宇宙作家クラブ
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No.2194 :燃焼試験後のSRB-3 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年8月31日(金)23時26分 投稿者 柴田孔明

PM地上燃焼試験を終えて報道陣に公開されたSRB-3。
手前の焼けた金属はノズル消火装置(クエンチ)。


No.2192 :SRB-3の燃焼試験と試験結果説明 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年8月31日(金)23時22分 投稿者 柴田孔明

 2018年8月26日16時00分より、種子島宇宙センターでSRB-3の地上燃焼試験が行われました。そのあと燃焼実験場を報道公開し、続けて記者会見が開催されています。
 写真は竹崎展望台屋上から撮影した燃焼試験の様子。(約900m)
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
 JAXA 第一宇宙技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史
 JAXA 第一宇宙技術部門 H3プロジェクトチーム ファンクションマネージャ 名村 栄次郎

・岡田
 大変お待たせして、ようやく燃焼試験ができました。本日の点火時間は16時とさせていただきます。内容については今日は口頭ですが名村からご説明したいと思います。我々はこれからデータのレビューをやって、順次撤収作業に入っています。

・名村
 試験としては大成功。所定の燃焼ができて必用なデータがとれた試験になりました。昨日の気象の話もありまして、緊張感を保ちつつ、そうは言ってもドキドキしながらその時を待っていたのですが、無事に点火できました。燃焼したデータにつきましては、まだこれからなんですが、クイックで評価した所ですけども、モータとして燃焼圧力を最大10.8MPaと想定していたが、計測誤差の範囲で10.7MPaと速報値で入っています。燃焼時間につきましてもほぼ110秒と、事前には100秒程度と申し上げていましたが、今回の特性から110秒と思っていましたが、110秒くらい燃えました。燃焼パターンとしても予測と近い物が得られた。ということで設計の妥当性が検証できたのではないか。そして必用なデータがとれたという事で、いい試験が出来たということで、報告させていただきます。供試体も特に気になる点は見つかっていないという状況であります。

・岡田
 まだ皆さんに具体的な内容をご説明できるほど我々もデータを見ていないので、この場で質疑応答という形でいろいろやりとりをさせていただければと思います。

・質疑応答
東京飛びもの学会・気になっていた風向きだが、煙が陸地の方に行ったが、そのあたりはだいたい想定内におさまったのか。
岡田・風向き的には我々の考えていた範囲。またどんな状況かはこれから確認したいと思う。

東京飛びもの学会・試験場の床に白い粉が吹かれていたが、あれが舞い上がって降るのか。
名村・多少それもあるが、ディフレクターのコンクリートがえぐれて混ざって白い粉となって見えていたと思います。

・JAXAプレスリリースより
 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、H3ロケット用固体ロケットブースタ(SRB-3)開発の一環として、設計の妥当性等の確認を目的として実施したSRB-3実機型モータ地上燃焼試験の結果について、下記のとおりお知らせいたします。
 試験は予定したデータを取得し、良好に終了しました。

 試験日時:平成30年8月26日(日)16:00点火
 試験場所:種子島宇宙センター 竹崎固体ロケット試験場
 天候:晴れ   風:4.5 m/sec   気温:29.1 ℃

 [試験結果]
 燃焼時間:110.1秒
 最大推力:2137 kN
 最大燃焼圧力:10.7 MPa

以上です。


No.2191 :SRB-3燃焼試験に関する概要説明 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年8月31日(金)23時12分 投稿者 柴田孔明

 2018年8月25日、種子島宇宙センターにてH3ロケット用固体ブースタ(SRB−3)の燃焼試験に関する概要説明が午前と午後に行われました。なお25日の燃焼試験は風向きが条件を満たさず延期となっています。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・SRB−3地上燃焼試験の概要(※午前・座談会形式)

・登壇者
 JAXA 第一宇宙技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史

 ・H3ロケットについて
  ・2018年現在、電気系システム試験を三菱重工の工場で行っている。
  ・BFT(厚肉タンクステージ燃焼試験・第1段、※エンジン2基)の準備にかかっている。これに使うLE-9実機型の燃焼試験を8月23日に行い良いデータがとれている。もう1式の実機型エンジン試験をできれば9月中に行いたい。他、今年度にもう1つの実機型の燃焼試験を行う。それが終わると、来年度に認定のフェーズに入る。
  ・2段エンジンLE−5B−3は角田で開発中。
  ・試験機1号機の材料調達を開発の様子を見ながら開始中。
  ・構造系は認定を進めている。
  ・地上設備は、いったん工場で作ってから分解して種子島に運ぶ。新規開発は発射台と運搬車。だいぶ出来上がっている。ロケットより早め。

 ・SRB−3の開発スケジュール
  ・3回の地上燃焼試験を計画(今年度に実機型1回、来年度に認定型2回を計画)
   (※2回目はイプシロンロケット向けとなるノズルの首振り機構を含む。1回目と3回目はH3向けの固定ノズル)
  ・その他、実機大の分離試験及び各サブシステムの開発試験を実施。
  ・2020年度の試験機を使った総合試験(GTV)までに開発を完了させる計画。

 ・地上燃焼試験の目的
  ・SRB−3はSRB−Aに外観が似ているが新規設計である。
  ・PM地上燃焼試験は、SRB−3開発で計画している計3回の地上燃焼試験の初回にあたる。
  ・詳細設計で確定したSRB−3モータ仕様に基づき、実機大モータを製造し燃焼試験を行い、着火特性、燃焼推進特性、断熱材性能を取得する。
  ・取得した試験データにより、SRB−3モータ設計の妥当性を評価し、必要に応じて実機仕様に反映する。
  ・あわせてプルーム輻射等のモータ環境条件を確認する。

 ・地上燃焼試験の概要
  ・試験場所 : 鹿児島宇宙センター固体ロケット地上燃焼試験場。
  ・燃焼時間 : 100秒程度。
  ・試験仕様 : 詳細設計結果として定義したSRB−3仕様。
        一部燃焼試験特有の仕様あり。
  ・計測項目 : 推力、燃焼圧力、各部温度・歪など計約210点。

  (※今回の試験の対象外となるもの:構造系(ノーズコーン、1段機体との結合構造等)、分離系(1段機体との分離機構)) 

 ・試験実施条件
  1.試験時(点火時)の天候条件
   風速 : 無し
   風向 : ノズルから噴出される白色の粉が、JAXA敷地外の陸地への影響がないと予測される風向。
   (※本日は風向きが理由で試験ができない可能性がある。白色の粉は酸化アルミニウムで害は無いが、これが陸地に向かうのを避けたいため)
   雨 : 1 mm/h以下を目安とする。
  2.試験時刻
  11時〜19時の間とする。

 ・その他
 種子島での燃焼試験は約9年ぶり。9年というと世代が変わる。IAもJAXAも当時の経験者が入れ替わる中で、トラブル自体は非常に少なくてそれはかつての経験がしっかり文書化されて残されてあった。また何人か経験者の方が残っていて、そういった方がリードしている。

