宇宙作家クラブ
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No.2161 :衛星分離確認時のプレスルーム ●添付画像ファイル
投稿日 2018年3月3日(土)20時22分 投稿者 柴田孔明

衛星分離が確認され、拍手する関係者。
(※竹崎展望台のプレスルームにて)


No.2160 :H-IIAロケット38号機打ち上げ経過記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年3月3日(土)20時21分 投稿者 柴田孔明

 2018年2月27日14時34分にH-IIAロケット38号機が種子島宇宙センターから打ち上げられ、搭載していた情報収集衛星光学6号機が所定の軌道に投入されました。
 このあと竹崎展望台の記者会見室にて打ち上げ経過記者会見が開催されています。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・H-IIAロケットF38打ち上げ経過記者会見(1部)
・登壇者
 内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 所長 木野村 謙一
 文部科学省 科学技術・学術政策局 科学技術・学術総括官 勝野 頼彦
 宇宙航空研究開発機構 理事長 奥村 直樹
 三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部長 渥美 正博
・側面列席者
 内閣衛星情報センター 芹澤管理部長
 内閣衛星情報センター 一ノ瀬技術部企画課長
 内閣衛星情報センター 金子管理部付調査官
 文部科学省研究開発局 山之内宇宙開発利用課企画官

・打ち上げ結果報告(渥美)
 三菱重工業株式会社及び宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから平成30年2月27日13時34分00秒に、内閣衛星情報センターの情報収集衛星光学6号機を搭載しましたH-IIAロケット38号機を予定通り打ち上げました。
 ロケットは計画どおり飛行しまして、情報収集衛星光学6号機を正常に分離し、所定の軌道に投入した事を確認しました。
 ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、東北東の風3.6m/s、気温は16.8度Cでした。
 情報収集衛星光学6号機が軌道上で初期機能の確認を無事終了し、所期の目的を成功裏に完遂されることを心より願っております。
 本日の打ち上げ成功でH-IIAは通算38機中37機の成功、成功率は97.4%になりました。H-IIBと合わせますと通算44機中43機の成功、成功率97.7%です。またH-IIA/H-IIBあわせまして38機連続の打ち上げ成功です。
 今回は天候によりまして2日延期いたしましたが、ほぼ2ヶ月ピッチの打ち上げを連続して成功することが出来まして安堵しております。当社はこれからも安定的な打ち上げを継続してできるように、心を引き締めて細心の注意と最大限の努力を傾注してまいります。
 今回の打ち上げに際しまして多くの方々にご協力ご支援を頂きました。あらためて関係者の皆様に心よりお礼を申し上げるとともに、引き続きご支援いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

・打ち上げ結果報告(奥村)
 ただいま三菱重工様からH-IIAロケット38号機による情報収集衛星光学6号機の打ち上げ成功に係るご報告がございました。私どもJAXAは今回の打ち上げにあたっても私どもの役割であります、飛行安全管制あるいは地上安全運用といった、いわゆる安全管理業務を達成できましたことを報告させていただきます。
 今回の打ち上げも地元の皆様をはじめ、関係機関のご協力ご支援のもとに成し得たものでございます。この場を借りてあらためて御礼申し上げたいと思います。なお、今後とも確実な打ち上げができますように私どもも精進してまいりたいという風に考えてございます。
 なお今回の打ち上げによって今年度は最後の基幹ロケット打ち上げになります。今年度は過去最多となる年間6機の打ち上げに成功したということになります。さらに振り返ってみますと、今のJAXAの中期計画期間5年間、これを前の5年間と比較してみますと、この5年間で実は基幹ロケットは22機打ち上げてございます。これはH-IIAそれからH-IIB、及びイプシロンでございます。前の5年はどうであったかと申しますと合計で11機でございます。従いましてこの5年間に倍増していると、こういう風に捉えることが出来ます。もう一点、本件で申し上げますと、数が倍になったのみならず、実は政府の政策推進に関わる衛星の数が前期では4機でしたけども、この5年間では10機に増えて、倍増以上になっております。その点がひとつと、それから民間事業者の衛星をこの中期で2機打ち上げてございます。そういった意味で日本のロケット打ち上げが確実に政策推進あるいは産業振興といった役目を果たしつつある新しい時代に入ってきたのではないか、という事を私は実感してございます。こういった数を打てるようになったのも、三菱重工さんをはじめ企業の方々、それからこの種子島地区あるいは南種子町地元の皆さんのご理解ご支援、さらには関係機関の皆様のご協力の賜物であり、私もJAXAの現場における技術者達の取り組みに大変感謝し、また心強く思っております。こういったことを積み重ねることによって、打ち上げ市場の国際競争力向上に貢献してまいりたいと思います。この勢いをH3開発に繋げて、我々も更に誠心誠意ロケット開発事業に取り組んでまいりますので、引き続きご理解ご支援を賜ればと思います。

・会見者挨拶(内閣衛星情報センター・木野村)
 桜が満開となり、春の香りの漂うここ種子島の宇宙センターからH-IIAロケットの38号機が打ち上げられまして、搭載されておりました私どもセンターの情報収集衛星光学6号機が所定の軌道に投入できました。現在、光学衛星につきましては4号機と5号機の2機を運用しておりますけども、このうち平成23年9月に打ち上げをいたしました4号機につきましては、その設計寿命であります5年を1年半ほど超えて運用しております。今回打ち上げをいたしました6号機は、衛星による情報収集体制を確実なものにするためにも極めて重要な衛星と考えております。今後、内閣衛星情報センターといたしましては、まずはこの光学6号機の早期の運用開始に向けた所要の作業を確実に進めまして、我が国の情報収集能力がより強固となるよう全力を尽くしてまいりたいと思いますので、今後ともよろしくご支援の程をよろしくお願いいたします。

・会見者挨拶(文部科学省・勝野)
 配付しております林文部科学大臣の談話にもございますように、今回の打ち上げ成功によりまして基幹ロケットとしては41機連続での成功となりました。このことは我が国が有するロケット技術の着実な発展と信頼性の向上を示すものであり、たいへん喜ばしく思っております。ロケットの打ち上げにご尽力ご支援をいただきました関係の皆様方に、あらためてこの場で厚く御礼申し上げる次第でございます。また今後も情報収集衛星が順調に運用され、所期の目的を達成することを私どもとしても期待をしております。平成29年度につきましては気候変動観測衛星「しきさい」、それから超低高度衛星技術試験機「つばめ」や、高性能小型レーダ衛星「ASNARO-2」など、基幹ロケットとして過去最多となる年間6機の打ち上げに成功いたしました。文部科学省といたしましては、今後も基幹ロケットの安全性・信頼性の向上とともに、次期基幹ロケットでありますH3ロケットの開発にも着実に取り組んでまいりたいと考えております。

・配付資料より、文部科学大臣談話。
『本日、H-IIAロケット38号機が打ち上げられ、搭載していた情報収集衛星光学6号機が所定の軌道に投入されたことを確認いたしました。
 今回の打上げ成功により、我が国の基幹ロケットとしては41機連続での打上げ成功となり、着実に信頼性を向上させていることを、私も喜ばしく思っております。
 平成29年度は、気候変動観測衛星「しきさい」及び超低高度衛星技術試験機「つばめ」や、高性能小型レーダ衛星(ASNARO-2)など、基幹ロケットとして過去最多となる年間6機の打上げに成功いたしました。
 文部科学省としては、今後も基幹ロケットの安全性・信頼性の向上に取り組むとともに、次世代の基幹ロケットであるH3ロケットの開発にも着実に取り組んでまいります。
平成30年2月27日 文部科学大臣 林 芳正』

・(参考)・配付資料より、内閣総理大臣コメント・H-IIAロケット38号機の打上げ成功について
『本日、種子島宇宙センターから、H-IIAロケット38号機が打ち上げられ、搭載していた情報収集衛星光学6号機は所定の軌道に投入されました。
 政府としては、この光学6号機を含む情報収集衛星を最大限活用し、今後とも我が国の安全保障及び危機管理に万全を期す所存です。
平成30年2月27日 内閣総理大臣 安倍 晋三』

・(参考)・配付資料より、内閣府特命担当大臣(宇宙政策)談話。
『本日、H-IIAロケット38号機により、情報収集衛星光学6号機の打ち上げが成功したとの連絡を受けました。
 宇宙基本計画においては、安全保障に資するように宇宙を活用する観点から、我が国における情報収集等のための宇宙システムを強化するとしています。情報収集衛星光学6号機の打ち上げ成功により、我が国の安全保障、大規模災害の対応等の強化に資するものと期待しております。
 内閣府特命担当大臣(宇宙政策)として、宇宙基本計画に基づき、宇宙安全保障の確保を始めとして宇宙政策を積極的に推進してまいります。
平成30年2月27日 内閣府特命担当大臣(宇宙政策) 松山 政司』

