見を舞い申し上げたいと思います。
 また、新型コロナウィルス感染症に罹患された皆さまとご家族および関係者の皆さまにも謹んでお見舞い申し上げます。また、社会生活を守り維持するためにご尽力されている皆さまに深く感謝申し上げます。
 私たちは、H-IIAロケット42号機によるUAE火星探査機「HOPE」の打上げに向け、探査機準備のため海外より来島しているお客様とも一緒になって、種子島へのウィルス持ち込みおよび感染拡大防止のため、細心の注意を払って参りました。
 ロケット打上げ作業にご理解とご協力を頂いております地域の皆さまに心より御礼申し上げます。
 今後も打上げ関係者が一丸となって万全を期して参ります。

・準備状況について(三菱重工配付資料より抜粋・鈴木)

 ・H-IIAロケット42号機は飛島工場を6月6日に出荷した後、射場作業を開始してございます。
 ・以下の通り、射場整備作業を良好に実施しております。
  ・機能点検(〜7月1日)
  ・機体の各機器が正常に作動することを確認
  ・カウントダウン・リハーサル(7月3日)
   ・関係要員に対し打上げ当日の対応手順を周知徹底するために、打上げ時の作業を模擬。
  ・アラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機「HOPE」とロケット機体の結合作業(〜7月6日)
  ・ロケット機体の最終的な機能点検(〜7月8日)
  ・発射整備作業を実施中(7月11日〜)
 ・整備組立棟はVAB1を使用。
 ・打ち上げは第1射点(LP1)を使用する。
 ・機体構成は202型。
 ・フェアリングは4S型。
 ・打ち上げシーケンスは打ち上げ日によって異なる。これは地球と火星の相対位置が日ごとにずれていくため。
 ・機体移動予定時刻:2020年7月14日15時30分頃(日本標準時)
 (※2020年7月19日16時30分頃に変更)
 ・打ち上げ制約条件は従来のH-IIAと同じ。
 ・気象について:梅雨前線が徐々に南下してくる予報で、天気としては下り坂です。明日の夜から明後日の打ち上げ時間帯にかけて雷の発生の可能性があります。ただし現在の予報としてはずっと激しい雷が鳴るという訳ではありませんので、打ち上げの可能性があると現時点では評価しております。今後、作業を進めてまいりますけども、引き続き気象情報に十分注意を払いまして必要な判断を行っていく計画としています。

・エミレーツ火星ミッションについて(オムラン・シャラフ)
 まずお礼を申し上げたいと思います。それと日本のコロナウィルスと災害についてお見舞い申し上げたいと思います。また日本政府と関連機関の方々に、今回の計画が実現できたことについて、ありがとうございます。かなり難しい状況、つまりコロナウィルスの状況の中で難しい状況を強いられたと思いますけども、その中で様々な対応をしていただきました。日本政府の皆様方、種子島の皆様方、関係各所の皆様方、三菱重工の皆様方にお礼を申し上げたいと思います。
 これは火星への科学ミッションです。火星の大気を科学的に分析して研究しようというものです。まずは低層大気の特性評価を通じて気候そして気象のマップを理解していくこと、そして低層と高層の大気の相関関係を理解していきます。撮像装置を使っていきます。それから分光器も使っていきます。赤外域分光計、そして紫外線域の分光計を使って詳しく特徴を分析していきます。そして科学的な知見を得て、そして私達の宇宙プログラムの中にそのデータを反映していくというものです。科学的なものですし、かつ戦略的なものであるということになります。そしてこの火星へのミッションを使って、UAEがこれを契機に、このセクターを盛り上げていこうとということ、そしてリソースにも投資をして、将来の新たな経済に繋げていこうという戦略的な試みのひとつでもあります。
 (探査機がロケットから)分離した後、太陽電池パネルを展開して太陽を指向していきます。そして20分から30分でデータが入る形になります。そのあとアンテナを地上局に向けてデータを送ってもらいます。2週間から1ヶ月くらいかけて探査機の確認を行います。28日後に最初の軌道変更を行います。これは非常に重要なフェーズになります。そして約7ヶ月で火星に向かう軌道になります。その間に得られたデータを分析し、計測機器の校正を行います。そして2021年の9月にはデータが揃っていき、そして共有を始めていきたいと思っています。どのように、誰と共有するかを決めていきたいと思っています。もちろん種子島から始まるこの旅です。これを可能にしてくださった種子島の人々にお礼を申し上げたいと思います。そしてもちろん私達のチームも2週間の隔離を経て、種子島で新型コロナウイルスの感染源とならないように細心の注意を払ってまいりました。このような注意を払いながら協力をしてプロジェクトを進めることができまして、現在の形になりました。そして(探査機の)800kgの燃料充填も終わりました。そしてフェアリングに衛星が格納され、いま打ち上げを待っている状態です。UAEと日本の共同プロジェクトということになったと思います。そして三菱重工との協力でこのようなプロジェクトが出来て、そしてこれが将来に繋がるプロジェクトだと思いますし、そしてこれから得られるデータも日本の科学者達を含むサイエンスコミュニティに共有していくことになります。楽しみにしています。

・質疑応答から抜粋(※諸事情により一部を省略しています)

JSTサイエンスポータル・大気の上層と下層を切り分けて考えて観測されるとのことでしたが、それによって火星大気のどんな事が判るようになるのか。観測の狙いについて。
オムラン・シャラフ・上層と下層の大気を観測し理解を深めたいと思います。初めて季節を含めた全体像を獲得したいと思います。これまでも同様の調査は行われてきたが、1年を通して季節性を加味したものはありませんでした。そのようなばらつきを考慮に入れた上で全体像を掴みたいと思っています。そういった意味で私達のミッションは非常にユニークではないかと思います。将来のミッションに向けて科学的な疑問に答えていくことを目的としたグループがあり、彼等のディスカッションをベースに今回の火星大気を調査するミッションを設定することになりました。NASAのみならず他の国際的な科学者の皆さんとディスカッションの上で決めたことであります。サイエンスのコミュニティで同意した上で火星大気を理解したいというミッションになりました。