・質疑応答から(※座談会形式)
 Q.今日は11時を狙うのか。
 A.11時を狙っています。(できない場合は)30分くらいは粘って、そこでいったん見送る。
 Q.風向きなどでできない場合、手順を巻き戻すのか。
 A.スプリンクラーのもっと前まで巻き戻す。最短で14時くらいを次は狙う。ただそのときにはあまり新しい判断材料は無いと思われるため、ちょっと間をあけて判断するとなった場合には15時くらいの判断になり、その場合は今日は1回くらい狙える。15時を過ぎると残念ながら今日は難しい。
 Q.SRB−3の最初のフライトは何号機か。
 A.まだはっきり決まっていないが最短で1号機。1号機と2号機がどうなるか確定していないため、1号機になっても間に合うようにする。
 Q.SRB−3の読み方は「えすあーるびーすりー」か。
 A.我々は「えすあーるびーすりー」です。放送局によっては「えすあーるびーさん」になるかもしれない。
 Q.試験場から竹崎観望台までの距離は。
 A.約900メートルです。
 Q.試験機は2020年か、2020年度か。
 A.2020年度です。できたら東京オリンピックの年にやりたい。
 Q.H3ロケットの4つの形態は変わっていないのか。
 A.変わっていない。
 Q.形態による打ち上げ能力は。
 A.GTOで基本の2トンから、最大の6.5トンまで。
 Q.SRB−3はロケット本体との接続を簡素化したが、それによって低コスト化に寄与するという理解で良いか。
 A.打ち上げの整備作業が短時間でやれる。だいたい半分くらいの時間でできる。
 Q.それで人件費が抑えられるということか。
 A.それもある。また打ち上げの機会が増える。
 Q.SRB−Aに比べてどれくらい低コストなのか。
 A.なかなかお答えしづらい。値段の下げやすいところと、下げづらいところがある。どんがら(モーターケース)には限界がある。電気系統は機能が集約されるなどコストダウンしやすい。ただ半分以下にはならない。構造系はコストダウンしづらい。ただ、分離装置が簡素化され、可動ノズルが無くなっているのは大きい。
 Q.生産する数にもよるか。
 A.それは大きい。
 Q.生産設備ではどうか。
 A.SRB−Aは製造装置を海外のものを使っているが、今回は一からIAさんが設計している。
 Q.分離機構を簡素化するため国産化が必用だったのか、国産化した結果分離機構が簡素化されたのか。
 A.どちらかというと後者だと私は思いますが、イメージ的には両者。表現していただくとしたら国産化することで分離機構が簡素化できたと表現していただければ。ただそれが目的ではなく、目的はいろいろある。国産化で設計に自在性がある。
 Q.SRB−3の分離機構はスラストピン1つで推力200トンくらいを受けるのか。
 A.はい。
 Q.SRB−Aでは2本のスラストストラットだった。
 A.はい。この横の2本は小さく見えるが電柱くらいある。あれが無くなるのは非常に大きい。
 Q.スラストピンで推力を受け止められるかの試験は行うのか。
 A.そこは燃焼試験ではないが、システムとしての強度試験は別途進める。
 Q.SRB−AからSRB−3になることで振動が抑えられることはあるか。
 A.固体ブースターは燃焼振動を抑えることがひとつのポイントになる。大きなモーターですけどもなるべくマイルドに燃えるようにある種の設計技術が必用で、そこは盛り込んでいる。H3ではSRB−3は脇についていて衛星(の搭載位置)からは遠いが、イプシロンはその上に人工衛星を搭載する。そのためイプシロンはよりマイルドな環境を提供したい。
 Q.既存の固体ロケット推進薬のバインダが生産終了に伴い代替品を開発するとあるが、その場合は既存のSRB−Aにも反映されるのか。
 A.計画で言うと今のSRB−Aには(新しいものは)使わなくて済みそうです。何かあったときには使うかもしれない。特性がほぼ同じになるように詰めてから製造に入るので、仮にそうなったとしても問題無い。
 Q.(SRB−3は)SRB−Aの改良型と言って良いか。
 A.改良型ですね。
 Q.国産化で新規のイメージがあるが、表現は改良となるのか。
 A.LE−9が新規と言っているので、(SRB−3は)改良かなと。ただおっしゃるとおり、まったく一からの設計ではあります。ただ姿形は同じで、SRB−Aの設計の考え方はかなり生かされている。そのベースとの距離感で感覚的にそうなる。ついでにLE−5B−3も改良型だが、液体水素のターボポンプの寿命を延ばすプラスアルファくらいの感じで、今までの1.5倍長く燃えるために必用なものに手を入れた改良型と言える。SRB−3はもうちょっと変える部分が多い。
 Q.燃焼試験終了後にLCO2を吹き込むのは。
 A.クエンチというもので遠隔装置で出来る。固体モーターの燃焼終了後の状態を保存するためのもの。(※そのままだと完全に消えない)
 Q.SRB−3の推力が上がったのはH3が重くなったためか。
 A.推力は定義しづらい。グラフで見ると大きく変わるので、どこで定義するかが悩ましい。一番能力が上がるような飛ばし方をする。あと空気の濃いところで猛烈な勢いで加速しないように抑え気味にしている。打ち上げ能力を高めるための結果。
 Q.(SRB−3は)内面の形状を変えたのか。
 A.固体モーターは中にゴムのような推進薬を詰めるが、全部詰まっている訳ではなく、真ん中に穴があいている。中子というものを先に入れておいて燃料を入れ、そこで中子を外すと空洞ができる。その空洞の形でこの燃焼パターンを実現する。
 Q.SRB−3は、1がSRB、2がSRB−Aということで3なのか。
 A.SRBはH−IIロケット、SRB−AはH−IIAロケットの、SRB−3はH−3ロケットのブースターだが、名前をつけるのも結構迷った。SRB−Cなど(案は)いろいろありました。H3からあやかるのと、SRBから3世代目ということで、SRB−2は無いが3にした。名前をつける時は結構もめる。
 Q.SRB−3の報道公開は初めてか。
 A.そうです。皆さんにご覧いただくのは初めてです。
 Q.2020年度の総合試験に間に合わせたいという事で、来年度中にはSRB−3の開発は終えたいのか。
 A.その通りで、2019年度にPQR(開発完了審査)で、認定が終わったということで設計を固める。この時点で開発完了。ただ3月が4月になってもあまり気にしないでください(笑)。
 Q.ノズルを固定した理由は何か。
 A.ロケットの向きを変えるには色々な方法があります。ノズルの向きを変えるもの、補助用に横に推力を出す物で曲げるもの、空気力のあるところでは羽根で操舵するなどがあります。ノズルを操舵するのは真空中でも使える。1段エンジンも同じような仕組みで、LE−9も首を振るようになっている。1段エンジンが十分な操舵の力があるかどうかで、今までよりも推力が高くなったことなどで、システム計算をしてみると(SRB−3の首振りは)いらないことが判った。ネガティブに言うと操舵の力が弱くなったので、そこは十分かということで設計を詰めて、あらゆる状況においてその操舵で十分だと計算して、(SRB−3の首振りを)やめた。やめると御利益があって、首を振るためには、ある部分が柔らかくないといけない。これも凄く難しい技術。またそれを動かすためにはアクチュエータが必用で、それをどうやって動かすかということで動力源がいる。
 Q.50億という価格のH3はSRB−3が無いバージョンか。
 A.無いバージョンです。他のSRB−3のついたバリエーションでも、同じ程度のH−IIBと比べると、ざっくり言うと半額くらい。
 Q.着火特性、燃焼推進特性、断熱特性とは何か。
 A.固体モーターに火を点けるにはイグニッションといって、それなりにエネルギーがいる。大きなモーターの頭のところに、小型の固体モーターがある。そこに火を点けると中に火が出て、一気にモーター全体の燃焼が始まる。そこのスタートのところが着火の特性です。次の燃焼推進特性が燃焼パターンや振動です。断熱特性は巻いている断熱材が機能しているか。またこれだけではなく、歪などいろんなデータをとります。
 Q.先程の取り付け作業で従来の4日が2日になるのはSRB−3を2本取り付ける場合か。
 A.4本です。
 Q.燃焼試験に際し、設備の改修などは行ったか。
 A.やはり9年は結構長い。潮風にやられていれば、そこは補修している。私も久々に計測棟に入りましたけども、中は昔ながらで懐かしく感じました。どちらかというと、老朽化したところに手を入れて使えるようにした。
 Q.固体モーターの燃焼試験は能代での試験もあったが、両方に参加している人はいるか。
 A.全く同じ人ではないかもしれないがIAさんの一部のオペレーターにいるかもしれない。
 Q.9年前にも試験した人はいるか。
 A.います。9年前どころか私が入社して間もない頃に作業リーダーくらいだった方が所長になって元気に頑張っている。設計の方々も一部戻っていて安心感がある。書き物で伝えられるのは5割くらいで、その他の暗黙的なところは人づてになっているところもある。ただ暗黙で不正確なところは手順がちゃんと残っていて、オペレーションで人が変わってもミスが起きない。