・質疑応答
NHK・今回の情報収集衛星の打ち上げ成功で7機が運用されることになるが、今後10機体制を目指すとある。今回の成功を踏まえて情報収集衛星の運用ですとか強化とか、どのようなことを目指していきたいのか。
木野村・我々は目標として10機体制、基幹衛星4機、時間軸多様化衛星4機、データ中継衛星2機ということであります。今回は先ほど申しあげた通り、光学衛星も既に計画寿命を過ぎているものもありますし、レーダ衛星に限ってもこれがありますので、これをバックアップするためにも、10機体制にかかわらず、その前に着実に埋めていきたいと思います。そしてこの10機体制は残念ながら行程表上、38年度以降はまだ規定をされておりませんので、それを具体的に何年に達成できるかということを、これは技術的な面そして財政的な面をしっかり踏まえて具体的な時期的な目標を確立していきたいと考えています。

共同通信・情報収集衛星のシステムにはこれまで1兆円を超える国費が投じられていて、一方で非公開情報が多くて成果が見えづらい。平成27年度から加工された画像の公開が始まったことは踏まえた上で、今後国費を投じていくことに国民に理解を求めていくのか。成果の公開のあり方について今後どうされていくのか。
木野村・我々の内閣衛星情報センターの任務と申しますか役割としては、やはり安全保障に資するものと、それから危機管理と、就中大規模震災等への対応ということでありますけども、いま言われたように、一般の国民の方に安全保障の事実を直接的に開放するということは、我々の能力を明かすことにもなりますので、これはもうご勘弁をという事なんですけども、いろいろな官邸をはじめとして、いろんな利用省庁のリクエストに基づいて利用省庁に提供することによって、間接的ながら当然ながら国民の方の安心安全を確保するひとつのツールだとご理解いただきたいと思います。それから災害派遣と申しますか、大規模震災等につきましては、これはケースバイケースということで、これはどういうことかと申しますと、我々の衛星はさきほど申し上げたとおり安全保障の部分と危機管理の両方を目的としておりますので、その時その時の最適の撮像を、どちらが最適になるかということで、ケースバイケースでやっております。それから昨年7月の北部九州の豪雨で提供致しました。それから1月の草津白根山の噴火でも提供致しました。という事で、他の代替手段が無い、例えば自衛隊とか警察・消防が災害について真っ先に航空機を飛ばしたり部隊を派遣したり情報収集致しますので、我々内閣衛星情報センターの画像情報の方が遥かに勝っている、もしくは他に代替できない場合に私達の画像を提供した方が非常に効率的だということで進めております。あとは今言われたように、1兆3千億円ほど税金を使っておりますので、いかにしてより具体的に提供できるかについては、日々優先順位の兼ね合いから判断をして提供させていただきたいと思っています。

南日本新聞・情報収集衛星の機数を増やす意義は何か。
木野村・残念ながら我が国を取り巻く物理的な安全保障環境は、非常に厳しいものがあると思います。今回光学の6号機を打ち上げましたけども、それでもまだまだ実態として、情報収集手段として満足できるものと考えておりませんので、より性能の良いものを1つでも2つでも増やして、情報収集手段を、より効率的・効果的に運用して、皆さんの負託にこたえていくのが我々の課せられた任務だと考えております。

・H-IIAロケットF38打ち上げ経過記者会見後ブリーフィング(2部)
・登壇者
 内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部付調査官 金子 忠利
 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 鹿児島宇宙センター所長 打上安全管理責任者 藤田 猛
 三菱重工株式会社 執行役員フェロー 防衛・宇宙セグメント 技師長 打上執行責任者 二村 幸基
・側面列席者
 内閣衛星情報センター 國藤管理部総務課主査

・質疑応答
共同通信・今年度の打ち上げは基幹ロケットで6機と説明があったが、時期とロケットの種類と衛星をそれぞれ教えていただきたい。
藤田・今年度は、34号機が昨年6月で「準天頂衛星2号機」、35号機が8月で「準天頂衛星3号機」、36号機が10月で「準天頂衛星4号機」、12月に(37号機で)JAXAの開発した衛星「しきさい」と「つばめ」を2機同時に打ち上げて、年が明けて内之浦宇宙空間観測所からの打ち上げになりますが、1月にイプシロンロケット(3号機)で高性能小型レーダ衛星を打ち上げています。そして本日38号機ということで、情報収集衛星光学6号機で、あわせてH-IIAロケットで5機、内之浦からのイプシロンロケットで1機、基幹ロケットで合計6機の打ち上げになっています。

共同通信・H-IIAで5機は過去最多か。
藤田・基幹ロケットで6機は最多。
二村・H-IIAロケットでは(2014年度と)最多タイです。

産経新聞・情報収集衛星光学は今現在は2機が運用中で、そのうちの5号機は6号機と同じ水準の性能であると認識しているが、高性能の衛星が今回順調なら2機となるが、この意義をどう認識されているか。
金子・今回光学6号機が打ち上げられた、あるいは運用に至った際の効果と意義という事だと思います。水準ということも言及いただきましたが、そこにつきましては情報収集衛星の一般論といたしまして、私どもとしては機能でございますとか性能、これは不断に向上させていくという方針で進めてございます。その上で、先ほど所長からも申し上げましたけれども、現状光学2機を運用している中で今般それが追加されるということでございますので、間違いなく撮像機会が増えることは確実に言えることでございます。さらに詳細なことにつきましては、事柄の性質上差し控えたいと思いますが、繰り返しになりますが撮像機会が増えるといったことは、バックアップとかいろいろな確実性の向上効果があると認識しています。

産経新聞・高精度の最新のものが加わることによる意義はどう認識されているか。
金子・不断に性能あるいは機能を向上させる中にあって、さらに1機追加されることは非常に大きな意義があると考えています。

日本経済新聞・この1年は2ヶ月おきくらいで打ち上げてこられたが、いろいろご苦労もあったと思うが、その手応えと、来年度以降は若干受注がとれていないというか規模が達していないが、それをどう乗り越えていかれるか、コスト削減などもお伺いしたい。
二村・おっしゃるとおり、この1年余りはほぼ2ヶ月ピッチで打ち上げを行ってまいりまして、我々としては機体の製造能力の問題もありまして、そういった意味で非常に準備は困難を極めるだろうと実は思っておりましたけれども、関係するメンバーあるいは関係するパートナー社、そういったところの打ち上げていこうという熱意と数々の努力といったものが、今回の打ち上げまで継続できたということが、ひとつの大きな要因になっていると思っておりまして、そういった意味では我々のコンビネーションといいますか、そういったチームといいますか、そういったものの実力を高めることができたという風には思っております。それから打ち上げの機数に関しましては、年度年度で山谷が当然あるのでございますけども、機数が少ないから、たとえば価格を上げるという訳にはいきませんので、我々としては毎回毎回打ち上げる機体については、できるだけお客様に対してはお安く提供できるようにという努力を重ねてきている訳でして、当然今ご質問の意図には、そうするとビジネススケールとしては小さくなるけどもというご趣旨もあるのでしょうけども、来年度以降私どもはJAXAさんの元で開発させていただいているH3ロケットの開発が佳境に入ってまいりまして、ラップを少ししないというか、少しずれた時期にそういったものが入ってくることで、我々としては非常に稼働率が高いものがずっと継続するということでございまして、我々としてはそれぞれひとつひとつを確実に仕上げていくという事に邁進してまいりたい、という風に思っております。
藤田・JAXAの方はご承知の通り打上安全管理業務というのを打ち上げの役割として担ってございますけども、やはり過去に無い頻度・数の打ち上げをここ2年弱の期間で迎えてきた訳ですけども、私どもとしましても打上安全管理業務、それから種子島宇宙センターの打ち上げ設備の維持管理というのもJAXAの役割でございまして、様々な工夫を凝らした準備を行って、なんとかここまで無事成功を重ねてこられたなと、正直申しますとほっとしているところがございます。またこういった実績は打上安全管理業務の面からも、二村さんから話しのありましたH3の開発、これはもっと頻度の高い打ち上げを目指していますので、それに向けての礎になるかなと感じております。

南日本放送・今回の光学6号機の開発費用と、過去の光学衛星と比べての増減を伺いたい。
金子・光学6号機の予算の関係でございます。衛星の開発に係る予算は307億でございます。一方、打ち上げ関係の予算は109億でございます。トータル416億円でございます。過去の衛星との関係でございますが、概ねほぼ同程度とご理解いただければと思います。

南日本新聞・初歩的な質問で恐縮ですが、今までの情報収集衛星の打ち上げ数ですが、光学6、レーダが5、予備が1、足し算で12になるがよろしいか。試験機は除きます。
金子・運用に至った情報収集衛星の打ち明け回数は12でございます。

