宇宙作家クラブ
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No.2325 :H-IIAロケット41号機の打ち上げ日について
投稿日 2020年1月25日(土)13時45分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット41号機の打ち上げ予定日時は2020年1月28日10時34分〜10時39分(JST)となりました。当初予定の2020年1月27日は天候(氷結層など)により条件を満たさないとのことです。

No.2324 :UMS動作状況連続写真 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年1月14日(火)12時41分 投稿者 柴田孔明

JAXA提供のUMS動作状況連続写真の1と2です。打ち上げ後に下からペイロード部を見上げているもので、脚部が動いているのがわかります。


No.2323 :JAXA提供画像3 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年1月14日(火)08時29分 投稿者 柴田孔明

JAXA提供のS-310-45号機飛行中の画像です。
ロケット側の伸展型全方位カメラ撮影画像です。


No.2322 :JAXA提供画像2 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年1月14日(火)08時27分 投稿者 柴田孔明

JAXA提供のS-310-45号機打ち上げ時の画像です。
第5光学方向からは夕日の中での打ち上げですね。


No.2321 :JAXA提供画像1 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年1月14日(火)08時25分 投稿者 柴田孔明

JAXA提供のS-310-45号機打ち上げ時の画像です。


No.2320 :ランチャへの取り付け金具 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年1月13日(月)01時02分 投稿者 柴田孔明

質疑応答で空気抵抗が大きかったのではと言われている部分。旧型ランチャでは取り付け部分のみだったが、新型ランチャではバランスのため両側に装着されている。


No.2319 :S-310-45号機実験結果 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年1月13日(月)00時57分 投稿者 柴田孔明

 観測ロケットS-310-45号機が2020年1月9日17時00分(JST)に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。同日20時より、内之浦宇宙空間観測所の計器センター記者会見室で報道向けに実験結果の報告が行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
 JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授 観測ロケット実験グループ グループ長 羽生 宏人
 JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 助教 福島 洋介
 JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 助教 三田 信

・打ち上げ結果について(発表文)
 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2020年(令和2年)1月9日(木)、「高精度ペイロード部姿勢制御技術(慣性プラットフォーム)」と「ロケットから離れた位置のその場観測技術(小型プローブバス技術)」の実証実験を目的とした観測ロケットS-310-45号機を内之浦宇宙空間観測所から打ち上げました。
 ロケットは正常に飛翔し、内之浦南東海上に落下致しました。

・ロケットの飛翔結果(羽生)
 S-310-45号機は本日17時00分00秒に発射致しました。発射上下角は75.5度、最高到達高度は131 kmで、打ち上げ178秒後になりました。着水時刻は発射後352秒という事になっています。
 本日の打ち上げ時の天候は晴れ、南西の風2.0m/秒、気温12.9度Cでした。
 本日正常に、かつ安全に実行できました。関係機関の皆様には、ご協力頂きましてありがとうございました。

・高精度ペイロード部姿勢制御技術(慣性プラットフォーム)の結果について(福島)
 UMSはロケット本体の姿勢制御を行うのではなくて、ペイロードの部分だけをロケットに対して姿勢制御を行って、結果的にロケット全体に姿勢制御を行わなくてもペイロード部だけが姿勢制御を行われたかのように見せかけるための追加の装置を表しています。
 目標として、非常に貧弱に見える慣性プラットフォームをミニチュアにしたものがロケットの加速度や振動に耐えるのかといったことと、その振動に耐えるために厳重にロックしたものが宇宙に行ったあとに外れるのかという事をひとつの試験目標にしています。

 ・UMSの結果(速報)
  ・打ち上げ後にロンチロック解除ができたか→YES
   (※テレメトリと画像で確認)
  ・ロックを解除された慣性プラットフォームが所定の動きを実現できたか→YES
   (※データ等で確認)
  ・どの程度実現できたか→概ね(詳細はこれから)

 ・このあとの解析作業
  ・畳み込まれた「詳細データ」を取り出す。
   ・圧縮データの展開、データからのノイズ等の除去。

  ・より詳細な「慣性プラットフォーム」の実現度合いを確認する
   ・機上でのデータ処理(画像計測による動き)結果の確認
   ・地上計算機でより詳細なデータ処理を行い、機上と比較