・試験延期後の午後の記者会見
(※本来はSRB−3の開発概要及び試験結果説明の予定だった)

・登壇者
 JAXA 第一宇宙技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史
 JAXA 第一宇宙技術部門 H3プロジェクトチーム ファンクションマネージャ 名村 栄次郎

・岡田
 とても残念なのですが、今日は気象条件が我々の試験条件に合わなくて試験としては延期することになりました。現場は名村を筆頭としまして3分前まで粘って、神風が吹かないかと祈りつつ準備万端で時を迎えたのですけども、残念ながら今回は神様が味方をしてくれなかったということで、またあらためて次の機会を狙いたいと思いまして、本日の天候はこれ以上変化が見込めないということで、延期させていただきました。島外からいらっしゃった方も非常に多くいらっしゃる中で、今日の試験計画を見直すことになってしまいまして、気持ち的に申し訳ないと思っていますけれども、これは天気の話なのでどうぞご容赦いただきたいと思います。

・SRB−3の開発概要及び地上燃焼試験について(名村)
 (※説明と配付資料から一部抜粋。また午前の内容と重複するものもあります)

 1.固体ロケットとは
 ・燃料と酸化剤を混ぜて固めた固形の推進薬を用いたロケット。
 ・部品点数が少なく構造はシンプル。主要な構成としては、推進薬、推進薬タンクであり燃焼室でもあるモータケース、燃焼ガスを噴射するノズル、点火装置。
 ・液体ロケットと比較して比推力は劣るが、大推力を得ることが比較的容易。
 ・推進薬をモータケースに貯蔵状態で長期保管が可能であり即応性に優れる。
 ・一度火をつけると消すことはできず、精密な軌道投入には不向き。

 ・日本の固体ロケット開発の歴史
  ・1955年ペンシルロケット(全長230 mm)の発射実験。
  ・ベビーロケット、カッパーロケット、ラムダロケットと開発が続けられ、1970年ラムダロケットで日本初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げに成功。
  ・その後、ミューロケット、イプシロンロケット開発に引き継がれる
  ・一方、液体ロケットのブースタとしてもSRB(H-IIロケット用)、SRB-A(H-IIA、H-IIBロケット用)で固体ロケット技術は継承され、SRB-3開発に引き継がれる。

 ・固体ロケットブースタ(SRB-3)とは
  ・ロケット打ち上げの初期フェーズは、ロケット質量が大きく、ロケットを重力に逆らい加速させるには大推力が必要。SRB-3は、H3ロケットの打ち上げ初期フェーズの推力を補う役割。
  ・燃焼時間は約100秒で、燃焼終了後はロケットから分離。
  ・H3ロケットでは、SRB-3を0本、2本、4本と付け替えることができ、様々な大きさの人工衛星を打ち上げることが可能。

 2.SRB-3のコンセプト
 ・SRB-Aの開発・運用実績に基づく技術を最大限活用し、シンプルな仕様・運用を追求することでH3が目指す打ち上げの柔軟性・高信頼性・低コスト化を実現。
 ・イプシロンロケットの1段にも適用する計画であり、シナジー効果を追求。

   主要開発項目
   ・結合・分離方式の簡素化(結合点及び火工品の削減)
   ・モータケース他、各構成品の低コスト化/軽量化。
   ・H3とイプシロン共通で有効な推進特性の確立。
 
   SRB-3とSRB-Aの比較
   SRB-3(H3) 
   ・固体推進薬:コンポジット推進薬
   ・真空中推力:約2130 kN
   ・性能(Isp):283.6s以上
   ・固体推進薬量:約66.9 ton
   ・全長:14.6m
   ・直径:2.5m
   ・燃焼時間:約100s
   ・ノズル駆動方式:なし(ノズル固定式)
   ・分離方式:分離スラスタ方式

   SRB-A(H-IIA) 
   ・固体推進薬:コンポジット推進薬
   ・真空中推力:約1750 kN
   ・性能(Isp):283.6s
   ・固体推進薬量:約65.9 ton
   ・全長:15.2m
   ・直径:2.5m
   ・燃焼時間:約116s
   ・ノズル駆動方式:電動アクチュエータ
   ・分離方式:スラストストラット・分離モータ方式

 ・結合方式
  ・SRB-Aは米国の既存モータをベースとして設計。ブースタとして使用するに際し、モータには推力伝達に伴う集中荷重の大きさに制約があった。推力伝達ポイントを2点とし荷重分散・平滑化を図るとともに、分離運動の成立性、結合構造にかかる質量を考慮しスラストストラット方式を採用。
  ・SRB-3ではモータケースを新たに設計、開発に取り組んでおり、集中荷重を前提に設計を行いシンプルな結合方式を実現。

 ・燃焼パターン
  ・2本形態、4本形態ともに共通で適用できるパターンとして設定。
  ・最大燃焼圧力はSRB-Aと同じとすることで、モータケースを始めSRB-Aの開発・運用で獲得した技術を活用。

 ・シナジー開発
  SRB-3とイプシロンとの最大限共通化
   ・モータケース、推進薬、燃焼パターンなど
  ・ノズルの固定/可動に関わらない範囲の部品・設計は共通化。

 3.SRB-3の開発計画及び現状ステータス
  ・開発スケジュール
   ・3回の地上燃焼試験を計画(今年度に1回、来年度に2回を計画)
   ・その他、実機大の分離試験及び各サブステムの開発試験を実施。
   ・2020年度の試験機を使った総合試験(GTV)までに開発を完了させる計画。


  ・3回の地上燃焼試験の目的と概要は以下の通り。
   ・PM地上燃焼試験(本日の予定だった試験)
    詳細設計にて確定したSRB-3仕様により試験を行い、着火特性、燃焼特性、断熱材特性を取得する。詳細設計の妥当性を評価し、必要に応じて実機設計に反映する。