南日本新聞・最初の情報収集衛星が2003年の3月に上がってちょうど15年になると思うが、当初我々の地元でもいろいろ反対とか抗議とか懸念とかいろんな声があったと認識しているが、今12機上がって15年経って、あまりそういった声が聞かれないという認識を持っているが、情報収集衛星の役割というものが国民への理解と浸透が進んでいると認識なさっていますか。
金子・我々としては非常に、安全保障あるいは危機管理のための情報収集衛星、これは我が国にとって非常に重要な課題であるという認識をいたしております。その中にあって、地元の関係者の方のご理解ご支援というものは必要不可欠だと思っておりまして、我々がミッションを遂行していく中、可能な限り公開できるものは公開して成果を目に見える形で届けることで、そういったご理解を一層いただければと考えています。

南日本新聞・15年前、最初に情報収集衛星が上がったときに、これは宇宙の平和利用から逸脱していないという政府の見解があったと思うが、それは15年経った今も変わっていないという認識で良いか。
金子・当然、我々の使命というのは、我が国の安全という事にございますので、そういったものの中で進めていっていると認識しております。

以上です。 


No.2159 :H-IIAロケット38号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2018年2月27日(火)13時44分 投稿者 柴田孔明

2018年2月27日13時34分00秒(JST)に打ち上げられたH-IIAロケット38号機


No.2158 :第2回判断もGO ●添付画像ファイル
投稿日 2018年2月27日(火)08時37分 投稿者 柴田孔明

2018/02/27午前3時半頃ですが、H-IIAロケット38号機の第2回GO/NOGO判断会議の結果はGOで、ターミナルカウントダウン作業開始可と判断されています。
写真は同日午前9時19分頃に撮影。


No.2157 :H-IIAロケット38号機の機体移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年2月26日(月)23時00分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット38号機の機体移動が2018年2月26日23時30分頃から行われました。
今回は射点近くのプレススタンドでの撮影は無く、3.5km前後離れた竹崎展望台から撮影しています。


No.2156 :第1回GO/NOGO判断の結果はGO
投稿日 2018年2月26日(月)19時37分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット38号機、第1回GO/NOGO判断会議の結果はGOとなり、機体移動作業開始可と判断されています。

No.2155 :H-IIAロケット38号機の打ち上げ日時について
投稿日 2018年2月25日(日)13時18分 投稿者 柴田孔明

延期されていたH-IIAロケット38号機の打ち上げ日時が決定しました。
2018年2月27日13時34分00秒(JST)です。
打ち上げ時間帯は13時34分00秒〜13時48分00秒(JST)となっています。

No.2154 :再延期
投稿日 2018年2月24日(土)15時17分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット38号機の打ち上げ予定日ですが、2018年2月26日から再度延期になり、2018年2月27日となりました。
延期の理由ですが、2月25日から同26日にかけての天候悪化が予想されるためです。

No.2153 :H-IIAロケット38号機打ち上げ前プレスブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2018年2月23日(金)22時07分 投稿者 柴田孔明

 2018年02月23日14時(JST)より、種子島宇宙センター竹崎展望台の記者会見室にて、H-IIAロケット38号機の打ち上げ前プレスブリーフィングが開催されました。なお、当初の打ち上げ予定日の2018年2月25日は悪天候が予想されたため、翌日の2018年2月26日に変更されました。
(※一部敬称を省略させていただきます) 

・登壇者
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 鹿児島宇宙センター 射場技術開発ユニット 技術領域主幹 西平 慎太郎
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 MILSET長 平嶋 秀俊

・打ち上げ延期について(発表と配付資料より)
三菱重工業株式会社及び国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、種子島宇宙センターから情報収集衛星光学6号機を搭載したH-IIAロケット38号機の打ち上げを平成30年(2018年)2月25日に予定しておりましたが、当日の天候悪化が予想されるため、下記のとおり打ち上げを延期いたします。
 打ち上げ予定日:2018年2月26日(月)
 打ち上げ予定時間帯:13時34分00秒〜13時48分00秒(日本標準時)
 打ち上げ予備期間:2018年2月27日(火)〜2018年3月26日(月)
 なお、2月26日の打ち上げの可否につきましては、明日以降の天候状況を踏まえ、再度判断致すこととします。

・ロケットについて
 ロケット:H-IIA202型(標準型)
 フェアリング:4S型

・準備状況
 組み立て作業を終え、現在は発射整備作業中。

・作業予定
 2月21日:Y−3作業(完了)
  ・1/2段推進系・電気系・機構系点検作業
 2月22日:Y−2作業(完了)
  ・火工品結線
  ・2段ガスジェット推進薬充填
 2月23日:Y−1作業(実施中)
  ・電波系統点検
  ・推進系最終クローズアウト
  ・機体アーミング
  ・機構系/アンビリカル離脱系最終準備
  ・射点/貯蔵所系設備準備
 2月25日〜2月26日:Y−0作業(予定)
  ・機体移動
  ・射点設備系最終準備
  ・ターミナルカウントダウン
  ※液体酸素・液体水素等の推薬の充填、ヘリウム気蓄器への充填等を実施。
  ・リフトオフ

・気象情報について
 今日明日につきましては大陸からの高気圧に覆われ、天候も安定して晴れということになります。明日の朝までは晴れますけども、高気圧が通過するということで雲が広がりやすくなります。明後日は曇り時々雨という予報になっています。週間気象情報では、当初予定していた25日は雷の予報が出ています。これは低気圧が種子島付近を通過し、大気の状態が非常に不安定になり発雷の恐れがあるということで延期しております。この近辺で打ち上げを計画しますと、発雷の恐れ、それから氷結層もかなり出て来ているため打ち上げの制約に抵触します。2月25日(以降)は天気が回復する傾向で、2月26日の打ち上げと発表させていただきました。


・質疑応答
南日本新聞・制約条件に引っかかったのは落雷か。雨は条件に引っかからないのか。
平嶋・落雷もありますし、氷結層も制約以上の広がりが予想されるため延期ということになりました。雨はそこまではいかないだろうと思います。

南日本新聞・26日午後は晴れか。
平嶋・これから気象の予報を見ながら順次判断します。

南日本新聞・今のところ26日の打ち上げに支障は無いということか。
平嶋・まだなんとも言えないところがあり、確認を逐次やろうとしています。

南日本新聞・再設定ができたということは天候の見込みはあるということか。
平嶋・はい。今日も久しぶりに晴れを見たが安定しない日々が続いているので、引き続き注視して打ち上げに万全を期したいと考えています。

産経新聞・今号機で新たな改良や設計や工程の変更はあったか。またこれまでに不具合やヒヤリハットのような現象、何らかの作業のやり直しはあったか。
平嶋・大きな工程の変更はございません。小さな工程等の変更はございました。逐次対策を打って、打ち上げに対して問題が無いか確認して今回に臨んでいる。

産経新聞・細かい変更はあるが機体の健全性に問題は無いということか。
平嶋・はい。

産経新聞・打上に向けた今の思いを伺いたい。
平嶋・今年度最後の打ち上げということと、衛星も非常に重要な衛星ということで、今まで通り平常心を保って対応してまいりたいと考えています。

産経新聞・今年度は非常に打ち上げが多かったが、その最後への思いも伺いたい。
平嶋・2ヶ月に1回のピッチで打ち上げたということで、有終の美を飾りたいと考えています。

南日本新聞・26日の打ち上げ時刻は明日ぐらいに決まるのか。
平嶋・明日の午後の早いうちに。
広報・いつも通り、配信などでご連絡致しますす。

南日本新聞・25日午後の機体移動の時間帯には落雷の影響が無いということか。
平嶋・大丈夫だと考えている。

読売新聞・搭載衛星について、光学6号機は4号機の後継機か。今運用しているのは何機あるか。
平嶋・我々からは答えられない。

以上です。


No.2152 :千羽鶴贈呈式(羽生プロジェクトマネージャ) ●添付画像ファイル
投稿日 2018年2月16日(金)21時43分 投稿者 柴田孔明

打ち上げと前後しますが、2017年12月27日に肝付町地域女性団体連絡協議会及び旧内之浦婦人会による千羽鶴贈呈式が行われ、イプシロンロケットプロジェクトチームの井元プロジェクトマネージャとSS-520 5号機の羽生プロジェクトマネージャに千羽鶴が贈呈されました。写真は羽生プロジェクトマネージャ。


No.2151 :SS-520 5号機打ち上げ後記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年2月16日(金)21時32分 投稿者 柴田孔明

 超小型衛星TRICOM-1Rを搭載したSS-520 5号機は、2018年2月3日14時03分(JST)に内之浦宇宙空間観測所のKSセンター台地から打ち上げられ、打ち上げ後記者会見が同地の記者会見室で行われました。
 (※一部敬称を省略させていただきます。また人名に機種依存文字があります。表示が異なる場合はご容赦願います)