・小型プローブバス技術の結果について(三田)
 ・分離したプローブが撮影した画像(※地球と宇宙空間)
 ・機体に設置された伸展型全方位カメラによる撮影(※ロケットと地球と宇宙空間)
 ※ロンチロックが機能して打ち上げの振動に耐え、打ち上げ後にロンチロックが解除されないと写真が撮れないため解除がされ、データを地上に送っているということで、やるべきことは出来ている。

・質疑応答
読売新聞・観測ロケットの使い道を増やすための実証実験を2種類されたが、総括して実験結果はどういうものだったか、今後この結果がどんな風に活かしていけるのか。
羽生・観測ロケットの運用の観点も含めてお話させていただくと、小ぶりなロケットを実験に使っていくということで、比較的短期間で準備をしてこういう実験をやっていくということで、やはり観測ロケットは非常に使い勝手の良い宇宙実験機器だとあらためて認識した次第であります。今回搭載した大きく2種類の実験ですけども、幅広く様々な部品が世の中にあるものを選んで使ってみるといったことや、将来的に天文研究あるいは宇宙科学研究に必要なプラットフォーム的な機器を今回我々は自前で、研究者が自ら設計選択して搭載している。部品に対する好奇心もありますから、存分に知恵を使った機器開発ができた。それに必用なデータもとることができた。ということで、次に繋がる非常に良い結果が得られたという風に考えています。

NHK・予定していた機器の動作は正常に行われて、打ち上げは成功したということか。
羽生・はいそうです。

NHK・今年最初の打ち上げ、S-310に関しては4年ぶりの打ち上げということで、延期などもあったが打ち上げ全体を振り返っての感想。
羽生・準備は昨年暮れからこちら内之浦で進めてきてまして、工程は全て計画通り進めてきました。さすがに天候にはかなわないが、それ以外のことについては特段問題は無かったというのは、我々実行側として良い成果だったと考えています。昨日の天候は皆様も様々な観点で、これは難しかろうと思われたと思うのですけども、ああいった気象判断も含めて的確に計画に反映して、皆様への通知も含めて着実に着実に行うことができて、そして実行させていただいたことに関しましては良かったと思っていますし、また関係機関の皆様のご協力もあって実行できたことに関しての感謝もございます。大変良い仕事ができたという風に思っています。

NHK・今回得られたデータをどのように活かすのか。
羽生・発射の様子をご覧になっていたかと思うが、非常に初速の大きいロケットでして、加速も大きく、搭載機器への負担というのはやはり大きいものがあります。そういった中で今回の設計によって出来たものが、事前の設計確認などの評価が妥当であったことを飛翔結果と照らし合わせることにより確認できる。ミニチュアサイズと説明があった通り、今後もう少し大きくするとか機能を増やすことに対して、基本的な結果が得られているということが、今回の実験結果としての大きな成果であると認識しています。

南日本新聞・最高131 kmが到達点ということだが、(S-310は)140 kmから150 kmの能力があると思うが推力に問題は無かったのか。着水は直線距離で何キロ先か。
羽生・発射及び飛翔に関しては特段問題はありませんでした。最高到達点が予測より少し低めに出ているところに関しましては、今回のS-310-45号機の発射装置は前回と異なって新しく我々が運用を始めたもので、S-520とSS-520については使ってきているがS-310に関しては今回初めて運用させていただいています。この際、ロケットと発射装置を結合する金属部品のサイズが少し大きくなっているところがあり、いわゆる一般的に言うところの空気抵抗が少し大きいことがひとつ考えられるところかなと思っている。その飛翔経路と気象条件の関係については今回の結果を受けて少し検討したいという風に考えています。ただ飛翔中・落下中に関する安全上のところについては全く問題は無く、計画上の落下円の中にしっかり落下させていて、予想と一致するあたりに入っているので、ロケットとしては全く問題無い。水平距離は確認して後ほど回答致します。(※後述)

毎日新聞・UMSの結果で、打ち上げ後にロンチロック解除とあるが、どういう方法で解除するのか。
福島・脚が6本あり、小さく折りたたんでいる。なるべく小さく膨らまないように、1本のワイヤで引っ張り込んで動かないような仕組みになっている。宇宙に行ったらカッターでワイヤを切って6本の脚がバラバラに自由に動けるようにする。それぞれの脚を想定通りに動かすと、いろんな姿勢ができて慣性プラットフォームと言われている技術が適用できる。