JSTサイエンスポータル・火星はアメリカなどが沢山の探査機を送ってきたが、1年を通じての季節変化を含めた大気の全体像はまだ掴まれていなかったので、そこに挑戦するという理解で良いか。
オムラン・シャラフ・その通りです。

NVS・今回は天気が難しい。延期になった場合、1日あたりどれくらい時間がずれるか。
鈴木・打ち上げが延期になった場合、打ち上げ時刻が少しずつずれてまいります。今回のずれ方は日ごとに複雑な変わり方をしまして、数分から数十分の範囲で、早くなったり遅くなったりします。概ね朝の5時から朝の8時までの間のどこかで打ち上げることになります。

NHK鹿児島・天候の件で、ずっと激しい雷が鳴る訳ではないとのことだが、機体移動の前に判断をしていくことになるのか。
鈴木・おっしゃる通りでございまして、次の判断のタイミングとして機体移動の前を予定しておりまして、そのタイミングで最新の気象情報を確認して、さらに作業を進めるのか、その時点で延期するのか判断していきたいと考えております。

NHK鹿児島・いまのところ作業を進めるということで、今回は海外の衛星を受注しての打ち上げだが、どういう風な気持ちで臨まれるのか。
鈴木・海外の衛星であることで特に私共の判断が変わることはない。ひとつひとつ確実にデータに基づいて冷静に判断を行っていくことに尽きると考えています。

NHK鹿児島・火星の大気を観測されるとのことだが、それは有人探査などに繋げていくのか。将来的な展望など。
オムラン・シャラフ・今現在のUAEの宇宙プログラムといたしましては、様々な将来のプランを立てております。有人に関しましては、昨年に2人の宇宙飛行士を打ち上げており、様々なオペレーションが行われています。UAEは2人の宇宙飛行士を使い、持続可能な有人プログラムを国際宇宙ステーションとの共同で考えております。100年のプランをアナウンスしておりますが、グローバルな取り組みとしては考えております。ただUAE単独の試みは今はありません。技術開発と科学的なデータを収集し、将来的に火星に有人の打ち上げができればと思っております。今現在は国際宇宙ステーションにフォーカスを置いております。今はUAEのみによる有人打ち上げの計画はございません。

南日本放送・新型コロナウィルス対策のため、前回は島に入る人員を2割から3割減らしたとのことだったが、今回はどういった対策になったか。
鈴木・今回も前回H-IIB9号機と同じ対策を引き続き丁寧に実施しております。人数に関しても、ほぼ前号機の時と同じ態勢で臨んでおります。従来の人員から比べると、2割から3割減というところで行ってきております。

南日本放送・新型コロナウィルスのため海外との行き来も難しい状況で、2週間待機されたという話もあったが、どういう対策をとっていったのか。また難しかった点など。
鈴木・海外からいらっしゃった方に関しましても、基本的には私共が種子島で実施しているのと同じ対策をとっていただきました。具体的に申しますと、検疫は済ませていただいて、種子島にお越しになった後で2週間は外出自粛にご協力いただいて、マスクの着用、手洗い、毎日の体温の確認などにもご協力をお願いしています。今回コロナの影響によって、例えば顧客の方々とのコミュニケーションが阻害されたりというのは無くて、必要な情報に関してはしっかりコミュニケーションがとれております。ただし日常の交流という部分では、町の方々との交流も含めて、外出自粛を基本的にはとっておりますので、あまりフレンドリーな対応が無かったのは残念に思っております。

読売新聞・今回の打ち上げサービスの契約先として三菱重工を選んだ理由。どこが魅力的だったか。
オムラン・シャラフ・契約先としてヨーロッパやアジア等を検討するが、我々は事前に選定基準を定めております。その基準に照らし合わせて最も私達のキャパシティに合い、そして成功裏にミッションを成し遂げてくれる、もちろん価格も含めて総合的にMHIを選定いたしました。

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読売新聞・火星を周回する軌道について、高度は2万キロから4万3千キロで良いか。また楕円軌道で良いか。
オムラン・シャラフ・おっしゃるとおり楕円軌道となっています。高度も約2万から4万3千になります。24時間を通してデータを収集したいと思っています。55時間の軌道になります。

読売新聞・MBRSCとして2117年に火星に居住地を建設するプランを発表されていますが、今回の調査結果や技術的知見をどのように繋げていかれるのか。
オムラン・シャラフ・2117年のプログラムでありますけども、UAEの政府がアナウンスしたものであります。これは若いUAEの世代に投資をするという意味で、これから100年先にこのようなミッションを掲げて投資をしていくことになっております。だたこの将来のミッションを何が保証するのかということですけども、やはりその保証となるコミットメントが必要です。つまり将来に宇宙関連に就職できるという、そのような期待を持ってもらいたいことが狙いのひとつです。技術開発もそうです。地球上でもそうですが、まだまだ課題があります。火星で居住するために、生存のための新しい技術、水関連、食料関連の技術を獲得していく必要があります。そして再生可能エネルギー、こういったカテゴリーなどを使って居住を考えております。しかしこれは何も火星だけではなく、地球上でも共通する課題であると考えております。国のチャレンジとしてこのようなプログラムを考えております。初めて火星に人を送り込み、そこで生活ができると証明するのがミッションとなっています。居住を支援する技術を獲得していきたいと考えています。