   ・QM1地上燃焼試験
   フライトと同等仕様にて試験を行い、実機設計の妥当性を確認する。イプシロンロケットとのシナジー開発の結果を確認するため、可動式ノズルを適用し、ノズルを駆動した場合の推力データの取得を行う。
   ・QM2地上燃焼試験
    フライトと同等仕様にて試験を行う。ノズルは固定ノズルを適用。QM1の再現性確認の位置付け。

  ・現状ステータス
  主要項目の開発ステータスを以下に示す。
  開発スケジュールに沿って開発が進められている状況。

   ・推進系 : 要素試験を完了後、詳細設計審査(CDR1の対象)を経て、モータケース等の実機大モデルを試作し試験を実施中。地上燃焼試験実施にあたり必要な検証は完了済み。本日の試験を含め、地上燃焼試験にて推進系としての総合的な検証を行う。
   ・分離系 : 要素試験を完了後、詳細設計審査(CDR2の対象)を経て、基本仕様を確定し実機大分離試験に向けた供試体等の準備に着手済み。実機仕様は実機大分離試験を踏まえ確定する計画。
   ・構造系 : 要素試験を完了後、CDR2を経て実機大モデルを試作し強度試験を実施中。

 ・試験目的
  ・PM地上燃焼試験は、SRB-3開発で計画している計3回の地上燃焼試験の初回にあたる。
  ・詳細設計で確定したSRB-3モータ仕様に基づき、実機大モータを製造し燃焼試験を行い、着火特性、燃焼推進特性、断熱材性能を取得する。
  ・取得した試験データにより、SRB-3モータ設計の妥当性を評価し、必要に応じて実機仕様に反映する。
  ・あわせてプルーム輻射等のモータ環境条件を確認する。

 ・試験概要
  ・試験場所:鹿児島宇宙センター固体ロケット地上燃焼試験場
  ・燃焼時間:100秒程度
  ・試験仕様:詳細設計結果として定義したSRB-3仕様。
   試験目的、開発進捗により一部燃焼試験特有の仕様あり。
   (※今回はバインダがSRB-Aと同一品でサーマルカーテン等は無し。これらはQM地燃で検証)

  計測項目:モータ設計の妥当性確認、環境条件評価に必要なデータを取得。
  主な計測項目は総計約210点である。

・質疑応答
NVS・今度の分離機構は衛星分離みたいにバネのようなもので離すのか。
名村・バネとも違う。中にガスジェネレータ(ガス発生装置)を入れていて、そのガス発生装置が起動すると結合を解除し、押し出す力を生み出す。
岡田・真ん中のコアロケットを蹴飛ばして分離していく。

東京とびもの学会・モーターの固定方法で、自由に動くとあるが、門型の枠の中にそのまま置いてあるのか。
名村・門型に吊り下げられているイメージ。まず内側の門型にモーターをがっつりつけて、さらに大きい門型に吊す。

フリー鳥嶋・SRB−3のジンバルの動かし方は今のSRB−Aと同じか。(※イプシロン用モーター)
名村・SRB−Aとは大きくは違わない。ノズルを駆動するにはフレキシブルな部分が必要になる。そこについては同じ物を使う。

フリー鳥嶋・共通化でジンバルの有無による違いで、どれくらいの手間がかかるのか。
名村・まず可動できることでフレキシブルなところを設けるかということで、それ以外はかなり共通化できている。途中からの転用もできるが、アクチュエータが追加で必用になる。

フリー鳥嶋・駆動方法は改良されるのか。
名村・そこはイプシロンの開発のところで決定はされていない。

南日本新聞・性能的にSRB−Aと大きく変わらないのか、または違うのか。
名村・推力を出すということに対しては変わらないが、それ自体が軽量化などで性能はアップしている。燃焼に関わるところは変わらない。シンプルで部品点数が減り、信頼性が高まることで性能が上がっている。

南日本新聞・推進薬が増えたのは入れ物が大きくなった訳ではないのか。
名村。固体燃料は全て詰めればいいのではなく、内側に中空のような状態があり、そこから燃えていく。燃焼パターンを良くするため中の形状をいろいろ工夫する。工夫したいし燃料は沢山入れたい。そのバランスをとりながら穴を工夫して、あと1トン弱を詰め込んだ。

南日本新聞・国内でこれを作れる意義は。
名村・これだけの高圧燃焼のロケットモータなので、これを作るためにはCFRPの技術が必須だと思っています。これが固体ロケット技術の肝なところで、これを握られてしまうと自分達で設計ができない。この自由度を獲得したのは意義がある。

南日本新聞・国産で作るのは初めてなのか。
名村・いえ、H−IIロケットのSRBは純国産ということでやっていた。その技術を獲得した上でH−IIAでは低コスト化を図っていくつか外国の技術を取り入れた。その中でSRB−Aのモーターケースについては外国の技術もあった。必用な技術は今回国産にする、それから発想としてH3としてどうあるべきかというところで、分離機構・結合機構を考えたときに、やはりここは自分達の技術で持ちたいという所から始めましたので、国産に踏み切った。

南日本新聞・H3プロジェクトにおけるSRB−3開発の重要度。
岡田・今までずっとLE−9の説明をさせていただいていまして、SRB−3はなかなか表舞台がなかったのですが、物凄く重要なアイテムですね。ロケットのバリエーションを調整するのに無くてはならない存在です。我々はキー技術と言って、今回三菱重工さんが使っていただく、ロケットをまとめてくださいという大きな構図がある中で、でもこの技術というのは残さないといけないからJAXAが直接開発をしますと宣言したひとつのアイテム。ロケットエンジンLE−9と同等のキー技術という定義となっています。技術の重要性もそうですし、ロケットの中でバリエーションを設けるという使い道からしてもそうです。たまたまこれが無くても飛んでいけるバージョンもあるが、だからいいというものではない。非常に重要。

南日本新聞・我々報道の表現ではLE−9に次ぐ重要なパーツとしたらいいのか。
岡田・匹敵すると言っていただいた方がいいと思います。

東京飛びもの学会・ノズルやケースの断熱にコルクを使うとあるが、外側に貼り付けるのか。
名村・ノズルは部分的だが、モーターケースはわりと大きな物をケースの外側に断熱のためにつけます。

NVS・コルクは木のコルクのことか。
名村・そうです。

NVS・SRB−3はH3ロケットに2個か4個使うが、各ブースターが同じ推力を出すのが凄いとみているが、1個1個作るときに同じ推力をちゃんと出すのは、どういったところを特に気をつけているのか。
名村・固体ではそういうところが難しい。1本1本それなりの調整が入ります。燃料を充填する前に、作ったものの特性を見て、じゃあちょっとあるものを加えるとか、そういったことをして最終的に必用なスペックに入れ込んで充填する。
岡田・それでも全部がぴったり同じとはいかないので、ロケット全体として着火のタイミングのばらつきであるとか、左右の燃焼パターンのばらつきというのがどのくらいなら許容できるかをシステム全体で押さえてある。それを飛ぶときの制御力に盛り込んである。機体と固体ブースタのそれぞれが、ある制約の中で設計して物が出来れば全体として成り立つ。