毎日新聞・ワイヤを切る時間や高度は決まっているのか。
福島・打ち上げ何秒後に切るようにとコンピュータで決めている。

毎日新聞・予定通りだったのか。
福島・そうです。

毎日新聞・6本の脚を制御するということか。
福島・そうです。6本の脚をそれぞれ伸ばしたり膝を曲げたりということをすると、上のステージがいろんな方向を向くことができる。回転についてはまた別にステージの上に回るものがあって、それでぐるぐる回せる。かなり複雑な動きをしますので、それぞれ6本の脚が厳密に操作しないと精度が出ないが、今回は小さくして、なおかつ今回はミリ単位・0.1度単位で上のステージが位置を決められるということを立証できたと考えています。

毎日新聞・2個のプローブは、(ロケット)本体の振動とかノイズの影響を受けずにデータを収集して、ロケット本体を通じて地上に送って成功したということか。
三田・そうです。もともと電気的に繋がれていないので、電力の供給から通信まで全部無線で行うようになっています。最近の携帯電話の充電に使われているような、非接触の充電システムでして、ロケット側と線を繋がなくても受け取れる。通信も無線でできるので、物理的にも電気的にも分離されたものになっています。

毎日新聞・そのデータはより正確なデータとなるのか。
三田・今回の場合は実証実験でしたので、高感度のセンサは積んでいない。将来的には感度が高くてノイズに弱いような観測には重要な技術だと思っています。

鹿児島テレビ・S-310ロケットはどれくらいのスピードで上がるのか。
羽生・そういった数字で評価したことが無くて、今正しい数字は言えません。

鹿児島テレビ・この観測ロケットは何回連続して成功しているか。
羽生・このS-310は45機が全てうまくいっているはずです。

KYT・姿勢制御技術と、その場観測技術の実証実験は、全体的に成功と言えるが、一方で見えてきた課題はあるか。
福島・UMSに関して、今回は原理的な検証で、そういうものが出来るのかという事に関して、具体的に実施して数値を得ることを目的に掲げています。まだ詳細なデータは読み切れていないので半分くらいしか言えないが、うまくいっている。課題としては今はミニチュアでうまくいっているが、だんだん大きくしていくことを考えています。310から520にして直径がアップしたらどうなるのか。今回作った機構がどこまで耐えられるのかは別の話になってきます。関節やモーターといった設定が310では妥当だったが、それを実際に使うところでは、その設定が正しいかどうか、スケールを大きくしていったときにまた課題が出る可能性がある。どこまでも大きくできるはずなので、観測ロケットでないところまでいったら、今回使った機構は脚が6本あって膝が曲がる仕組みで、普通は棒が伸び縮みする機構を使うのが普通で、今回それが入らなかったので膝が曲がる仕組みにしたが、それがやっぱり棒の方がいいのか、そういったことを考えていくことが必要になる。そのままスケールアップしてうまくいくかというと、やはり実験をこなさないといけないと思っています。机上の空論からちゃんとした議論に持っていける話になったなと考えています。
三田・プローブに関して、今回は第一歩ということで、ロンチロックをして、なおかつ解除して、通信をしてデータをとるということを主眼においていましたので、制御というものが全く入っていない。そのため撮りたいところを撮ることができない状況が今の大きな課題であると思っています。将来的に決めたところを見たいとなった場合には、これに制御装置をつけて決められた方向を向くようにしたいと考えています。

NHK・落下したプローブは回収しないのか。
三田・これは回収しません。

NHK・レーザーで電力を送る実験は今回どうなったか。
三田・やっているが太陽光も入ってきているので、レーザーで発電しているのか太陽の光で発電しているのか分離する必用がある。レーザーは一定の間隔で点滅しているので、その点滅のタイミングと電力のタイミングが合っているか、あるいは姿勢によって太陽がこっちから来ているなどいろいろ検討して、実際に発電しているかを見なくてはならないので、クイックには出せない状況です。

NHK・将来的にはどういった利用が考えられるか。
三田・たくさんの衛星やプローブを並べて、それぞれに電力を供給しながらデータをとるようなことだが、なかなか難しい技術なのでちょっと先になるのではと考えています。