UAEメディア・今回の探査機は火星観測だが、地球での砂漠化対策の応用もあると言われている。この日本とUAEの協力について、このミッションの結果を用いて宇宙以外の分野で協力するビジョンがあるか。両国の言語的な壁や、やりかたのギャップなどをどう乗り越えるかのノウハウが出て来たと思う。2つのミッションでどう成長したか。
オムラン・シャラフ・UAEは今回の火星ミッションのデータを共有していくことになります。共有する機会が皆に与えられることになります。私達は宇宙プログラムの一環として国際協力を続けていきます。このプログラムはJAXAの協力で始まったものです。こういった協力を通して私達はデータを取得することができる訳です。このデータは日本の科学者にも共有されていきます。
鈴木・今回のHOPEのミッションは、(H-IIA)40号機の「KhalifaSat」からの引き続きのミッションということで、前回に引き続き丁寧にコミュニケーションをとらせていただきながら作業を進めてまいりました。その間、いろいろなコメントをいただいておりますし、私共が探査機側の作業を支援させていただく立場として、またこれを搭載してロケットを確実に打ち上げる者として、非常に貴重なアドバイス、ご指導をいただいていると思っております。40号機のときにいただいたアドバイスやコメントは今回の作業の中に確実に反映してここまで進めてきたと思っております。また今回のオペレーションを通してもいろいろアドバイス・コメントをいただけると思います。今回のミッションが終了したあと、丁寧なコミュニケーションを振り返る場を持たせていただいて、また次の機会に繋げていければ大変ありがたいと思っております。ロケット打ち上げ以外の分野についてはお答えする立場にないためご容赦願います。

南日本新聞・海外受注4件目についての受け止め。
鈴木・おっしゃる通り、今回が4件目の海外受注であります。H-IIAロケットといたしましては、H-IIBも含めて、高いオンタイム率、それから正確な打ち上げということで、取り組んできたことが評価していただいたものと受け止めておりまして、大変光栄なことと思っております。今後も引き続き海外衛星のご担当の方に打ち上げロケットの選択肢に加えていただけるように、今後も打ち上げの成功とオンタイム打ち上げを継続してまいりたいと考えております。

南日本新聞・三菱重工さんを選んだ理由として、価格面など総合的に判断されたとのことだが、それは価格の部分が大きいのか。成功率も含めてもう少し詳しくお聞きしたい。
オムラン・シャラフ・さきほど申し上げたように、まず基準というものがありました。ただ単に価格を見ただけではありません。全体的に評価しました。実績や能力を見ましたし、何を提供していただけるかも価格に加えて見ましたI。総合力でMHIが上だったということです。

南日本新聞・HOPEの大きさと重さを教えてください。
オムラン・シャラフ・1.35トンで、そのうち燃料が800kgを占めています。展開して幅8m程度と記憶しています。

以上です。

No.2365 :新たな打ち上げ日時(H-IIA F42)
投稿日 2020年7月17日(金)14時08分 投稿者 柴田孔明

悪天候のため延期されていたH-IIAロケット42号機の新たな打ち上げ予定日時は2020年7月20日午前6時58分14秒(JST)となりました。

No.2364 :2020年7月15日の打ち上げは延期
投稿日 2020年7月14日(火)15時45分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット42号機の打ち上げは天候の悪化が予想されることから延期となりました。新たな打ち上げ日については未定です。(2020/07/14 15:34現在)

No.2363 :H-IIAロケット42号機 第1回判断
投稿日 2020年7月14日(火)13時02分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット42号機の第1回Go/NoGo判断会議の結果はGoです。(2020/07/14 13:00現在)
なお現地の打ち上げ見学地は閉鎖されていますので、打ち上げはネットで見学願います。

No.2362 :H-IIBロケット9号機打ち上げ経過記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年5月28日(木)01時51分 投稿者 柴田孔明

 H-IIBロケット9号機は2020年5月21日02時31分05秒(JST)に打ち上げられ、「こうのとり」9号機を軌道上に投入しました。このあとWebでの記者会見が開催されています。
 回線の状態により聞き取れなかった部分がありますがご了承ください。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者

宇宙航空研究開発機構 理事長 山川 宏
三菱重工業株式会社 執行役員 防衛・宇宙セグメント長 阿部 直彦

・打ち上げ結果についての報告(阿部)
 三菱重工業株式会社及び宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから令和2年(2020年)5月21日2時31分00秒(日本標準時)に、宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機を搭載したH-IIBロケット9号機を予定どおり打ち上げました。
 ロケットは計画どおり飛行し、「こうのとり」9号機を正常に分離、所定の軌道に投入した事を確認しました。
 ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、北北西の風3.2m/s、気温18.5度Cでした。「こうのとり」9号機が軌道上での初期機能確認を無事終了し、国際宇宙ステーションへのカーゴの輸送ならびに計画された技術実証を成功裏に完遂することを心より願っております。
 本日はH-IIB最後の打ち上げでした。H-IIBは2009年9月11日、本日と同じ時間帯に初号機を打ち上げて以来、通算9機中9機の成功、成功率100%を達成しました。またH-IIAを合わせ、通算50機中49機の成功、成功率98%です。またH-IIA/H-IIB、44機連続の打ち上げ成功となりました。昨年9月および今年2月の打ち上げでは当日に延期致しましたが、今回は無事オンタイムで打ち上げる事が出来ました。打ち上げ準備期間中から現在に至るまで新型コロナウイルスの影響で制約の多い中、地元の方々をはじめ、関係いただいた皆様方には並々ならぬご支援ご協力ご理解を賜りました。本日無事打ち上げる事が出来、大変安堵しています。今回の打ち上げ成功が、現在新型コロナウイルスと闘っている皆様方、不自由な生活を余儀なくされている皆様方、先々に不安を抱いている皆様方に、ほんの少しでも明るい気持ちや元気をお届けすることが出来たなら光栄ですし幸いです。最後に本日の打ち上げはもちろん、H-IIBの開発から本日に至るまで一貫してご支援ご協力いただきました全ての関係者の皆様方に、あらためて心よりお礼を申し上げます。既に次回7月15日の打ち上げに向けた準備が始まっています。更に安定的な打ち上げを提供できるよう今一度心を引き締め、細心の注意と最大限の努力を傾注してまいります。これからも引き続きご支援ならびにご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

・登壇者挨拶(山川)