東京とびもの学会・資料で夏期ノミナルとあるが、夏だと暑いぶんだけ圧力が高くなるということがあるのか。
名村・おっしゃるとおり推進薬の温度が違う。季節によってどこが標準的な推進薬の温度になるか。そうすると燃焼圧力も上がれば推力も上がる。どういった条件になるかをシステム側に、こういう季節ならばこういった力になるということを考慮して飛行計画を立てる。

東京飛びもの学会・夏に使えるモータとか、冬に使えるモータということで配合を変えたりするのか。MVでは季節によって変えていると聞いたことがあるが。
名村・SRB−AとSRB−3に関しては、季節によって変えることはありません。条件が変わったときに飛ばし方を変えることはある。

フリー鳥嶋・H3ロケットと呼ばれる前の検討で、もっと小型のブースタが6本から8本という想像図が出ていたが、それが今の4本と2本、0本に変わった理由は何か。
岡田・だいぶ昔のことで記憶が薄れてきています。当時は固体ロケットの本数を何本にしようかというところから議論しました。最終的にはコスト、それからイプシロンにこれをどうするか、それと取り付け方、6本だと狭くなる。そういったことをトータルで評価した。とても重要なことに今いろんな場面で我々が感じていることですが、全く新しいロケットにしたいという思いと、とは言いながら今のH−IIAを作り続けるところのバランス、これが難しい。同じ工場の中で違う物を2個並べる時期がある訳で、そういったところも含めて成り立たせるためには、たとえば形が同じ、そういったところが意外と重要になってきます。そういう意味で固体ロケットブースタが似たような形状のまま新規設計になったのは、選択としては正解だったと私は思います。

フリー鳥嶋・LE−9は爆発しにくいので有人ロケットに向いているとの話があるが、固体ロケットはどうか。
名村・なかなか回答が難しい。いろんな判断があるが、それだけの信頼性を持ったモーターと申し上げられる。そういった判断があれば自信を持って申し上げられると思います。

南日本新聞・SRB−3の開発費はいくらぐらいか。
岡田・個別の開発費はトータルで考えて、正直出し入れするところもあるので何とも言いにくい。全体として管理しているものです。規模感としては、H3の開発費1900億円とすると、その中でわりと大きい割合を占めている。1900億の中では無視できる規模間ではない。LE−9と桁的に同じ感じ。

南日本新聞・燃焼試験が始まってSRB−3が固まっていくステージだが、意気込みというかどういう気持ちで試験に臨みたいか。
名村・開発が始まってからそれなりの時間を経まして、苦労を重ねてここまでやってきました。ここまで十分仕上げてきたと思っていますので、必ずや必用なデータをとる。今日も気象条件はあったが、データがとれない心配は一切ありませんでした。自信をもって進めたい。

名村・補足として、3代目の大きなロケットブースタ開発という意味もこめてSRB−3としました。

・明日以降の予定について

岡田・今日決めたことは、天気は試験にとって好ましい条件には変わらないので今日の試験はやめた。我々としてはなるべく早めにいい機会を狙いたい。最新の天気と最新の判断条件をもって、もういちど協議をしたい。それが明日の朝8時前後だと思います。SRB−3の作業はIAさんを始めいろんな方にやってもらっていまして、ずっとアクティブな状態で、ちょっとよろしくないので、まずは最初に判断をするメンバーが集まって明日の朝にします。そこでもしGOがかけられるなら、明日の午後の早い時間に狙う可能性も残っています。天気の回復が、今のところ全く問題の無い状況になる訳ではないので悩ましい判断をするのは確かだと思います。明日が難しいと次の機会はどこだということも含めて、できるだけ明日朝の判断会議で見通しを立てたいと思っています。明日が出来ないなら明後日を狙いたいという思いです。

不明・明日朝の判断自体を保留して午後に判断する可能性はあるか。
岡田・ちょっと微妙ですね。というのも本当に早くやりたいが、待ちぼうけも辛い。明日の状況次第です。

不明・最短で13時か14時という可能性があるか。
岡田・ありますが、率直に申し上げて可能性は高くない状態と思ってください。ただ我々としては望みが少しでもあるなら1回は挑戦したいと思います。

不明・気圧配置が1日で大きく変わる訳ではないので風向もそんなに変わらないと思うので、明日はいけそうという感触よりは、反対側だけど…という感じなのか。
岡田・もうひとつは風向をもう少し細かく見ていったときにやれる条件はないか考えるかもしれません。これだけ安定的に風向が一定だともう少し詰めていかないといけない。風の強さとか風向とかいろんな要素があるので、そんなに簡単には結論が出ない。我々としてはやれるだろうという条件を、ベストを尽くして考え出したいと思っています。それが今ここにある訳ではありませんので、今日1日かけて天気をアップデートして、条件をもう少し詰めて、見通しが立てられれば狙う可能性もあるが、やはり明日は難しいですとなる可能性もある。

不明・地上燃焼試験のスケジュール的にはいつまでか。
岡田・まずはH−IIBロケットの打ち上げが控えているので、その打ち上げの時にはここに固体ブースタを残しておけない条件がある。その意味では9月の1日か2日までにやりたい。その時期が終わったら固体ブースタを待避させないといけないが、ロケットが打ち上がってしまえばまた同じように調整する。またその時期になると台風が来るなど嫌なシーズンになると思うので、そういったことも含めてやれるだけのことをやって早く着火したい。開発全体の計画からすると、早く確認をして設計にフィードバックする時間が欲しいので、1回戻してセットアップするとそれなりの時間をかけてしまうので、そこは勿体ないなと思っています。

不明・9月1日か2日の一区切り目を逃したからといって、即スケジュールを失う訳ではないということか。
岡田・あえてこのスロットを狙ってはいますけども、最初からロケットの打ち上げが終わってからやればいいじゃないかという考えも無かった訳ではない。しかし気持ち的には何もしないで待つよりは、1回は挑戦してみようという思いでいました。

不明・本日は19時まで実施という話だったが、他の日でも実施時刻は19時までなのか。
岡田・そこは変わらないが、H−IIBロケットの準備があって、そことの干渉で時間の制約がある日もあります。11時から19時までがウインドウで、射場との干渉を避けながら決めていくことになります。

以上です。


No.2190 :SRB-3実機型モータ燃焼試験(PM)の延期 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年8月26日(日)01時40分 投稿者 柴田孔明

2018年8月25日に種子島宇宙センターで予定されていたSRB-3実機型モータ燃焼試験(PM)は、「ノズルから噴出される白色の粉が、JAXA敷地外の陸地への影響がないと予測される風向」という条件を満たさなかったため延期となりました。次の実施予定日時は未定ですが、まず8月26日午前に同日中に実施可能か判断されます。写真は燃焼試験設備のSRB-3。
(※白色の粉は酸化アルミニウムなどで害は無いそうですが念のためとのこと)


No.2189 :スペースチャンバ ●添付画像ファイル
投稿日 2018年8月11日(土)22時04分 投稿者 柴田孔明

「いぶき2号」と一緒に公開された直径13mのスペースチャンバ。
宇宙空間を模した環境を模擬し、衛星などの試験を行う。
民間での利用も可能とのことです。


No.2188 :いぶき2号の背面 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年8月11日(土)21時55分 投稿者 柴田孔明