NHK・一般の見学も多かった。先日、肝付町は発射場をいかに活用して活性化するかという団体を作られたが、今後観測ロケットの活用の幅が広がるというか、打ち上げ機会を増やしたいとか、そういう思いはあるか。
羽生・皆さんに関心をもっていただけて大変嬉しく思っている。こういった地域の皆さんにもいろいろ貢献したいという思いがあります。また私自身がJAXAの前の宇宙科学研究所時代から、ここで育てていただいたようなものなので、もっともっと活用して、打ち上げ機会を増やして、皆さんにも楽しんでいただきたいと思っています。今年から来年に向けて準備を進めるのですけども、ますます活気が出るように、今回の結果を踏まえて幅広く実験をやっていきたいという風に考えています。実際今回のオペレーションをいろいろやっていく中で、JAXAの職員も別の部署から研修の形で入って、どういう風なことをやっているのかなどいろいろ見てもらう活動を含めて私達は取り組んでみましたので、今後そういった人材がまた新たな企画を立てて、有用な技術開発に繋がるような実験を実施する流れになってくると大変いいのかなと思っているところです。

南日本新聞・プローブのデータはパソコン等で表示できるものか。写真なのか動画なのか。
三田・簡単なデータに関してはほぼリアルタイムで地上で受けています。画像はいちどバラバラにして地上に送っているので組み立てる必要があるので時間がかかる。観測ロケットは送れるデータ量が少ないので動画はちょっと無理なので、画像を細切れにして、なるべく小さな容量で送るようにしています。なので動画を撮っていなくて、画像と物理的なセンサのデータを送っています。

南日本新聞・将来的にロケットから(プローブを)切り離して月や惑星などの映像を地上でリアルタイムに観測できるという理解で良いか。
三田・そういうことができたらいいなと思っています。

※水平距離について。
羽生・さきほど質問のあった水平距離は134 kmです。

※ぶら下がりにて。
・過去に姿勢制御をしつつ観測を行ったのはS-520-19号機(1995年)とのこと。

以上です。


No.2318 :観測ロケットS-310-45号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2020年1月9日(木)17時11分 投稿者 柴田孔明

2020年1月9日17時00分に打ち上げられた観測ロケットS-310-45号機


No.2317 :ロケット上部 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年1月7日(火)23時04分 投稿者 柴田孔明

実験機器が搭載されている部分。


No.2316 :S-310-45号機 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年1月7日(火)23時01分 投稿者 柴田孔明

公開されたS-310-45号機。


No.2315 :観測ロケットS-310-45の報道公開と概要説明 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年1月7日(火)22時59分 投稿者 柴田孔明

 2020年1月7日12時半より、観測ロケットS−310−45号機の機体公開と概要説明が内之浦宇宙空間観測所で行われました。なお当初は2020年1月8日に打ち上げ予定でしたが、その日は天候が打ち上げに適さないことから、翌1月9日に延期することが決定しています。打ち上げ時刻は17時00分(JST)で、打ち上げ可能時間帯は17時00分〜17時30分です。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
 JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授 観測ロケット実験グループ グループ長 羽生 宏人
 JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 助教 福島 洋介
 JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 助教 三田 信

・観測ロケットS−310−45号機実験の目的(羽生)
 ・観測ロケットのユーザーニーズに応えるための搭載部高機能化を目指した実証実験。
  1.高精度ペイロード部姿勢制御技術(慣性プラットフォーム)
  2.ロケットから離れた位置の、その場観測技術(小型プローブバス技術)

・慣性プラットフォーム(福島)
 ・UMSとは何か(※Upper Motion Stage)
  S−310−45−UMSは、観測ロケット搭載観測機器に対して、観測ロケットの姿勢制御能力が不足している状況を改善させるための追加装置である。
 ※昔は姿勢制御能力を十分備えた観測ロケットがあったが、最近のものは姿勢制御機能が不足している。そのため以前は天文観測が多かったが最近は高層大気の観測や材料の無重力環境を使った実験が多くなった。姿勢制御機能を強化するにはロケット全体を高機能化する方法があるが、クリアすべき課題が多い。しかし現状の観測ロケットは実績があり非常に良いものなので、ちょっとした工夫である程度の姿勢機能を持たせることができないかということで考えた機能を今回実験するもの。

 ・UMSの目的は何か
  ロケット全体の姿勢制御能力を強化するのではなく、観測装置設置台座にモーション・ステージ機能(6自由度運動動作が可能な台)を組み込み、このモーション・ステージによってロケット姿勢の乱れをキャンセルし、観測装置だけに「より高精度な姿勢制御状況」を提供すること。