 H-IIBロケット9号機により打ち上げられました宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機は、通信リンク及び3軸姿勢を確立し、国際宇宙ステーション到着に向け順調に飛行していることをご報告致します。今回は世界的に新型コロナウイルス感染が拡大し、多くの人々の安全を脅かし、また経済活動や社会生活にも甚大な影響を及ぼす事態の中、新型コロナウイルス感染拡大防止に最大限努め、関係者が一丸となって、万全を期して準備を進めてまいりましたが、なにより地元の皆様のご理解ご協力無くしては本日の打ち上げを迎えることは出来ませんでした。この場をお借りしましてご理解ご協力をいただきました地元の皆様、また各関係機関の皆様に対し心より御礼を申し上げます。このあと「こうのとり」9号機は5月25日にISSに到着し、ロボットアームによる把持が25日21時15分頃、そしてISSへの結合完了が26日の明け方の予定でございます。今回の「こうのとり」9号機は6号機より4回にわけて計画通り輸送してまいりました新型のISSバッテリ、窒素のタンクや更に宇宙飛行士の食料そして水など、ISSの運用に欠かせない物資の他、日本実験棟「きぼう」で行われます実験機器や「きぼう」の有償利用の機器などを搭載しております。また「こうのとり」9号機に設置したカメラで撮影した映像を、ワイヤレスLANを経由して、リアルタイムでISSに伝送する技術の軌道上実証も行います。今回でシリーズ最後となります「こうのとり」は、15カ国が協力します国際宇宙ステーション計画において最大級の物資補給量を誇り、国際宇宙ステーションの運用そして維持に欠くことの出来ない重要な役割を担ってきました。本日の打ち上げ成功により「こうのとり」9号機は無事に予定軌道に投入されましたので、引き続き国際宇宙ステーションまでの輸送運用を確実に成功させて、我が国の責務を果たせるよう万全を期してまいります。また「こうのとり」の後継機として現在新型宇宙ステーション補給機「HTV−X」の開発を進めております。「HTV−X」は「こうのとり」の開発や今回の9号機までの打ち上げ運用を通じて蓄積してきました技術や知見を生かして、輸送能力そして運用性を向上させた新たな補給船として、今後のISSへの補給を引き継ぎます。さらには国際協力で開発を進める月周回ステーション・ゲートウェイへの補給を担うべく国際間での調整を進めております。そして「こうのとり」を打ち上げてまいりましたH-IIBロケットも今号機でシリーズ最後となりました。H-IIBロケットは2009年の初号機打ち上げから本日の9号機まで全ての打ち上げが成功し、HTVと共にISSへの物資輸送という重要な責務を果たすことができました。現在このH-IIBロケットやH-IIAロケットで培ってきた技術力を結集して、我が国の次期基幹ロケットとして今年度の試験初号機の打ち上げを目指してH3ロケットの開発を進めております。今後「HTV−X」とH3ロケットの着実な開発によって、我が国の自在な宇宙輸送を支える基盤がさらに強固になっていくものと確信しております。引き続き皆様のご理解、そしてご支援を賜りますようにお願い申し上げます。

 最後になりますが昨晩、打ち上げ準備作業中に今回のH-IIBロケット9号機をブルーにライトアップしましたので、そのときの画像と共にご報告をします。
 これはこの度の新型コロナウイルス感染の世界的拡大という未曽有の状況の中、感染防止の最前線で必死に戦っていただいております医療に従事する方々及びそのご家族ならびにその関係者の皆様への感謝の気持ち、そして地元の方々をはじめ、今回の打ち上げに対してご理解とご協力をいただいた全ての方々への感謝の気持ちを表現したものでありまして、打ち上げ実施者であります三菱重工業殿の協力を得て実施したものでございます。一刻も早く新型コロナ感染が終息することを願っております。あらためまして皆様に心から感謝致します。

※配付資料より大臣談話
 H-IIB ロケット9号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」9 号機の打上げについて
 (内閣府特命担当大臣(宇宙政策)談話)
 本日、H-IIBロケット9号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」9 号機の打上げが無事に成功したとの連絡を受けました。
 H-IIB ロケット並びに「こうのとり」は 2009年の初号機打ち上げ以来、着実に成功を重ねてきました。本日遂に最後の打ち上げを成功裏に終えたことを大変喜ばしく思います。
 現在「こうのとり」9号機は国際宇宙ステーションへの物資補給にむけ、航行中です。この任務を無事に遂行し、現在開発中のH3ロケット、そして新型宇宙ステーション補給機へとバトンを繋ぎ、国際宇宙ステーションの先にある国際宇宙探査の時代を切り拓いて行ってくれることを願っております。
 内閣府特命担当大臣(宇宙政策)として、これらの未踏の挑戦も含め、引き続き宇宙基本計画を着実に推進してまいります。
 令和2年5月21日 内閣府特命担当大臣(宇宙政策 )竹本直 一

※配付資料より大臣談話
 H-IIBロケット9号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機の打上げについて
[文部科学大臣談話]
 本日、H-IIBロケット9号機の打上げに成功し、搭載していた宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機が所定の軌道に投入されたことを確認いたしました。
 H-IIBロケット及び「こうのとり」は、今回が共に最終号機であり、次回以降は現在開発中のH3ロケット及び新型宇宙ステーション補給機に役割が移管されることになりますが、打上げを成功裏に終えられたことを大変喜ばしく思っております。
 今後、「こうのとり」9号機が、国際宇宙ステーションへの確実な物資補給を達成できるよう、文部科学省としても関係機関とともに着実な運用に向けて引き続き尽力してまいります。
 令和2年5月21日 文部科学大臣 萩生田 光一

※記者会見への大臣やその他の方の参加は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今回はありませんでした。