温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT−2)
こちらは観測時には地上から見て背面となる。スタートラッカ(筒状のもの)やGPSアンテナなとが見えます。


No.2187 :「いぶき2号」 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年8月11日(土)21時52分 投稿者 柴田孔明

公開された温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT−2)
こちらは地球を向いている面。
(※センサなどはカバーで覆われています。また太陽電池パドルは外されています)


No.2186 :温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT−2)の報道公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年8月11日(土)21時49分 投稿者 柴田孔明

 2018年8月11日、JAXAつくば宇宙センターにて温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT−2)の報道公開と概要説明が行われました。
 なお、当初の報道公開日は8月9日の予定でしたが、台風13号の接近により8月11日に変更されました。
 ※写真は温室効果ガスの測定方法についての説明。ビニール袋に二酸化炭素が充填してあり、そこに光を通すことで観測結果のグラフがギザギザの歯形になり、室内の空気では平坦になっていたものとは大きく異なって表示されています。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
JAXA 第一宇宙技術部門 GOSAT−2プロジェクト プロジェクトマネージャ 平林 毅

・「いぶき2号」の概要
 ・2009年1月に打ち上げた「いぶき」の後継機。
  →観測精度の向上や人為起源CO2観測の強化など性能を向上。
 ・パリ協定で合意された目標(気温上昇2度C未満、温室効果ガスの排出を実質ゼロ)への貢献を目指す。
  →いぶき2号は同一観測器(=同じ物差し)で継続的に全球の温室効果ガスの挙動を高精度に観測。
  →各国の排出量の把握、削減取組の透明性向上。
 ・2014年度にプロジェクトをスタート。2018年度の打ち上げに向けて改質の最終段階。
 ・環境省、JAXA、国立環境研の共同事業。衛星プライムメーカは三菱電機(株)。

 ・「いぶき2号」主要諸元
 寸法: 5.8m×2.0m×2.1m (パドル展開時 16.5m)
 質量(打ち上げ時): 1800kg以下
 発生電力(EOL): 5kW
 設計寿命: 5年
 軌道: 太陽同期準回帰軌道
 高度/回帰日数: 613km/6日
 降交点地方時: 13時00分±15分

 ※「いぶき」主要諸元
 寸法: 3.7m×1.8m×2.0m (パドル展開時 13.7m)
 質量(打ち上げ時): 1750kg
 発生電力(EOL): 3.8kW
 設計寿命: 5年
 軌道: 太陽同期準回帰軌道
 高度/回帰日数: 666km/3日
 降交点地方時: 13時00分±15分

 ※「いぶき」について
  ・温室効果ガス観測の専用衛星としては世界初で、全球分布を測定。
  ・目標精度
   二酸化炭素: 1% (4ppm)
   メタン: 2% (34ppb)
     1000km四方(陸域)、3ヶ月平均
  ・2009年1月23日に打ち上げ、設計寿命5年。
  →打ち上げから9.5年以上経った現在も順調に運用を継続中。
  ・愛称は公募により「いぶき」に決定。
   地球の息づかい(いぶき)としてCO2吸収・排出を観測するという意味を込めて。

 ・「いぶき2号」の特徴について
  1.温室効果ガス観測センサ2型
   ・観測精度を「いぶき」から1桁向上。
    0.5ppm(CO2)、5ppb(メタン) @500km四方(陸域)、1ヶ月平均。
   ・人為起源CO2の推計(新規)
    人間活動によるCO2の推計に向けて、化石燃料などの燃焼時に発生する一酸化炭素を観測対象に追加。
   ・大都市・大規模排出源の観測強化
   ・雲を避けた観測…インテリジェント・ポインティング(新規)
    雲の影響を受けない有効観測データ数の増大(約2倍)
    ※観測原理上、雲がある状態で観測すると、その観測データは有効とならない。
     撮像する直前に雲の位置をカメラで識別し、0.6秒の間に雲の位置を確認し、雲を避けるためには見る方向をどこに変えれば良いかを衛星の中で識別する。

  2.雲・エアロゾルセンサ2型
   ・温室効果ガスの観測データの補正のため、雲とエアロゾルを観測。
   ・PM2.5濃度及び黒色炭素量の推計(新規)

 ・「いぶき2号」の開発状況
  ・JAXA筑波宇宙センターにて、機能・性能確認試験を完了。
  ・現在、種子島宇宙センターへの搬出準備中。

 ・「いぶき2号」の打ち上げについて
  ・「いぶき2号」はH-IIAロケット202型の上段に搭載し、中東のUAE衛星と同時打ち上げ予定。
  ・「地球温暖化対策 あなたの誓いを衛星&ロケットに乗せよう」キャンペーンを実施。
   頂いたメッセージをデカールに描き、ロケットに貼り付け予定。
   メッセージを半導体メモリに記録して衛星にも搭載予定。誓いのメッセージとともに宇宙から地球を見守る。

 ・温室効果ガスの観測方法について
  ・太陽光が大気中を透過する際、気体の種類によって特定の波長の光(色)が吸収される。
  ・この原理を用いて、「いぶき」「いぶき2号」は地表で反射された光を観測し、吸収される光の波長(色)と量を細かく観測することでCO2やメタンの大気中濃度を算出する。

以上です。


No.2185 :ISSバッテリ ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月31日(火)02時18分 投稿者 柴田孔明

暴露パレットに搭載されたISS用のバッテリ(6台)で、1台約200キログラム。
全体は米ボーイング社製だが、リチウムイオン電池(セル)には日本のGSユアサ製が採用されている。


No.2184 :小型回収カプセルについて ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月31日(火)02時14分 投稿者 柴田孔明

小型回収カプセルのハッチへの取り付け方についての説明。


No.2183 :公開された「こうのとり」7号機(HTV7) ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月31日(火)02時12分 投稿者 柴田孔明

第2衛星フェアリング組立棟で公開された「こうのとり」7号機(HTV7)


No.2182 :宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機の機体公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月31日(火)02時10分 投稿者 柴田孔明

 2018年7月28日、種子島宇宙センターで宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機(HTV7)の報道公開と記者説明会が行われました。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
有人宇宙技術部門 HTV技術センター長 植松 洋彦
有人宇宙技術部門 HTV技術センター HTV搭載小型回収カプセル開発チーム長 田邊 宏太

・HTV7概要説明(植松) (※説明と配付資料より抜粋)
 ・世界に誇る世界最大の補給能力、日本の宇宙船「こうのとり」
  ISS運用の根幹を支え、宇宙利用を拡大する機器などを運び、将来に向けた宇宙技術の実証を行います。
  ・運ぶモノは、「食料」「衣料品」等のISSでの生活に欠かせない物資、実験装置、システム関連品そして7号機には小型回収カプセルの実験機を搭載し、過去最重量となる約6.2トンの輸送を行う。
  ・日本の物資だけでなく、ISSに参加する国の物資も、種子島から宇宙へ。
  ・現在、ISSに物資を補給する能力を有するのは「日本、米国、ロシア」のみ。
  ・9号機までの打ち上げ・運用が計画されており、「こうのとり」を通じて国際貢献を行う。