 ・UMSによって可能になるのは何か
  1.近年JAXA観測ロケット実験では実施されていないタイプの天文観測装置。
  2.より低微小加速度擾乱(微小重力)環境を必用とする各種実験装置。
  3.観測方向を細かく指定する地球観測・高層大気プラズマ観測実験装置。

 UMSは、現状の観測ロケット本体を維持したままで従来は受け入れできなかった提案を呼び込み、観測ロケットを使った活動機会を研究者により多く提供することを可能とするための技術実験ミッションである。

 ・UMSの原理
  ・フライト・シミュレーターで利用されることが多いスチュワート・プラットフォームと同種の装置をモーションステージとして利用する。
  ・ロケットの動きと「逆」の動きをUMSで行い、UMS上の装置は「動きを感じない」ようにUMSの動作を制御する。
  ・このUMSは回転ヒンジのみで構成する「HEXA型マルチリンク」を観測ロケット用にミニチュア化して制作した。

 ・UMSの実験
  ・UMSの動作を計測するための加速度計やカメラをUMS上に搭載し、宇宙でUMSがどう動作したのかを地上で計測する。


・小型プローブバス技術(三田)

 ・研究の経緯
  ・観測ロケットへの新しい機能の要求
   >離れた位置からロケット全体を撮像してロケット及び観測機器の状況及び健全性を観測したい。
    ・ロケットの姿勢
    ・フェアリングの展開状況
    ・観測用機器の状況
     :アンテナなどの伸展物の状況
     :放出物の状況
    ・モーターの燃焼状況
   >ロケットの影響を受けずに観測したい。
    ・ロケットの震動
    ・ロケットが発するノイズ
  ※プラズマや電場、磁場、粒子観測においては、観測器の感度が上がるとノイズに大きな影響を受けてしまう。
   従前のロケット上ではいろいろな機器が動いていてノイズが大きい環境であり、観測感度を上げると、そのノイズに観測したい信号が埋もれてしまう。
 (※例としてジェットのバルブが動くと磁気的なノイズが出る)

 →これらの要求にこたえるため、ロケットから電気的にも機械的にも分離された観測用プローブを放出し、ロケットから離れた場所から観測を行う。

 ・分離プローブの動作概要
  ・ロケット打ち上げ後は、加速度などを測定し、ノーズコーン展開後プローブを固定していたロンチロックを解除しプローブをランチャー(分離機構)により放出する。
  ・放出されたプローブは2つのカメラと加速度計、ジャイロ、太陽電池などにより、撮影やデータ収集を行い、そのデータをロケット経由で地上に送る。
  ・外部からロケットを観察でき、またロケットから機械的にも電気的にも分離された状態でデータ収集することができる。
  ・追加実験として、レーザーによる電力伝送実験もあわせて行う。
  ・将来的には、従来観測が難しかった、低ノイズ・低振動で観測やロケット自体の健全性を外部から観測できるようになる。


・質疑応答
NHK・昨日延期が発表されたが、正式な打ち上げ日はいつごろ決まるのか、また今はどういった所を見ているのか。
羽生・今のところ9日以降の早い段階で実施したいと考えている。決定は本日中にしまして、皆様にお知らせする予定になっています。昨日から天候の状況を細かく見ていると、予定していた8日は午前中に雨があって、以降は風が少し強く、夕方にかけて安定しないという見通しがありましたために、8日の打ち上げは難しそうだということで、9日以降になってくると比較的安定となる日が続きそうだということがございましたので、8日の打ち上げはあきらめて9日以降の早い段階で実施したいということで判断している。
(※このあと15時に新たな打ち上げ日が9日17時と発表された)

NVS・打ち上げ日付が変わっても打ち上げ時刻は同じか。
羽生・はい17時ちょうどを目指しています。17時30分までは打ち上げが可能な時間帯となっています。

NHK・本日中ということで、いつ頃か。
羽生・15時までには発表できると思います。今は関係機関と調整している最中です。

不明・高精度ペイロード部姿勢制御技術で以前は天文観測が行われていたが、今は行えていないとのことだが、(今回の装置で)できるようになる天文観測は具体的に何か。
福島・天文観測にもたくさんあるが、その中で、打ち上がった後にじっとしていてくれとか、あるいはある方向に向けてくれというものとか、そういったものは事実上出来ないか難しいか、出来たとしても天文の人達が要求するものが達成できない状況にある。どういうものになるかというと、ある方向をじっと観測したい場合、例えば太陽の方向を観測したい場合に観測装置の視野が太陽の中心を向いて30秒間0.1度以下で保持したいという要求があった時に現状ではちょっとできません。この装置の実験がうまくいって大型化・高精度化できれば要望が叶えられる。今は具体的にそういった要求は来ていませんが過去の要求はそういったものでしたので、まずはその部分を準備してあげようと思っています。