・質疑応答

南日本新聞・H-IIBロケットの成功率100%を達成したことについての受け止め。「こうのとり」9号機もISSに到着しミッションを完遂した場合は100%の成功率だが、HTVはどういった意義になるか。
阿部・今回の打ち上げについて、国内のみならず世界中でいろんな行事が延期あるいは中止を余儀なくされている中で、計画通り打ち上げさせていただけたのは、やはり地元の方のご理解ご支援あってのことだと思いますので、非常に感謝しております。ご質問の9機100%の成功ということですが、結果として100%になったのですが、ここに至るまで我々は1機ずつ積み上げてきたというのが実態でございまして、終わってみてある意味ほっとしているというか安堵しているのが正直なところです。開発から9号機までの間は15年ぐらいの年月があるが、その間いろいろな方に助けていただいたり、またご支援ご協力いただきながらやっとここまでたどり着けた、非常に感慨深いものがあります。次のH3にこのヘリテージをぜひ引き継いでいきたいと思っています。

山川・正直な感想は、打ち上げに関しては大変ほっとしている。成功率100%ということもあのますし、今回はオンタイム打ち上げということで、非常に素晴らしい打ち上げであったという風に思います。特に画像を見ておりましたけれども、非常に長い時間ちゃんと見えておりましたので、非常に素晴らしい打ち上げだという風に確信致しました。JAXAの立場としては、我が国の宇宙へのアクセスの自在性を確保するという意味で、非常に基幹ロケットとしてのH-IIB成功というのは極めて大きな意味を持っておりまして、先ほど述べましたようにこの技術をさらにH3に繋げていくという意味でも極めて重要な打ち上げであったという風に思います。また「こうのとり」9号機ですけども、つい先ほど分離をされて、通信リンクの確立、そして3軸姿勢の確立がなされたところでありますけども、まだ始まったところでありまして、これからが本番でありまして、JAXAとして気を引き締めて運用していきたいという風に思います。HTVというのは国際宇宙ステーションのみならず、宇宙へのアクセスという意味でロケットと宇宙船という、ペアで大きな仕事をするという意味合いがあると思っておりまして、そういった意味でもISSへの貢献をこれまでしてきたことに加えまして、今後先ほど申し上げたように、さらに国際宇宙探査に貢献する、あるいは地球周回、低軌道の人類の宇宙活動にさらに貢献していくというような意義があると考えております。

JSTサイエンスポータル・H-IIBロケットが最終号機となった。宇宙ステーションの物資補給の国際的な役割を果たした訳で、H-IIBの取材の機会は今回が最後となると思うが、あらためてH-IIBの開発とこれまでの実績の意義、今回の打ち上げの所感、H3に残した課題についてお聞きしたい。
阿部・H-IIBの意義は、山川理事長がおっしゃっているように国際協力の中で宇宙ステーションに物資を運ぶということに貢献してきたということがございます。それとは別にロケット単体で見ると、H-IIBというのはH-IIAの姉妹機になっています。我々としてはH-IIA、H-IIBというのは同じシリーズの中で連続成功を続けていくというひとつの機体と見ておりますので、H-IIAだからH-IIBだからと大きな違いはありません。ただ、H-IIBでは1段エンジン2基を実現いたしましたので、そういう意味で言うとH3に繋がっていく技術が確立できているという風に考えています。H3に向けての課題ということですが、H-IIBだからという訳ではないが、ここ2回ほど、去年も一昨年もあったと思いますが、打ち上げ当日に打ち上げを延期することが起こっていますので、まだまだ完全というところには遠いのかなと。それぞれ事象は異なっているが、慢心すること無くひとつひとつ潰していきながら、完成度を高めていかないといけないという風に思っています。

JSTサイエンスポータル・前号機での射場の火災があったが、課題としての認識はいかがか。
山川・いつも万全を期して打ち上げを含めた射場の準備をしているところでございますけども、前回は火災を起こしたということがありましたが、今回は原因となる可燃物の部分を排除しまして、万全を期した状態で打ち上げております。前回の原因としては、液体と気体が混合した状態で当たると燃える可能性があったということなんですけども、それを排除するためにも同時に長期間当たらないような工夫もしておりまして、そういった意味でも万全の対策をうって打ち上げたと考えております。

朝日新聞・H3への課題の部分で、ビジネスという観点ではどのように考えているか。
阿部・ビジネス面では、H-IIAは価格面で非常に厳しい闘いをしました。H3で価格を下げてということで、受注に尽くしたいと思っているが、目指している価格が実現できて、かつH-IIA/Bの持っている信頼性とオンタイムを兼ね備えることができれば、少なくともH-IIAよりも有利な闘いができるだろうと思っています。しかし競争相手も止まっている訳ではございませんので、目指しているH3のコストよりもさらに下げて、さらに付加価値を上げていくようなことをやっていかなければならないかと思っています。あと現在のH3で言いますと、やはりまだ初号機が飛んでいないというところは、事業ビジネス面ではハンデが大きくて、初号機を飛ばして、何機か安定した飛行をするということが、事業を広げていくための必須条件かなと思っています。
山川・H3ロケットというのは、2014年ぐらいから様々な検討のスタートをしたものでありまして、いよいよ今年度中に試験機の初号機を打ち上げるということになる訳ですけども、現段階ではまず着実に打ち上げるべく総力を結集しまして、準備を進めるところでございます。検討の当初よりプライムとして三菱重工殿と一緒に検討をしている訳でして、その背景としては、信頼性だけではなくて運用性あるいは国際競争力という観点で、自在性、信頼性を得るロケットというものはどういうものか、そこからスタートしております。既に阿部セグメント長からありましたように価格の話、それから運用性ですね、いわゆるお客様としての衛星側がいかに使い勝手がいいか、そういうところに注力して、力を注いで開発しているということであります。その結果として全体としての国際競争力を得るべく開発をしているところであります。一方で今回のH-IIBロケットの9号機全部が成功したという、そういった信頼性というのも極めて重要であることは変わりありませんので、そこも当然ながら担保できるように現在進めているところであります。