 ・「こうのとり」7号機の機体概要
  ・全長:10.0m
  ・最大直径:4.4m
  ・ハッチ:1.3m
  ・打ち上げ時質量:約16.6トン
  ・搭載補給品質量:約6.2トン(船内+船外物資+小型回収カプセル)
  ・輸送目標軌道(ISS軌道):高度350km〜460km、軌道傾斜角51.6度
  ・打ち上げ予定日:2018年9月11日午前7時32分頃
  ・ISSによる把持:2018年9月14日(予定)
  ※6号機とほぼ同じだが、機体のバッテリの数が6台から5台に減っている。

 ・「こうのとり」7号機の特徴
  ・7号機では、こうのとりでしか運べない過去最大・最重量・最多の実験ラックや、6号機に引き続きISS用バッテリを輸送。
  (※ISS用リチウムイオンバッテリ6個、実験用の大型ラック4つ[NASA、ESA])

  ・サンプル回収技術の実証実験:小型回収カプセル
   ・7号機では小型回収カプセルの実験機を搭載し、サンプル回収技術の実証実験を行う予定。
   ・電力を使わずに保冷性能の要求を満足するさせるため、真空二重断熱容器(魔法瓶)と蓄熱材(保冷剤)を搭載し、その内側に実験資料を格納。(※4度Cに保つ)
   ・真空二重断熱容器の開発には民間企業が参加し、電力を使わずに長期間熱を逃がさない技術や着水時の衝撃(40G)に耐える強度といった要求を満たす容器の開発を行った。
   ※この小型回収カプセルを海上で回収するため、再突入の目標海域がこれまでの南太平洋と異なり南鳥島周辺となる。ルートなどの条件によっては日本からの観測ができる可能性がある。

  ・実験関連機器
   ・ループヒートパイプラジエータ(LHPR)技術実証システム
    …リザーバ外付型ループヒートパイプを搭載した展開型ラジエータを「きぼう」を使って軌道上実証する。この実証成果を次世代静止通信衛星を見据えた技術試験衛星9号機に採用される展開型ラジエータの設計に反映することで、衛星開発のリスク低減を図る。
   ・小型衛星放出機構(J−SSOD)、超小型衛星(CubeSat)
    …「こうのとり」7号機では超小型衛星と小型衛星放出機構(JEM Small Satellite Orbital Deployer : J-SSOD#10)を輸送。2020年度以降に当初の能力(6U)の8倍である48Uまで放出能力を増やせるよう、段階的に放出能力を拡大するための取組を行っている。

・HTV搭載小型回収カプセル HSRC(田邊) (※説明と配付資料より抜粋)
 (※HSRC: HTV Small Re-entry Capsule)
 ・開発目的
  「こうのとり」に搭載可能な小型回収カプセルを開発することにより、我が国初の揚力誘導制御技術と世界水準の軽量熱防護技術、及び国際宇宙ステーション(ISS)から実験サンプルを回収する技術を獲得する。
  (1)揚力誘導制御技術
   機体を世界水準の低加速度で揚力飛行させて目標範囲に誘導する。
   (※小惑星探査機「はやぶさ」のカプセルは弾道型の飛行)
  (2)軽量熱防護技術
   世界水準の国産低密度アブレータを使用して大気圏再突入時の高温環境から機体を防護する。
  (3)ISSからの実験サンプル回収技術
   我が国独自のISSからのサンプル回収手段を獲得する。

 ・ミッション概要より抜粋
  ・ISSまでの運搬は「こうのとり」の与圧部に搭載。
  ・ISSでサンプルを格納し、「こうのとり」のハッチ部分に搭載。
  ・「こうのとり」大気圏再突入前にカプセルを放出。
  ・回収カプセル再突入/誘導制御
  ・パラシュート開傘、着水/回収

 ・カプセルの構造・特徴
  ・幅840mm、高さ657mmの回転対称体、質量約200kg
  (搭載物資約20kg含む)
  ・中心部にペイロード収納容器があり、その周囲にパラシュート、浮袋などの緩降下・回収系の各機器を配置。
  ※ペイロード収納容器内に格納する真空二重断熱容器により冷蔵サンプルの回収も可能。
  ・下部にアビオニクス(電子機器)や推進系などの機能部品を集中的に艤装。
  ※揚力誘導飛行により再突入時のG環境の緩和を行う再突入体としては世界最小レベル。

 ・熱防護技術
  ・世界最高レベルを目指して新規開発した軽量アブレータを、加熱率に応じて厚みを変えてCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の構造に接着。
  ・必要に応じて内側に断熱材を追加し内部機器の温度を維持。
  ・パラシュート開傘時に側面の3枚のパネルを分離・放出。

・質疑応答
NHK・ミッションへの意気込み。サンプルとカプセルの回収が新しいミッションとしてあるが、成功することでJAXAとして日本の宇宙開発にどのような進展があり、どの辺りが期待されているのか。
植松・7号機打ち上げに向けての意気込みは、私自身は初号機の打ち上げ・運用からずっと「こうのとり」に携わってまいりまして、開発が始まった当初は7号機が最終号機だという位置づけでありました。ですので開発からずっと見てきた自分にとっては非常に特別な号機でもございますし、その打ち上げ日が初号機と同じ9月11日になったというのは、偶然では無いと思っております。ですので確実に7号機を打ち上げていきたい、運用していきたいという強い気持ちを持っております。また回収カプセルによって得られる技術ですけれども、これまで種子島から「こうのとり」が打ち上げられて宇宙ステーションに物を運んで、まあ帰ってくるんだけれども、基本的に全て燃え尽きてしまう。地球上に戻って来るものが無い。その最後のところがミッシングピースというか、輪を閉じるのにひとつ閉じ切れてなかったと思っていまして、今回7号機の回収カプセルによって、最後の見つからなかったピースをみつけるということで、これでようやく輪が閉じるのではないか。日本の宇宙技術開発についても、そこについては、これまで実績の無い、まだまだ未開発の所でしたので、ひとつそこで穴が埋まると考えております。
田邊・私も今は回収カプセルを担当してますけれども、「こうのとり」1号機の開発の頃から参画しておりまして、色々な方から最後再突入してどうなるのですかと聞かれたときに、燃えてしまうんですという回答をして、勿体ないですねといった事を言われる場面もよくあったのですが、ようやくこの7号機でこの回収カプセルを開発して搭載することができたというのは非常に喜ばしいことだと思っています。この回収カプセルは回収技術、これを獲得するということは、次の宇宙開発に大きなステップ、我が国の宇宙開発として大きなステップとなるんだと思っています。これが獲得できれば、将来いろんな宇宙利用、地球の低軌道からいろんな物を回収できるような技術だったり、他にも探査とか将来的には有人の宇宙船みたいなところまで繋がる技術だと思っていますので、そういう意味ではどうしてもミッションを成功させたいなと思っています。

NVS・再突入カプセルの格納位置だが、ISSから分離する前に再突入カプセルをこうのとりに取り付ける形になるが、これはこうのとりの隔壁の外側に再突入カプセルをつけて、ISS側のハッチ閉じて分離するという流れか。
田邊・軌道上で与圧隔壁にカプセルを取り付けて、隔壁と一体になったものをハッチに取り付ける。こうのとり側ではこれがハッチの役割をして、同時にステーション側のハッチも閉めて、その間の空間にカプセルが取り付いた状態になる。その空間を真空に引いて離脱可能になるというような流れになる。