・登壇者
東京大学 工学系研究科 教授 中須賀 真一
JAXA 実験実施責任者代理 稲谷 芳文
JAXA SS-520 5号機プロジェクトマネージャ 羽生 宏人
経済産業省 製造産業局 航空機武器宇宙産業課 宇宙産業室長 田 将範
文部科学省 研究開発局 宇宙開発利用課長 谷 広太

・稲谷
 皆さん、お集まりいただきありがとうございます。昨年1月15日にここで会見させていただきまして、実験がうまくいかなかったということで大変残念な結果になりました。その後多くの方の努力で1年、実際は1年経たずに昨年暮れにとやっていたが少しトラブルに見舞われて今日になりましたが、ほぼ1年で再トライをさせていただく環境を作っていただいた皆様に感謝を申し上げたいと思います。結果は、今日良いご報告ができることになりましたので、大変喜んでおります。詳細はロケットについては羽生プロマネ、衛星については中須賀教授からご報告致します。今日はよろしくお願いいたします。

・打ち上げ実験結果報告(羽生)
 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、平成30(2018)年2月3日14時03分00秒(日本標準時)に、SS-520 5号機による超小型衛星打ち上げの実証実験を内之浦宇宙空間観測所において実施致しました。
 SS-520 5号機は計画通り飛行し、実験実施後約7分30秒に超小型衛星TRICOM-1Rを分離、軌道投入に成功しました。TRICOM-1Rの状態は正常です。
 本件は経済産業省 平成27年度宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業(民生品を活用した宇宙機器の軌道上実証)の採択をうけて実施しました。
 今回のSS-520 5号機実験実施にご協力頂きました関係各方面に深甚の謝意を表します。
なお、実験実施時の天候は晴れ、北西の風3.0m/秒、気温7.0度Cでした。
 昨年4号機の時には残念な結果で、非常に悔しい思いではありましたけれども、多くの皆様のご協力をいただき、また多くの励ましをいただきまして、今日実験をさせていただきまして、本当にありがとうございました。

・実験結果報告(中須賀)
 私達もTRICOM-1という前回の衛星がうまく軌道上に上がらないで、しかしこの1年あるので、少し実験を追加しようということで、即時観測といって画像を最初地上局がリンクをとれる前に撮って、最初のパス・可視で降ろすという実験を準備して、万全を期して打ち上げに臨みました。TRICOM-1RというRをつけましたけど、名前に致しました。結果を申し上げますと、まず打ち上げて直後、14時11分16秒、この時刻に埼玉県の東京電機大学、ここで入感、つまりここで衛星からのテレメトリをキャッチしました。これで衛星が健全に動いているということを確認しました。そのあと1周後ですね、これが正常な第1パスですけども、ここにある内之浦の地上局及び、東京電機大学の地上局で衛星の電波をもう一回受信しまして、衛星がちゃんと軌道投入されていること、かつ衛星の健康状態が健全であることが確認されました。特に大事なのは衛星のバッテリの電圧で、これが下がっていると非常に悪いという状況ですけども、最初に電機大でとれたときが7.96Vで、1周回ってとれた時が7.84Vで非常に健全な状態ということで、我々もほっとしているところでございます。それで、これまでTRICOM-1Rという名前をこれまでつけておりましたけれども、軌道上で正常な動作が確認されましたら愛称をつけようということで用意してまいりました。その愛称を今日ここでご披露させていただきたいと思います。
 「たすき」
 これは、この衛星のメインミッションが地上からの非常に弱い電波を受け取って、衛星で集めて、地上の管制センターに送るというということで、発展途上国とかいろんな国、地上の通信インフラが無いところでも地上の様々なデータを集められるという、こういった事を目指す、まさに「たすきリレー」のような意味ということで、「たすき」という名前にさせていただきました。それと同時にですね、いろんな組織が一体となって宇宙開発に取り組んでゆくという、そういった世界を目指してゆくという、そういう意味も込めて「たすき」という名前にさせていただきました。
 ちなみに(披露された命名文)は僕が書きました。

・登壇者挨拶(田)
 今回の小型ロケットSS-520 5号機、そして超小型衛星TRICOM-1Rの開発委託省庁として一言ご挨拶申し上げます。まず今回の打ち上げにあたりまして、ご理解ご協力をいただきました地元の方々に心より感謝を申し上げます。また、プロジェクトに関わられましたJAXA・関係企業・東京大学他、関係者の方々の不眠不休の取り組み、そしてこの1年間のご尽力に敬意を表します。そしてなんといっても昨年1月の打ち上げがうまくいかなかった後にですね、たくさんの応援をいただいて支えてくださった方々に感謝を申し上げます。昨年1月の打ち上げがうまくいかなかった時は関係者共々うなだれた訳ですけども、たとえば宇宙政策委員会のメンバーの方々には、くじけることなく再チャレンジをせよという風に言っていただきました。また弊省の世耕大臣からも、出張先から偉業には失敗はつきものと背中を押してもらった次第でございます。その後、原因究明であるとか、また製造生産の準備であるとか、いろんな打ち上げの調整とか、いろんな困難があった訳ですけど、それを関係者の皆で乗り越えてここに至っているのは大変喜ばしいことと思っております。本プロジェクトには、例えば飛行制御装置などで民生技術を活用して、今後小型ロケットの低コスト化に向けた入っているところでございます。私ども経済産業省としては、特に衛星データがビッグデータ化してきているということで、コネクテッドインダストリーの一部として小型衛星であるとか、そしてその打ち上げである小型ロケットのニーズが非常に高まっていると考えております。本日は宇宙産業、そして宇宙政策にとって歴史的な日であると考えております。そして宇宙という観点のみならず物作りであるとか生産技術であるとか製造技術といった観点からも大変大きな意味のある日であったと考えております。引き続き経済産業省としては宇宙産業の裾野拡大に向けて、小型ロケットの事業の参画も含めて活性化の様々な取り組みを支援申し上げたいと思います。

・登壇者挨拶(谷)
 小型ロケットSS-520の5号機の打ち上げ実験に成功し、搭載していたTRICOM-1Rが所定の軌道に投入されたことは非常に喜ばしいことと思っております。とりわけ4号機の失敗を乗り越えて、その教訓を生かして今回成功に至ったという点について特に嬉しく思う次第であります。今回の実証実験にご尽力、またご支援をいただいた関係者の方々にこの場を借りて私どもからも厚く御礼申し上げたいと思います。とりわけ今回の打ち上げ実験の成功に向けて一丸となって取り組んだ関係者の方々には大いなる敬意を表したいと思います。文部科学省といたしまても、宇宙開発利用の拡大に向けて、市場競争力を有した民間主導の小型ロケットの開発が、非常に重要であると認識しています。引き続き着実に支援をさせていただきたいと考えています。

・質疑応答
鹿児島テレビ・1年前のことがあって今日ということで、あらためて成功と判ったときの気持ちをお願いします。
羽生・月並みなんですが、とても嬉しかったです。やはり物作り・難しいという事はよくわかりましたけども、こういった計画をしっかり進めていくという事においては、我々研究所としての立場としても非常に重要な仕事であると認識しておりました。こういった仕事で成果が得られたということ、そして今回の研究で重要であった民生部品を実装した実証ができたという事が、この先にも繋げられたということで、嬉しいとともにほっとしました。

読売新聞・国内でミニロケットの開発が徐々に進んでいる状況だが、今回の成功がそういったミニロケットの開発にどのような影響を与えるか。また、今回の実験で得られた成果をどのように生かしていきたいのか、民間への技術移転を進めていくのか。
田・冒頭申し上げた点とも関係するのですが、これから小型衛星の打ち上げ需要は世界的に大きく増えてゆくと思います。そして小型衛星の打ち上げにあたっては小型ロケットの打ち上げというのが非常に重要になっております。世界でも小型ロケットの打ち上げを進めている何社かおられる訳ですけども、そのうち例えば今回のプロジェクトであるとか、北海道の方でもインターステラテクノロジーさんとかも実証されていますけども、非常に大きな世界の潮流の中で一翼を担っている状況でございます。そういった中で今回の民生品とか民生技術を取り入れた打ち上げ実証が成功したということは、日本の小型ロケット事業者の更なる事業化の強化に繋がってゆくものと考えております。とりわけ技術移転といった関係では、特に今回参画されている企業様とかおられますので、その企業様も含め、そしてJAXA様も含め、その成果を産業界での具体的な事業化といった形に生かしていただきたいと経済産業省としては考えております。

NHK・今の質問を羽生先生にもお願いします。今回の打ち上げにどういった意義があったのか。
羽生・この実験の目的そのものだと思います。この日本で製造されている民生部品、こういったものを宇宙技術に転用していくという新しい取り組みでありまして、これがしっかり使えますと、1年遅れでありましたけれども、こうやって示せることができたことは、我が国にとって大事なことだと思っております。