朝日新聞・H2シリーズの開発のときも国際競争力や価格の低下を目標にしていたが、三菱重工が主体となった今回のH3はどこが違うか。
阿部・ひとつ申し上げますと、これまで私共がH-IIAの技術移管を受けて打ち上げサービスを担ったときには、H-IIAなど日本のロケットは世界から認められていない、名前さえ覚えていただいていない状況でした。それをH-IIAを通して何機か打ち上げサービスを提供したり、これからもまた提供するのですが、その過程を通じて、少なくとも今現在で言うと日本にロケットがあって、そのロケットで打ち上げサービスを提供しているということを認識していただいています。かつこのロケットが信頼性が高い、オンタイム打ち上げ率が高いということも認識していただいております。そういう意味でH-IIA/Bあわせてここまで50機ですが、この歴史というか実績というのは大きく寄与していると思っています。その上でプラスこのH3でコストを下げる。さらに先ほど山川理事長からありましたように、付加価値ですね、ユーザーが使いやすいロケットにしていくといったところが出来てくれば、少なくともH-IIAよりは遥かに有利に競争できるのではないかと思います。

NHK・今回は新型コロナウイルスの関係で打ち上げ準備がいろいろ制限されたが、逆に今までになかった局面の中で、発見だったり得られたもの、例えばコスト削減に繋がったものなど、得られたものがあれば教えていただきたい。
阿部・いちばん大きなものは、地元の方から物凄くご理解とご協力をいただいて、ありがたいというか感激でした。それとは別にビジネス的な実行面で言いますと、まだまだこれから7月15日の打ち上げもありますので続けていくのですが、いろんな審査会ですとかいろんなデータレビューとかを、従来種子島にやっていたのをリモートでやったりとか、こういう事をやりながら、これから最終的にトータルで見て見ないとわからないのですが、効率化できている部分もあるのではないかという気がしています。その辺はまだ打ち上げが終わったばかりですので、このあと整理して、新しいやり方というかそういう所に移行できる部分については移行していきたいと思っています。

日経新聞・H-IIAやH-IIBの最初の頃と比べて海外の宇宙産業はSpaceXなどいろいろ出て来て変わっている。その辺の世界の宇宙産業の変化の認識はどうか。またオンタイム打ち上げというところで、直近(前2回等)で延期があったが、今後H3で向上していく可能性があるのか。今年度にH3初号機を打ち上げるときに、種子島自体が結構歴史があるので、発射場の設備を更新したりしないのか。
阿部・非常に速いスピードで敷居が下がってきているというか、宇宙を利用するということでコスト面で行きやすくなってきている。逆に言うと我々のロケット打ち上げサービスというビジネスで言うと、どんどんコストを下げて競争力をつけていかなければならない部分にさしかかっていると理解しています。ですのでいまJAXA殿と開発させていただいているH3もありますし、さらにコストを下げていくような、そういった事を持続的・継続的にやっていかないと取り残されていくのだろうなという風に思っています。オンタイムの話ですが、ビジネスの観点から言うと「オンタイム」と言ったときに、今回のように計画した日の計画した時間に上げるということがオンタイムということはそうなんですが、ビジネス面で言うとそこまで厳密ではなくて、1週間2週間ずれても衛星の事業者運用者から見るとそれほど影響は無いのですね。ただ彼等が嫌がるのは、今回で言うと5月に打ち上げると言っていたものが半年先になってしまったり1年先になってしまったりするのは、その分だけ彼等は衛星を運用出来ないのですから、そこが彼等にとっては気になる点・デメリットである。そういう意味で私共のH-IIAとかは基本的にこの時期に上げますと言うと、1週間2週間の違いはあっても必ずその時期に上げていますので、その面での評価は全く変わっていません。
山川・H3開発に全力をあげているという話をしましたけれども、H3ロケットの開発というのは、ロケットの機体だけではなくて、地上系の射場も含めて総合システムとして全体を開発している状況であります。種子島というのは既に60年以上の長い歴史がございますけれども、これまでもずっと最大限設備を更新しつつ保全しているという状況でございます。先般の火災ですとかそういったものに対応しまして、この度総点検をしまして全体を確実に動かすように再度確認をさせていただいております。またそこで得られた知見もH3に向けて全て反映していきたいという風に考えております。ですので今後の見通しとしては、射場系も含めた設備の保全の精度をさらに上げていく話、そして設備更新計画ももちろん、それを踏まえて更にブラッシュアップしていくこと、あと宇宙システムだけではなくて、他の参考になるような大規模システムを保有されているようなそういった業界の新しい考え方も含めてどんどん取り入れていきたいという風に考えております。


・打ち上げ経過記者会見(第2部:技術説明)

・登壇者
宇宙航空研究開発機構 有人宇宙技術部門 HTV技術センター 技術領域主幹 辻本 健士
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 副事業部長 打上執行責任者 田村 篤俊

・質疑応答

鹿児島読売テレビ・H-IIBのこれまでの打ち上げを振り返っていただきたいのと、H3への意気込みをお聞きしたい。また「こうのとり」の打ち上げを振り返っていただきたいのと、HTV−Xへの意気込み。
田村・H-IIBロケットの打ち上げにつきましては、開発当初の1号機から成功を重ねてくることが出来ました。初期の打ち上げからずっと9機の打ち上げを連続成功することは、なかなか難しいことだと考えておりまして、それを達成できた事は、H-IIBロケットは大型ロケットの中では輝かしい足跡を残せたのではないかという風に思っています。これは信頼性の高さに基づくものでございますので、それをH3にもきちんと引き継いでいきたいと考えております。
辻本・「こうのとり」はこれで9機ということになりまして、開発にはかなり難航してかなり時間もかかりましたけれども、初号機以降「こうのとり」自身も徐々に進化しながらミッションも全て成功させてここまでまいりました。その結果として宇宙ステーションの運用にかなり貢献してきたという風に考えております。技術的にも様々なノウハウを蓄積したという風に考えております。9号機はまだミッションが始まったところですけども、こちらの方を無事終わらせまして、その後HTV−Xでは「こうのとり」で培った様々な技術的ノウハウ、それから先進的な技術を導入して更に発展させると、そういった取り組みを進めていきたいという風に考えております。