NVS・当然計算していると思うが、ISS側のハッチとの干渉は無いのか。
田邊・はい、そこはいちばん気にするところで、それがカプセルのサイズを決める決定的なひとつになる。隔壁は奥にくぼんだ形をしていて、そこにカプセルがすぽっと入る。ステーション側のハッチとは干渉しないようになっています。

NVS・離脱時にカプセルが(ISSから)見えるのか。
田邊・カメラがこうのとりの前側を写せるような画角にあれば、カプセルが取り付いたこうのとりが映像でご覧いただける。
植松・(※上記を模型で説明)

産経新聞・こうのとりは前回6号機で配管の気密性の問題から延期になった経過があったが、今回その再発防止はどうなっているか。それ以外の事象も含め、水平展開のようなことをなされているか。今の健全性の認識をお伺いしたい。
植松・おっしゃる通り6号機の時には、異種金属の溶接部から漏洩するという不具合・不適合がございました。それに対しては製造のプロセス、その中の検査項目、製造終了後の健全性確認の試験、こういったところを全て見直しました。製造のプロセスについては溶接の条件から見直して、確実に溶接が行えるようにということで、プロセスそして溶接条件も見直しました。またプロセスの中の検査項目、こういったものに関しましても、検査の判断基準をもう少し具体化するとか、あるいは検査項目を増やす、そういった対策をとりました。また検査後の試験につきましても、試験項目を増やす、それから試験の合否クライテリアを明確にする、そういったかなり大がかりな対策をとっております。またそれは溶接のプロセスの段階ですけれども、「こうのとり」として組み立てた後にも試験をいくつか追加して、万が一漏洩があれば早期にそれをキャッチできるようにということで、製造のプロセス、試験のプロセスを見直しています。7号機につきましては、そういった水平展開あるいは是正処置が非常に効果を上げておりまして、工場での試験につきましても、これまでよりも厳しい目で試験データを見ることができまして、6号機ではそういった事象がございましたけれども、7号機については健全性が確実に確認されていると考えております。また今日の公開日を迎えるにあたって、昨日まで試験を行いまして、その中で「こうのとり」7号機の健全性を確認しておりますので、射場作業としては、明日以降の燃料充填に向けて準備ができていると考えております。

産経新聞・今回は過去最大重量の荷物だが、あくまで仕様の範囲で、特別な対応は無いということか。
植松・正確に申し上げますと、もともとこうのとりを開発した段階の仕様としては、荷物の最大重量は最大6トンということで進めておりましたが、6号機以降にNASAのバッテリを運ぶことになったときに、バッテリが非常に重いということで、どうしても設計値の最大6トンを超えてしまう可能性が出てまいりましたので、それに対して機体の実力値や追加の解析・検証を致しまして、今回の6.2トンは設計値に対して若干200キロのオーバーにはなりますけれども、十分「こうのとり」の性能として対応できると、追加で検証しております。

産経新聞・追加検証の成果として6.2トンになったのは7号機からか。
植松・その通りです。

読売新聞・カプセル回収にあたって民間企業が参加して、熱を逃がさない技術や着水時の衝撃に耐える強度を獲得したとのとこですが、具体的にはどういった業者が参加して、どのような役割を果たされたのか。
田邊・この小型回収カプセルの開発にはいろんなメーカーの方の協力・サポートを得られております。たとえば与圧隔壁は三菱重工さんだったり、誘導制御系としては三菱スペースソフトウェアさんだったり、パラシュート系だと藤倉航装さんだったり、容器はタイガー魔法瓶さんが今回参画していただいていまして、一緒に開発をさせていただきました。あと、熱防護系だと川崎重工さんだったり、国内の宇宙関連のメーカーも沢山いるのですけども、それ以外にも小型のスラスタを開発するにあたっての推薬弁のメーカーさんだったり、3Dプリンタを駆使したような、そういったこともやっていますので、結構いろんなメーカーの方の協力を得ております。

読売新聞・これまでも、「はやぶさ」のカプセルが地球に帰還しているが、今回の小型カプセルが従来のものと違うところは、耐熱性であったり、着水時の衝撃に耐える強度だったり、そういった特徴か。
田邊・「はやぶさ」との大きな違いといいますと、やはり揚力誘導というところです。誘導制御系と推進系を搭載して、自分の姿勢を変更しながら揚力をコントロールしてふんわり優しく降りてくるような技術は、これは「はやぶさ」ではやっていなかった。もちろん熱防護も大切だが、違いが判りやすいという意味では揚力誘導かなと思います。

読売新聞・こうのとりの開発と小型回収カプセルの開発にかかった費用は。
(側面)・7号機の機体費用という意味では140億となっています。
植松・小型回収カプセルは今回7号機で首尾良く成功すれば、今正に2号機の開発・製造を進めようと考えておりまして、それに際して入札等がありますので控えさせていただきます。

NVS・日本の過去の再突入は確か4回あるが、それまでの経験と技術的なシリーズ性はあるか。
田邊・耐熱に関しては今回の小型回収カプセルのために開発した軽量なアブレータ、軽量というのがひとつのキーですが、これは将来大型化する際にどうしてもアブレータの重量が足枷になるので、その部分をなるべく減らしたいという思いで、今回軽量アブレータを新たに採用した。これは「はやぶさ」等では使っていなかったもので、ここは改善されているところだと思います。従来、J1で打ち上げたものは、ロケットで打ち上げてそのまま再突入させる、高度は100キロちょっとだと思いますけど、今回の小型回収カプセルはステーション軌道からということで、400キロからの再突入ということで、そこは新たなチャレンジだと思っています。

NVS・今回の再突入を日本から光学観測する予定はあるか。
田邊・JAXAの中でもそういう話はあります。工学的に観測するためにはいろんな条件がありますが、天候はもちろん昼間だとあまり見えない、夜の方が見えやすいなどいろいろあると思います。軌道もどの辺を通るかによって見える見えないがある。検討自体はしております。

ライター林・ふんわり飛行させる揚力制御技術の話があったが、どれくらいの加速度を目標にしているのか。
田邊・加速度としては4G。これは有人の帰還カプセルで、人が乗っても安全な加速度として、目標として4Gを設定しています。

ライター林・着水の衝撃が40Gとあるが、そこは大丈夫なのか。
田邊・これは非常に短時間なので大丈夫です。実際の着水試験では、そこまでは出ていないことは確認できています。

ライター林・さきほど(カプセルの)2号機という話があったが、「こうのとり」7号機以降でもういちど小型回収カプセル実験を行う計画があるのか。
植松・まだ計画自身については調整中です。やはり我々がこの技術を確実に獲得して、そしてユーザーの要望に応えていくためには、継続的にこれをやっていかなければならないと考えています。7号機での結果の反映等も考慮して、恐らく最速では「こうのとり」9号機で小型回収カプセルをもう一回やることを今、検討中でございます。


以上です。


No.2181 :段間部のHTV7号機ロゴ ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月25日(水)23時47分 投稿者 柴田孔明

段間部の「こうのとり」7号機ロゴ


No.2180 :H-IIBロケット7号機第2段 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月25日(水)23時46分 投稿者 柴田孔明

2段のエンジン側から。黒いカバーは段間部。


No.2179 :ロケットの上側から ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月25日(水)23時45分 投稿者 柴田孔明

1段の上側から。