NHK・前回1年前の4号機の失敗を乗り越えられたお気持ちと、今回の成功についてお伺いしたい。
羽生・この実験の意義を強く感じておりましたので、これでくじけてはいけないと思いました。併せて必ず実証してみせるという強い思いでこの1年やってきました。結果が示せたということで、この実験としては良い成果が得られて大変良かったと思っています。

NVS・TRICOM-1Rが投入された軌道はどのあたりか。
中須賀・実はまだ軌道が明確では無くて、いまいろんな情報をとろうということで、衛星のGPSがもう少ししないとONにならないので、これが動き始めたらとれる。後はアメリカのNORADのTLEという一般的に全ての(軌道上の)物体について出される情報を待っている状況。それを待ってから正確な情報が出せると思いますが、だいたい予定された軌道とほぼ一緒、ちょっと高いくらいかなということで、この辺の詳細がわかりましたらご報告できると思います。

日刊工業新聞・今回の実験の成功は、今後のJAXAのロケット開発のどういったところに繋がるのか。
羽生・まず今回ロケットに実装して使用可能であることは証明できたと思っています。今後については、今回の設計方針、あるいは考え方といったものを、より幅広く使えるような形に考えていく必要があると思います。今直ちにあれに使えるこれに使えるというような話ではありませんけれども、新しい方向性を見出すことが出来たという意味ではJAXAとして大変価値のあることだと思っています。

産経新聞・1年前に失敗してその後いろいろな検証なさって、その後考えられる対策を施した結果、今回成功にこぎ着けられた訳ですが、その一連のご経験を、水平展開という言葉がありますけれども、今後のJAXAの様々な組織に、体制の強化とか取り組みの強化とかそういったところにどう生かしていくのか。
稲谷・失敗からのリカバーという事では、原因究明の過程でいろいろな事が判った。民生品という、軍の規格でない厳しい環境で保証されたものではないものを使うとき、どういう保証で宇宙に飛ばして大丈夫という所についての検証が不十分であったために前回の失敗に結びついたと思っています。その後いろいろな検討であるとか改善をすることで今日に至りましたので、それについての新しい、民生品というのは超小型、超軽量、高性能というもので出来ています。それを我々がいかにうまく使いこなせるか、というところで身につけた知識は大きいのかな、という事を思っていることが一点。それから新しいことを試す、あるいは試みる、それから保証されていないけれどもやってみるというような事は、我々研究所として、目的は色々ありますけども、高機能なものを作る、低コストなものを作る、それはロケット・衛星・探査機にかかわらず必要なことだと思っていまして、そういう場所で大胆に新しいことをやるときに、やり方というものに繋がるのであれば今ここにあった事は非常にポジティブな使われ方をしていくことに繋がるのではないかと思っています。研究所として大胆なことをやるのを、失敗のためにしなくなるのではなくて、成功することでエンカレッジしていただけることのきっかけになれば、実験の成功は大きな成果を生んだと私はそんな風に考えたいと思っています。
羽生・稲谷先生の話の通りだと思っています。特に私達の世代がこういった新しいことに挑戦していく、そして成果を出すということは研究所として求められていることだと思っています。JAXAの中においても研究所が果たす役割があると思っていまして、こういった形で、まだやり方が決まってない事に対して新しい考え方を編み出して、それを実証していく、それを基礎として開発に繋げてゆく、そういった最初の取っ掛かりのところをしっかり成果を出していくということがやはり今後も大事だと思っているので、この挑戦を続けていきたいと思っています。

朝日新聞・今回の技術実証の成功を受けて、民間企業がどのように活用すれば、小型ロケットの打ち上げ市場の獲得に繋がるか。そのための具体的な支援があるか。
田・これから競争を増す小型ロケット打ち上げ事業の中では、やはりコストダウンが相当大きな鍵になると考えています。今回打ち上げたSS-520 5号機の中には様々な民生部品や民生技術が活用されていますので、それを事業化等に向けて企業様が工夫されて使っていただくことが非常に重要になってくると思います。また経済産業省としては今回の事業のみならず、引き続き必要な研究開発を進めていきたいと考えていますし、宇宙の分野、ベンチャーの方も含めて非常に活発な分野でございます。そのためには、例えばリスクマネーの供給であったり、ビジネスとして支援すべきいろんな所があろうかと思いますので、経済産業省として引き続き進めていきたいと考えています。

ニッポン放送・昨年の失敗から1年ということで、その間成功に向けて念には念を入れたチェックをされたことだと存じますが、その中で作業面やメンタルの面で心を砕かれた部分はどういったことか。
羽生・この1年毎日、1日も欠かさずこのことだけ考えてやってきました。必ず成功させたいと強い思いでやってきました。その中で私だけではこういうことはできない訳で、大勢の関係者、JAXAの職員が一丸となって、これを必ず成功させると、強い思いでやってまいりました。特に、最初は、部品はそれぞれ各所でまとめて物を作っている訳ですけども、そのあと研究所に物が集結して総合試験をしていく中でいろいろ確認検討していく、そういった時にはそれぞれ担当している人達の様子・雰囲気、いろいろ感じながら、そのプロジェクトの進捗を進めていかなければならない。当然、無理をすればまた同じようなことが起きてしまう訳なので、必ず成功させるというときにどういった関係者と一体となって進められるかといったところも、このプロジェクトの難しさであり醍醐味でもあると思います。そういった皆さん関係者の苦労がこういった形で結実したということは大変良かったと思っているところであります。

共同通信・経済産業省から技術移転に対する期待が示されたが、JAXAとしても今回実証された技術を民間に移転することに前向きととらえて良いか。
稲谷・私が思いますのは、今、宇宙の仕事というのはアメリカを見てもそうですし、国が税金でやるという世界からどんどん変わってきているという状況がある中で、我々がもっているものがお役に立つのであれば、これは一般論ですけども、それがなんであれ世の中を前に進める役に立つべきである。今回は民間の方々がこういうことをやりたいという事があって、我々の観測ロケットというプラットフォームを使って、それの実証ができるのであれば大変面白いですねという事から話が始まり、経済産業省さんの競争的資金にこういうことをやろうと応募をさせていただいていただいたところ、その競争的資金を獲得することができたということでスタートした訳です。ですから民間の方に宇宙の仕事の活動が移っていくという、ゲームチェンジという言葉が適当かは判りませんが、アメリカなどではゲームチェンジという言葉がよく使われますけども、そういうことを起こすのに我々の持っているこういう観測ロケットというプラットフォームでありますとか、あるいはロケットの技術であるとか、もちろん衛星通信その他いろいろですけども、お役に立つのであれば何であれお役に立てていただきたい。たまたま国の競争資金を獲得することができて、ある種の三位一体のようなことがうまく機能した例としてこれが評価されるのであれば、我々の思うところに近いと思っています。技術移転という話になると知財とか権利とかそういう匂いがしてきますので、そこから我々は入っているのではなくて、それぞれの持っている役割なり能力をうまく相乗効果を出していくというか、そんなことがやり方としては良いのかなと考えているところです。

共同通信・関連して今回のSS-520にも部品を供給しているキヤノン電子は、他の3社と一緒に新しい会社を作って新しい形で小型のロケットを開発するという事だと思うが、そこにこの技術は生かされていくのか。
稲谷・そのことについては、やっておられる企業体で決められること。結果として今回の事がお役に立つのであればそれは大変良いことだとは思います。

共同通信・超小型衛星の使い方として、たとえば地球規模の温暖化の問題に関連した観測だとか、あるいは途上国に対するネットワークインフラ供給とか、いろいろやることはあると思うが、「たすき」を具体的にどう使っていきたいのか。
中須賀・まず3Uというキューブサットのサイズ、これは世界で物凄い数が作られていて、ただなかなかまだ完璧に動いていないのも沢山あって、特に発展途上国等におけるキャパシティビルディング支援という、いわゆる開発を協力しながら衛星を作っていくという、こういう支援に使われているが、なかなかそれが作った衛星が動かないという事も聞いています。そこをしっかりとした衛星を作って、僕らとしては3Uを確実に誰が作っても動くようなそういう風なものにして、これから宇宙をやろうという国々の教育支援のツールとして衛星を作っていこうと。ただ衛星を作るだけでは面白くないので、せっかく作るんだから、すべての教育支援の衛星に弱い電波を受け取るというストアアンドフォワードの機能をつけていけば、沢山衛星が打ち上げれば地上からの電波をより多くのチャンスで受け取ることができる。1日40分だけではなくて、24時間少なくとも何かの衛星が上を飛んでいるようなこんな状況を将来的には作りたい。そういうことで、教育支援と今言ったような国際貢献、そういったネットワーク化という事も含めてやっていきたいというのが僕らの希望です。さらにそこに何かカメラを載せたりということもこれから出てくるだろうから、そういったものが地球観測をするのにも繋がって、温暖化とかこういったもののセンサの載せてもいいわけですね。そういう形で、これをひとつのベースとしていろんな方向に広げていきたい、それの第一歩が今回築けたという訳で、それは我々としてはありがたいことです。