南日本放送・9機連続成功は難しいとおっしゃっていたが、その中で成功率100%を達成できた理由は何か。お二人は種子島で打ち上げ作業にあたられていたと思うが、今回新型コロナウイルスの影響で見物の観光客がいない中での打ち上げになったが、それをどう感じたか。
田村・H-IIBロケットはH-IIAロケットを改良したロケットでございます。やはりH-IIAロケットを打ち上げていく中で、いろいろな成功していく術を我々は習得してまいりました。これはいろいろな点検のデータをトレンド評価をして、不具合不適合の兆候を掴むようなことを体系的にやったり、それから1つの不適合が出たら、それを細かく分析して、直接原因から背後要因まで突き詰めて、それを水平展開していくということを、ひとつひとつ地道に繰り返していく中で、打ち上げが成功していく術というものをだんだん掴んできたという事があると思います。それをH-IIAで習得してH-IIBでも行って、9機連続成功に繋がったものではないかという風に思います。今回の新型コロナウイルスの件につきましては、種子島の地域の方々のご協力、それからJAXA様とも様々な点でご協力させていただいて、なんとか我々の中から感染者の出ない状態で打ち上げる事が出来たことは本当に皆様に感謝しております。その中で常日頃は、いつも打ち上げの時には、日本中から見に来てくださる方がいるのですけども、今回は残念ながら自粛していただいたのは非常に残念に思っております、今日は夜の打ち上げだったのですが、綺麗な打ち上げだったと聞いております。従いまして見ていただきたかったところはあるのですけども、コロナの状況が収束した後にまた見に来ていただきたいなと思っております。
辻本・打ち上げ前の説明会でもお話ししましたけれども、11月の終わり12月初め頃より射場作業を始めておりました。ですので新型コロナウイルスの影響がかなり出て来た時には、機体の準備作業というのはかなりの所まで進んでおりまして、その影響で今回のこのタイミングでの打ち上げを逃すというと、いろんな所にインパクトがあるというような所がありました。そういった中でこの時期に打ち上げるためには、大きく分けて2つやらなければいけないという事がありまして、まずひとつはロケット側もそうなんですが、打ち上げの関係者の中で感染者を出さないということがまずありました。これは同じJAXAの中の種子島宇宙センターと三菱重工さんの間でいろんな協議をされまして対応策をとっていただいて実現したといったところがあります。もうひとつはロケットの打ち上げの関係者ではないのですが、打ち上げをご覧になったりする方がウイルスを持ち込んでしまうと、こういったところも対策をとらなければいけないのですが、私どもでは直接なかなか出来ないことでありました。ただ近隣の市町の方とも協力して、今回は打ち上げ見学の自粛といったところをお願い致しました。報道の関係の方、それからH-IIBロケットと「こうのとり」をこれまで応援された方、最終号機ということでぜひ現場でという風に思われた方も多いかと思うのですが、そういった方にはちょっと残念ながら見ていただくことは出来なかったのですが、結果として皆様のご協力のおかけで今回無事打ち上げに臨むことが出来たという風に考えております。自粛というお願いに応えていただいた皆様に、この場をお借りしましてあらためてお礼申し上げます。

読売新聞・打ち上げから2時間半くらいだが、現時点で「こうのとり」は正常に飛行しているという認識で良いか。ブルーライトアップはどちら側の発案で、実施したのは何時から何時の間か。
辻本・「こうのとり」ですけども所定の軌道でH-IIBロケットから分離されまして、その後3軸姿勢それから通信リンクといったところをとりまして、その後順調に飛行を続けております。リンクと姿勢の確認がとれた後は、機体の健全性の確認を進めておりまして、その後軌道を変えるマヌーバをとって宇宙ステーションに向かって進んでいく予定にしております。ライトアップについては私も経緯と詳細は判らなくて、ロケット側の部門の方より話を伺ったというところがあります。
JAXA射場開発ユニット西平・今回打ち上げの少し前にロケットをブルーにライトアップさせていただいた事について、これはJAXAからの発案で、三菱重工さんに多大にご協力いただきまして、打ち上げまで時間の無い中でございましたが、十分に確認していただいた中で、実際にブルーにライトアップするという作業をやっていただきました。実際にブルーにライトアップした時間でございますが、22時45分から23時00分までの15分間でございました。

南日本新聞・「こうのとり」がミッションを完了すればどんな意義があるか。これまでの「こうのとり」の開発や運用で得られたもので特徴的なものがあるか。新型コロナウイルスの影響として、これからの「こうのとり」のミッションに何か影響が出ないか。
辻本・具体的な内容は打ち上げ前ブリーフィングの資料にもありますで詳細はそちらを見て確認をお願いしますが、「こうのとり」はまだ終わっておりませんが、これまでの流れの中で宇宙ステーションという国際協力プログラムの中で、日本として物資を輸送するというところで貢献をしてきた。その貢献を行う中で信頼を勝ち得てきたというのは非常に大きいところかなと思っております。具体的な技術としましては、「こうのとり」で初めて実現しましたランデブーキャプチャという方式、これが現在アメリカの民間輸送船でも活用されるようになったというところ、あるいは近傍通信システムもアメリカの民間輸送船で使われるようになったということで、日本の技術が我々よりも先を行っていたアメリカでも使っていただけるようになったところは大きな成果だという風に思っております。新型コロナウイルスがこの後のミッションに影響があるかといったところですけども、現在打ち上がった後、筑波の運用管制室で運用管制員が24時間シフト交代で機体の状態を見たり、あるいは運用管制を行ったりしております。彼等が菌を持ち込んでクラスタを起こさないようにですとか、そういったところについては十分配慮をして進めてますので、まずは宇宙ステーションに行くまでの間はこういった所は配慮していきたいと考えております。