NHK・さきほど田室長の話にもあったが、先月にアメリカのベンチャーのロケットラボが超小型の衛星を積んだ小型ロケットの打ち上げに成功している。今の超小型衛星とそれを運ぶ小型ロケットの世界的な流れをどう感じているか、今後どうなっていくか。今回の打ち上げがそれにどんな位置づけと影響をもたらすのか。
羽生・ロケット側の目線で思いを述べさせていただきます。今、日本のロケットというのは大変信頼性の高い打ち上げ機として運用されているところです。皆さんの生活に役立つ様々なミッションをこなしている状況だと思います。一方で、例えば私達研究をやっている側にとっては、もう少し小ぶりなミッションもやってみたいという意見も多数あるわけです。そういった要望を受け取ることができるような、少し小ぶりでコストも今の運用されているものよりも少しリーズナブルなところで、そういったミッションが実行できるようになれば、学問的な知見も幅広く増えてくるということもあると思いますので、我々にとって知見が広がるいい未来が見えてくるのではないかと思ったりします。産業面でどうなっていくかについては、こういった企業戦略のようなものだと思いますので、私達から語るものではないと思いますけども、そういった私達がやりたいこと、企業の皆さんがやりたいこと、こういったところのアンドがとれるような形で新しいジャンルが広がっていくということが作り出せれば、広く国民の皆さんにも得るもの、あるいはこちらから沢山情報を差し上げることができるようになるのではないかと、そういった意味でもこういった活動をすることが大切だと考えております。

中須賀・衛星サイドから話をすると、ご案内のように超小型衛星が世界で物凄い勢いで作られていて、発展途上国という言い方は良くなくて、宇宙新興国という言い方にした方がいいかもしれませんけども、まだ衛星を持っていない国がどんどん衛星を持っていくときに、この超小型衛星からまずスタートしようと、こういった事が世界中に物凄い勢いで、ある種ゲームチェンジが起こっています。その中で衛星サイドから見たときに、大きな衛星の相乗りで打ち上げるとか、あるいは大きな衛星を丸買いしてそこに10機20機まとめて打ち上げることもいいのですが、例えばここに1機だけ打ち上げたいというのが必ず出てくる。それは例えばコンステレーション衛星の1機が壊れてそれをリプレースしたいとか、ここに1機打ち上げてさらに追加の機能をつけたいとか、こういったニーズは必ず出てくる。そのときに1機打ち、あるいは2〜3機打ちぐらいの小さいロケットは絶対に必要になってきます。これだけ衛星のビジネスとか利用が広がっている中で、もちろん全部の企業が生き残るとは限りません。ベンチャー会社ですね。強い企業は必ず生き残ってゆく。そういった企業の人達は次のニーズとしては1機打ちをするロケットなんですね。だからこのロケットを世界中でこれから競争のように開発が進んでいくだろう、さっきおっしゃったロケットラボ、日本でも起こってます。だからそういった中で日本が小さなロケットで強いなというところをぜひ見せていただきたい。それに向けての第一歩が今日築けたのではないかと私は考えています。

NHK・ロケット側としてもミニロケットはますます必要になると考えているのか。
羽生・はい、ぜひ作っていけたらと思います。あったらいいなという事で、こういった活動に取り組んできたという思いです。
中須賀・補足すると小さな衛星1つのメリットは挑戦的なことがどんどんできる。何百億円とか何十億円の衛星だとそこでなかなか挑戦的なことは出来ないけど、もちろん失敗は嫌だけれども、多少失敗の許容度が増えることを利用して、どんどんそこで新しい技術を作ってゆく、こういったところに超小型衛星が使われる。小さなロケットは超小型衛星用というだけではなく、ロケット技術もどんどん試していけばいいと思っています。それで伸びていった技術が、今度は多少大きなロケットにも使われてゆくという、こういう世界がロケットの中でも行われていけばいい。そういう場がないと伸びないのです。いきなり絶対成功しなければいけない高いロケットだけだと駄目なんです。そういう意味でこの小さなロケットを技術開発にもどんどん使っていただきたいなと考えています。

不明・今回の打ち上げ日が2月3日の午後2時3分ということで、2323というのは何か縁起をかついだ事はあったのか。
羽生・ご質問ありがとうございます。たまたまなんですね。たまたまなんですが、きっとそういう質問をしていただけるのではないかと私も密かに思っていました。打ち上げ条件を決めていく様々な要素のANDをとりまして、偶然なんですが2月3日の2時3分という事になりました。

不明・打ち上げの良い結果も生まれて、偶然とはいえいい関係があったかと思いますか。
羽生・とても良かったのは皆さんに覚えていただける記憶に残る日時だったと思います。
稲谷・今気初めて付きました。

日経新聞・実際に打ち上げに成功したと判断した過程を詳しく。もともとは衛星が一周して電波を受けて判断したとのことだが、受信が何時頃で判断にどれくらいの時間がかかって、どういった根拠なのか。
中須賀・衛星の観点から言うと、衛星が軌道上に上がっているかというのは最低1周しないと駄目です。1周しないと衛星とも言えない。1回目の電機大でとれたときは、これはまだ宇宙に行かなくてもとれるため、これだけでは判断できない。2回目ですね、予想された軌道で地上局が待ってとれれば、ほぼもともと予想された軌道に入っているだろうと判断できる。それで2回目のときには、15時57分に入感しました。これは内之浦局と電機大局の両方です。そこで待ち受けていた軌道というのが、もともと予想された軌道と、そのあとレーダーのトラッキングで修正した軌道とのちょうど間くらいだった。という事で確実に1周していることがわかり、さらに宇宙に届いて衛星になっていることがわかった。僕らとしては予想された軌道とほぼ同じアンテナ角でとれたということをもって、宇宙に行ったと判断したところでございます。
稲谷・ロケット側はご案内の通り、非常に小さなロケットに最低限の誘導機能をつけて衛星を打ち上げる。通信手段も、大きなロケットのように格段に通信装置を持つことができませんので、非常に限られた計測通信能力の中でデータをとっていくことでやりました。1段目2段目まではこちら地上から追跡ができますが、3段目に通信機能をつけますと衛星を打ち上げる能力が足りなくなってしまう。非常に小さなロケットであるが故に限られた通信機能で打ち上げないといけない。試みとして3段と衛星の追跡というのを、非常に相手が小さいので、一次レーダと申しまして電波を出して反射してくるのを捕まえようと試みました。これは非常に苦しいだろうと判っていましたが、前半の部分が捕まえることができて3段に点火して加速しているというところまで判りました。あと衛星が予定の時刻に近い所で受信された、そのことから総合して所定の軌道に近いところに入っただろうということであります。その辺のところを集めるのを三々五々やっていきまして、どれが正しい、どれが間違っているというような議論を経た上で、ここで発表できるような状態になった。どの辺で確信したかという質問には、打ち上げて300秒くらいで通信が途絶える訳で、向こうに行ってしまいますので、そのあと1周回ってきて入るまでいろんな事を考えて、入ってきた、それでやっと確信した。概ねうまくいってるであろうという思いで待ってはいましたけれど、衛星が予定時刻に近い所で入ってきて確信に変わった。それでデータの中身を見たら、中須賀先生がおっしゃったように健全であると返ってきました。そこで、うまくいきましたというご報告をするということで決めました。

日経新聞・JAXAとして正確に成功を判断した時刻は特に決めていないのか。
稲谷・人によるかもしれないので。間違ったことを出す訳にいきませんし、確認するという意味で慎重になりましたので、今の1周の衛星入感、そこで大丈夫という確信を得ましたので良い発表にしようと決めました。もちろんそうなるだろうと待っていました。

日経新聞・今回の成功を受けて今後民間なり事業化なりの動きがあるとして、今後JAXAが民間に対してどのような姿勢で関わっていくのが良いか。今回は技術的な実証の手伝いという立場だったと思うが、今後収益も含めて事業化を目指していく企業に対して、どこまでタッチしていくか。
稲谷・そのことはそういう方が決めるべきかと思います。さきほど一般論で申しました通り、我々のこういう実験プラットフォーム、小さなロケットを打ったりする実験場所、それからJAXAの中の宇宙科学研究所として、いろいろ推進とかロケットとか飛翔体とか研究している人達がいますので、そういう研究能力がお役に立つのであれば、これは本来の我々の役目だと思っております。事業そのものは民間の方が民間のご意思でやられる事だと思いますので、それそのものと我々の能力を使っていただくということは、良い補完関係になれば良いなとさきほど申し上げた通り。一般論ですがそういう申し方で許していただきたい。