NHK鹿児島・今回はH-IIAの40号機以来のオンタイム打ち上げだったが、現場の打上執行責任者としてこれからもこだわっていきたいか。H-IIAの41号機の打ち上げで地上設備の配管に穴が見つかったが、それを受けて当時点検の見直しをしたいという話があったが、今回の打ち上げで変更点はあったか。
田村・我々のH-IIAとH-IIBロケットの特徴といいますか強みとしてはオンタイム打ち上げというのがございますので、それは今後も継続していくべきものと思っています。それについては、今まで培ってきたやり方、いろいろな不適合の兆候を事前に掴むとか、不適合の要因を裏の裏まで突き詰めるとかいうことを地道に継続していきながらオンタイム打ち上げというものは継続していきたいという風に考えています。41号機の配管の不適合から今号機に至るまでには、設備の不適合の関係はJAXAさんと協力をさせていただきながら様々な点検をしてまいりました。総点検という形で設備の点検をしたり、それからML(移動発射台)をあらためて射点に運んで、それで設備の方を打ち上げに準じたような機能確認をするとか、という点検を行った上で今回の打ち上げに臨まさせていただいて、オンタイムの成功に繋げることができたと考えております。

NHK鹿児島・今回の9号機には自動ドッキングに向けた技術実証が予定されているが、これはいつ時点で成否がわかるか。25日の到着の時か。また将来的に自動ドッキングということでHTV−X側が制御することになるのか、あるいはISS側になるのか、どんな運用のイメージになるのか。
辻本・成否ですが、最初のタイミングとしては「こうのとり」が宇宙ステーションに接近してキャプチャ・バーシングをするときに、今回載せております実証機器を作動させまして画像をリアルタイム取得といったところを行う予定でございます。その他にも係留中に宇宙ステーションに結合されている期間、あるいは離脱して再突入する、その離脱のタイミング、そういった所でもトライをしていくことを予定しております。自動ドッキングにつきましては、これから正に開発を始めようとしている所でございまして、自動ドッキングというものの技術実証はHTV−Xの2号機で行おうとしております。詳細については昨年10月にHTV−Xのプロジェクトマネージャが、HTV−Xの概要をご説明した時に簡単に書いておりますのでそちらをご覧いただければと思うのですが、HTV−X側にドッキング機構、それからドッキングをするのに必用な航法センサといったものを搭載して、宇宙ステーションにドッキングを試みるといった風のものを計画しております。

東京とびもの学会・今回、地元について新型コロナウイルスについての発言が多かったが、地元の自治体の方とはどんな打ち合わせをどんな頻度で行っていたか。それは従来より多いのか。また9号機が仮に失敗してしまった場合はバックアップというものはあったのか。あった場合はH-IIBの10号機になったのか、あるいはH3とHTV−Xになったのか、あるいは海外との連携になったのか。
田村・新型コロナウイルス関係の地元の方との調整等はかなり頻繁に行いました。いちばん頻度が高かった時には1週間に2度から3度ぐらい行っていたかと思います。
辻本・JAXAとして地元の方との調整は種子島宇宙センターの方でお願いしておりました。恐らく頻度としては三菱重工さんと同じくらいではないかと思います。回数に関しては今までよりも確実に多かったという風に思います。「こうのとり」の9号機に対する失敗時のバックアップについては仮定の話になるのでお答えが難しいが、もし失敗した時は宇宙ステーションに参画しております各国各機関との協議といったところになると思います。その中で輸送予定だった物資をどう扱うかという話になるかと思います。日本として代わりの輸送機をどうするかという所は、今明確に言えますのは、「こうのとり」10号機といったところは想定しておりませんでした。実際にハードウェアとして機体を作るといったものはしておりませんでしたので、それは無かったという事だけはお答え出来るかと思います。

鹿児島放送・H-IIBと「こうのとり」が今号機で退役となり、それぞれの役割がH3ロケットとHTV−Xに引き継がれるが、昨今の新型コロナウイルスでそれぞれの開発にどういった影響が出ているか。影響が出ている場合、2020年度の打ち上げが後ろ倒しになる可能性はあるか。
田村・新型コロナウイルスの影響については、さまざまな対策をしながら、名古屋の方で開発したり、あるいはJAXA様と開発をさせていただいておりますが、その中で様々な対策を取りながらスケジュールを守るべく一生懸命開発を進めているところでございます。現時点で新型コロナウイルスの影響で開発期間が延びることがないように努力を重ねております。JAXA様についても同じように進めさせていただいているものと思います。
辻本・HTV−Xにつきましても状況は同様でございます。皆様と同様にテレワークをフル活用しまして、日々の業務を進めていますので、現時点でスケジュールに影響が出るといったことはございません。

NVS・H-IIBロケットはクラスターエンジンや5.2メートルの機体径など、H3にも引き継がれる技術があったと思いますが、この2点以外に特筆するべき点はあるか。またH-IIBロケットは「こうのとり」専用となってしまったが、能力を活かした大型衛星やデュアルローンチなどの引き合いはあったか。
田村・H-IIBロケットは1段エンジンのクラスタと、それから5.2メートルの大型タンクというのが新規技術というものでございました。それにプラスするとすれば、2号機から行った2段の制御落下、コントロールドリエントリというものでございますが、この技術はH3にも引き継がれていく技術と考えております。他の大型衛星やデュアルローンチについての引き合いについては、機微な情報でございますので回答は控えさせていただきたいと思います。

※「こうのとり」9号機のISSとの結合について。
 2020年(令和2年)5月26日 JAXA発表より。
「宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機(HTV9)は、国際宇宙ステーション(ISS)に向けて最終接近を実施した後、5月25日21時13分(日本時間)にISSロボットアームにより把持されました。その後、5月26日3時25分(日本時間)にISSロボットアーム運用により、ISSとの結合を完了しました」

以上です。


No.2361 :H-IIBロケット9号機のリフトオフ ●添付画像ファイル
投稿日 2020年5月21日(木)13時41分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット9号機は2020年5月21日午前2時31分00秒に種子島宇宙センターからリフトオフしました。提供:三菱重工/JAXA