ライター林・冒頭で物作りが難しいと思ったという発言があったかと思いますが、4号機のご経験も含めて、どんな点が難しいと思われたのか。また、今回のロケットでは民生部品とか民生技術を使われたという話がありますが、個人的感触でいいので、今回のロケットにこの民生技術・民生部品を使ったのは物凄いチャレンジであるとか、今後ロケットの低コスト化に意義が大きいという感触がありましたらお伺いしたい。それから今回のロケットは衛星の軌道投入に成功した世界最小のロケットと言って良いか。

羽生・難しかった点ですが、やはりロケットだなと思います。非常に速い速度で空気のあるところから空気の無いところに飛んで行く訳ですので、わかっているようでわかっていない所が当然ある訳ですね。そこを様々いろんな予測解析そういったものを駆使して、それと実際目の前にあるものとの組み合わせでロケットが出来てゆく。こういったところがやはりロケットの難しさなのかなと思います。民生部品の適用なんですけども、私は特に違和感は無く、この民生部品を適用することについては取り組めたと思っています。それくらい日本の産業技術は優れているんだと、私はひとりの日本人としてそう思っていたので、それを使っていくということはごくごく自然な事であってよいと思っていました。宇宙に持っていって大丈夫か、と思うのは、もちろん沢山いらっしゃると思うのですけども、やってみるということだと、それがこの研究の意義だと思っていました。ですので、こういった様々な部品が使われていますけども、例えば電線のコネクタ部分なんていうのは樹脂製の小型の物を使ってみたりとか、今までの設計基準に照らすとなかなか使いにくいような部品であったと思いますけど、それがどういう理由で適用可能かという事を考えて設計し、試作し、評価をするというところは、難しくもあり研究をやる側としてはとても楽しかった部分で、こういった事が研究でやらせていただけるという事自体が、非常に興味深い点が多かったと思います。結果として実装した物が正常に機能したことも大変良かったと思っています。
 このロケットが小さいというのは確かに小さいと思います。これ以上小さいロケットを作って衛星軌道投入をやってくださいと言われたら、なかなかやれますとは言えないなと思うぐらい、このロケットは小さかったと思います。ですが、軌道投入するという意味で小さいロケットの下限値がこのあたりにあると、世界最小かよりも、この3キログラムの衛星を軌道投入することにおいて、このロケットは物凄い小さくて、ここを踏み抜くとなかなか軌道投入はできないのではないかなと、設計の考え方では別の解があるかもしれませんけども、今回の機体のコンフィグレーションから考えますと、とても小さいロケットであることは確かだと思います。

朝日新聞・今回の民生部品とは、どういった定義で「民生部品」なのか。
羽生・通常は宇宙用の部品というのがある基準で選ばれている訳なんですけども、私達が今考えている民生部品というのは、一般に産業で幅広く使われている量産品を指しています。それを宇宙機器に実装するということで今回新たな設計基準を考えて物を作りました。大量に出回っている、たとえば自動車用だとか家電製品用だとかという形で流通しているものを、ある指標をもってこれが使えるという判断をして実装していると、そういう考え方で進めてまいりました。

朝日新聞・こういった民生部品をロケットに活用するのはJAXA内では初めてか。
羽生・必ずしも、民生部品が全く違うジャンルのものかというと、選び方の問題ですね。もちろんこの部品が宇宙用しか使われていないという事は必ずしも限定的ではないと思います。使い方によると思います。

朝日新聞・民生部品を使って成功できたことで、次に繋げられるとおっしゃっていたが、具体的な次というものはどういったものになるか。
羽生・私達は常に先を見据えながら研究をやっていますので、具体性はありませんけれども、次の将来に向けて新しい設計の考え方がひとつ形になった、そういう考え方であります。

フリーランス大塚・キヤノン電子さんの名前が出ていたが、4号機のときは共同研究先は言えないという話だったが、成功して言えるようになったのか。
羽生・アビオニクスについてはキヤノン電子さんにご協力いただいています。

フリーランス大塚・今回即時観測ミッションが追加されて面白いが、分離後いきなり撮影して最初のパスで送るというのはどういう狙いなのか。
中須賀・例えば災害が起こったときに、その地域をとにかく早く見なければいけない。衛星の大きな問題点は1機か2機しか軌道上になければ、何か起こったときにその上に来るまでに時間がかかって、下手すると1日後2日後という話になってしまう。それを防ぐためには、何かが起こったときにその上を通過する衛星を打ち上げる。とにかく早く写真を撮って降ろしてくるという、まさにクイックに情報をとらなければいけないというニーズに合った衛星を研究開発しなければいけないというのが世の中にはあると思います。それに応えるためのひとつの実験だとお考えいただければと思います。

フリーランス大塚・その画像はまだ降りてこないのか。
中須賀・まだです。自律機能の実験は動いていると確認されたが、パスの時間が無くて降りませんでしたが、これから降ろしていく予定です。

フリーランス・大塚・前回のTRICOM-1と同型だと思うが、ハードウェアも同じか。バックアップがあったのか。
中須賀・ハードウェアは殆ど一緒です。もういちどゼロから作りましたが設計的には踏襲しています。細かいところでは微修正は加えて、より使いやすい形にはしました。ソフトはより使いやすい形にしました。それから即時観測のミッションを入れたのはソフトの変更点ですね。
(※追記:衛星にカメラがひとつ追加されている。前回サブカメラ4台 → 今回サブカメラ5台)

南日本新聞・言葉の確認で、今回得られた民生品の技術を、JAXAとして広く一般に興味のある企業に提供していくという表現よりも、さきほどの共同研究先と結果を共有してゆくという方が正確なのか。
羽生・個別に共有するというよりも、まず考え方ですね。JAXAとしては新たな取り組みとして民生部品を使った場合の物作りというもので、今までに無い設計基準を考えてきたという意味では、特定の企業の方だけではなく、こういう考え方でやっていましたということは、そんなに沢山話せるかどうかまだわからないですが、そういった趣旨になると思います。

南日本新聞・ノウハウを民間に提供していくという表現で差し支えないか。
羽生・提供まではまだはっきり申し上げられないが、こういう取り組みであったということについて、何らかのお話ができれば。今現在まだ頭が整理できていなくて申し訳ありません。個人的にはですが、こういった研究というのは広く皆さんに活用していただきたいという思いでやっていますので、可能な限り情報提供させていただけたら、我が国の皆さんにとってプラスなんだと思っています。

南日本新聞・超小型衛星の需要が広まる中で、SS-520を使って需要を取り込む訳ではないということか。
羽生・今回実験をやるにあたって宇宙科学研究所で従来から運用しています観測ロケットを使うことがそもそも出発点でありまして、それから先はそういった目的に適したロケットを使っていただいた方がいいのではないかと思います。

以上です。


No.2150 :SS-520 5号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2018年2月3日(土)14時34分 投稿者 柴田孔明

SS-520 5号機は2018年2月3日14時03分の定刻に打ち上げられました。
2段モータの点火も行われています。


No.2149 :SS-520-5号機の2段目付近 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年2月2日(金)22時36分 投稿者 柴田孔明

今回のSS-520 5号機は、前回SS-520 4号機で問題が出たと考えられる部分に対策が施されています。
それらは主に2段目付近(茶色いカバーの辺り。カバーは地上用で飛行前に外します)となっています。


No.2148 :SS-520-5号機 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年2月2日(金)22時31分 投稿者 柴田孔明

公開されたSS-520 5号機。
打ち上げに使うランチャにセットされています。


No.2147 :SS-520-5号機の概要説明 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年2月2日(金)22時30分 投稿者 柴田孔明

 2018年2月2日、内之浦宇宙空間観測所にてSS-520 5号機の報道向け機体公開と概要説明が行われました。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
JAXA 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授 SS-520 5号機プロジェクトマネージャ 羽生 宏人

(以下、概要説明と配付資料等から抜粋)

・SS-520 5号機の実験について
 ・実施日:2018年2月3日
 ・実施時刻:14時03分(JST)
 ・実施時間帯:14時03分〜14時13分(JST)
 ・予備期間:2018年2月4日〜2018年2月12日
 (※当初の予定では2017年12月28日だったが、搭載部品の不具合により延期されていた)

・SS-520 5号機のフライトシーケンス
 ・打ち上げ後67秒:ノーズコーン分離
 ・同68秒:1段モータ分離 (スピンアップ)
 ・同70.5秒:ラムライン制御開始
 ・同147秒:ラムライン制御部分離
 ・同180秒:2段モータ点火
 ・同235秒:2段モータ分離
 ・同238秒:3段モータ点火
 ・同450秒:衛星分離

・SS-520 5号機の諸元
 ・全長: 9.54 m
 ・直径: 0.52 m(代表径)
 ・全備重量: 2.6 ton
 ・燃料、段構成: 固体燃料3段式
 ・打ち上げ能力: 低軌道に4 kg以上(地球表面からの高度が2000 km以下の軌道)
 ・打ち上げ場所: 内之浦宇宙空間観測所
 ・打ち上げ方式: ランチャ滑走方式(吊り下げ式)
 ※S-520 5号機は技術実証目的の打ち上げのため、シリーズ化の予定はない。

・打ち上げ時の気象制約条件について
 ・風について
  1.発射時において制限風速以下であること。
   ※制限風速:15 m/s(最大瞬間風速)
  2.地上から高層までの風データを元に算出したフェアリング、第1段機体、ラムライン制御部の落下点が、落下予想区域内であること。
 ・雨について
  1.発射時において、降雨・降氷がないこと。
 ・雷について
  ・発射前及び飛行中において機体が空中放電(雷)を受けないこと
   1.射点を中心として半径10 km以内に雷雲のないこと。
   2.飛行経路から20 km以内に発雷が検知された場合には、検知後30分間は発射を行わないこと。ただし、発射時に飛行経路から20 km内に雷雲、積雲雲等がない場合はこの限りではない。
   3.飛行経路が雷雲や積乱雲、氷結層を含み厚さが1.8 km以上の雲を通過する場合には発射を行わないこと。

・SS-520 5号機実験の目的
 ・SS-520 5号機実験は、SS-520 4号機での実験失敗の原因対策を施し、当初の目的である超小型衛星打ち上げ機に係る技術実証の再実験として行う。
 ・ロケットはJAXAが観測ロケット技術をもとに改修、超小型衛星(TRICOM-1R)は東京大学が開発。
 ・本実験は経済産業省 平成27年度宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業(民生品を活用した宇宙機器の軌道上実証)の採択を受けて実施。

・SS-520 4号機で発生した不具合の対策
 ・ダクト引き出し孔部でのハーネス保護(引出孔部のハーネス振動防止)。
 ・ケーブルダクト本体の耐環境性向上。
 ・28V電源系電源喪失の防止。

・SS-520 5号機の射場整備作業において判明した搭載部品一部の不具合と対策
 ・2017年12月より実施していた内之浦での射場作業において、第2段の姿勢コントロール装置(ラムライン制御部)窒素タンク圧力センサの数値の異常が判明した。
 ・12月25日より射場作業を中断し、機体の一部を工場に持ち帰って不具合原因の調査を実施。
 ・圧力センサの故障が原因と特定した。
 ・予備品に対して改めてスクリーニングを実施し、部品交換の処置を行った。

・超小型衛星TRICOM−1Rについて。
(※基本的にTRICOM-1と同じだが、即時観測ミッションが追加されている)
 ・衛星開発:東京大学
・衛星の重量:約 3 kg
 ・寸法:116 mm×116 mm×346 mm(アンテナ格納時)
 ・投入予定軌道:地球との近地点約180 km×遠地点約1,500 kmの楕円軌道
 ・投入予定軌道傾斜角:約31度
 ・姿勢制御:磁気センサ・磁気トルカによる回転抑制
 ・バスを除く搭載機器:
  ・Store and Forwardミッション機器
  ・地球撮像用カメラ
 ・ミッション
 1.Store and Forwardミッション:地球を周回しながら地上端末から送信されたデータを収集し、地上局の指示でデータを転送する。
 2.地球撮像ミッション:メインカメラ1台とサブカメラ5台を搭載し、初期運用時や地球指向制御が不安定な状態でも撮影を行う。
 3.即時観測ミッション(今回追加):ロケットの打ち上げ・分離後、地上と通信ができる前に、衛星は自律的に地上の観測を行う。地上との最初の通信可能タイミングで、観測データをダウンリンクする。


・質疑応答
読売新聞・大型ロケットと比較して費用はどれくらい抑えられているのか。
羽生・規模としては、およそ5億円規模で実施されている。ひとつ桁が小さい感覚です。

読売新聞・ミニロケットで超小型衛星を打ち上げるメリットは何か。また、この打ち上げ技術を今後どうしていくか。
羽生・小さい規模をやっていくと実行規模が小さくなることで、費用を抑えることであれば、その先の打ち上げ頻度を増やすなど、チャンスを増やすことに繋がっていくことが期待されます。こういった宇宙を使っていくことについて、より機会を増やしていきたいという思いがあります。今回、こういった技術実証を行うということで、単に小さくすれば安くなるかというと、必ずしもそれは言い切れないと思います。それに適用する周辺技術ですとか搭載技術というものを民生品と呼ばれる入手しやすい、あるいは産業に幅広く適用されているものを利用していくことの組み合わせで、より打ち上げ費用ですとか衛星の開発費用ですとかそういったものを抑えることで、より宇宙を利用しやすくしてゆく。今はこういった民生部品を使うことの知見は沢山無いと思いますので、今回の実験を通じて、そういった知見を蓄えてゆく。そして今回実験をすることによって、さまざま設計に反映した考え方、こういったものが発展的に生かせていければ、この分野としても将来様々な方向で使われていくのではないか、という事を期待して実行するものであります。

東京とびもの学会・今回のロケット実験をシリーズ化する予定はないとのことだが、大学からオファーがあれば拒否するものではないということか。
羽生・ぜひやっていきたいと思いますけども、まずこれをしっかり成功させないと次が続かないと思います。まず目前に打ち上げをひかえているこれを成功させたいと思います。そこで得られた成果が、何らかの形で公表できる範囲で公表した結果、そういった要望なりご意見があればまた検討することがあるかもしれない。今はシリーズ化の予定は無いということです。

産経新聞・4号機の不具合の原因で、推定とか可能性とあるが特定は難しいのか。対策はやり尽くしたということでいいのか。成功の自信の程を伺いたい。
羽生・推定と申し上げているのは現物を確認した訳ではないというところがありますので、取得された情報とか物作りの過程の理解に基づいて絞り込まれた推定原因であるということです。もちろん実験に使ったものを回収できて見ることができたら特定できたと思うが、そういった事はできなかったので、こういった事象が起きるのはこういった部位でしかないということで、おおよそここが濃厚だと考えているが、特定できたという状況ではなかったと思います。ですが、直面した事象から非常に濃厚だったと思います。そういった不具合の原因とされるいくつかの部位については、しっかり見直しを行って、それ以外でも開発の過程でもう少し工夫しておく必要があると思われる部位についても見直しを図るなどして、せっかくもう一度やらせていただくので、最後までもう一度見直しを行って、設計としてはより良いものになっていると思います。そういった意味で今回、昨年の実験がうまくいかなかった後に、その推定原因を抽出して、そういった事が起きない設計はどうあるべきかしっかり検討しました。それに基づいて、さまざまな試験をやってきました。その中でひとつひとつ確認をして慎重に前進をしてきたと思っていまして、今日いろいろリハーサルをやってきていますけども機体・地上系共に異常はないと思っていますので、今出来上がっているロケットについては、しっかりしたものが出来ていると考えています。

産経新聞・昨年、民生品は原因ではないということだったが、今もその認識であるのか。
羽生・その通りです。

鹿児島テレビ・ちょうど1年前だが、この1年間はどんな気持ちで準備を進められたか。
羽生・非常に悔しい思いをした訳です。しっかり物を作ってきたと思いながら実験に臨んだのですが、思いがけない結果になってしまった。もう一度実験ができるという機会がいただけたということもありましたので、より慎重に、より確実にということで、もちろん設計面、あるいは試作試験、そういったものをひとつひとつ積み重ねて物を作ってきた。もちろんその悔しさはずっと持ち続けてきたが、そういった経験も大いに生かして、より着実に、より慎重にということで今日を迎えていると思います。

フリーランス大塚・いろいろな対策で重量が増えていると思うが、それはどこかで軽量して相殺したのか、あるいは能力を上げたのか。
羽生・大きく物が増えた訳ではありません。多少、たとえば2段横の電線に熱対策などで強化している部分がありますので、そういった部分の質量は増えています。しかしロケットとしては、対策した部位がそのまま打ち上げ能力を減らすという訳ではありませんので、増えた部分と元々持っていたマージンといったもので相殺することで、能力としては落とすことなく十分な対策ができる。こういった小型・超小型のロケットを考える上ではとても大事なところと考えています。

フリー大塚・前回は朝8時半の打ち上げだったが、今回は14時3分になった。打ち上げ時刻を決めた理由は何か。
羽生・搭載機器の中で、たとえば太陽の方向を検知する装置が搭載されていたり、第3段付近に通信衛星とやりとりをする機器を搭載していたり、そういったものの条件を組み立てて、その日の時刻というのが決まってまいりまして、さらに季節柄、より良い天気、風条件を選ぶということで、打ち上げ時刻というものが変わってきます。今回はそういった様々な要求を包絡する適切な時間を選定するということで、前回と違う時刻になっています。

以上です。