不明・一点をじっと見るものは、今後私達の生活にどう役立つのか。
福島・サイエンス側の装置を作る方のもの。今は装置があっても日本でできないため、他に行ったり衛星に搭載したりすることになるが、観測ロケットでもいいとなれば呼び込める。その人達が何をやるかまでは今は見通せないが、今要望を受けても何も出来ない状況から、ある程度はできますよと受け入れることができるようになるところを狙っている。

不明・衛星に搭載するのと観測ロケットに搭載するのでは費用が変わるのか。
福島・全然違う。
羽生・我々の生活にどう役立てるかという観点で言いますと、衛星に乗せないと実証できませんということになってしまう。その開発のプロセスも困難になる。例えばセンサ開発を行うという時に、いちど実験的なことをやってセンサの有効性とか機能を確認する行為ができると、次の開発までのステップが少し縮まる。最初の段階を踏めることがすごく意義がある。だからお試しをしたいけれども凄く多額の資金がないと出来ませんというよりは、こういった観測ロケットの実験を通じて最初試してみてどれくらいいけるか確認できたら、次は何らかの人工衛星のセンサにしましょうとか、そういった事に役立てられる。そういった手前のところで、今回のようなプラットフォームがあると、そういった実験の足場として提供できる。そうすれば宇宙開発全体に対しての様々なスケジュールとか費用とか、そういったものを縮める効果に繋がっていく。より早く身近な装置として皆様の生活に役立てられる、そういった活動にも繋がっていく。それを学問的領域でやるのか、あるいは工学的・産業的なセンスでやるかは様々だと思います。

不明・観測ロケットの場合、資金はどれくらいか。
羽生・大きなロケットに比べれば二桁以上小さいかもしれない。

南日本新聞・飛ばす方向と到達点、観測するのは大気中かそうでないのか。落下点など。
羽生・東南の方向に向けて、到達高度はだいたい140から150キロの間くらいになるだろうと思っています。落下域は東南の海上に半径60kmを警戒区域に設定して、だいたい200km未満の距離に設定されています。

南日本新聞・2つのテーマがあるが、UMSにプローブが乗るのか。
福島・慣性プラットフォームに載せるものとプローブは別のものです。慣性プラットフォームの上に載せるものは、慣性プラットフォームの機能を確認する装置だけです。慣性プラットフォームに載せるものは、加速度計というロケットの動きに対して台が止まっていたかを確認するものと、それがどの方向を向いていたかを確認するためのカメラです。

その他ぶら下がりなどから
・UMSは5キログラムくらい。丈夫に作ってある。
・放出するプローブは2個。
・打ち上げ時に国道の通行規制は行われない見込み。

以上です。


No.2314 :H3ロケット用新型フェアリングの分離放てき試験の報道公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年1月1日(水)22時31分 投稿者 柴田孔明

 H3ロケットに使われる新型フェアリングの分離放てき試験の報道公開が2019年12月17日に川崎重工業株式会社の播磨工場で行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 プロジェクトマネージャ 奈良 登喜雄
川崎重工業株式会社 航空宇宙システムカンパニー 防衛宇宙プロジェクト本部 宇宙システム設計部 副部長 駒田 禎彦

・H3ロケット開発について(岡田) 
 H3プロジェクトはJAXAと関連の企業さん、特に三菱重工さんに取りまとめをしていただいていますけども、開発はもう八合目くらいにさしかかってきました。今日試験のあるフェアリングですけども、ロケットの顔だと思っています。その顔というのは2つの意味があって、1つはロケットで一番目立つところについている、まさに顔ですね。これまでのロケットとの違いというのは後で説明させていただこうと思いますけども、そこに大きな顔の違いがあります。もう一つはロケットは宇宙に物を運ぶ訳ですけども、そのお客さんにとっての顔です。カスタマーフロントです。つまり、ここに人工衛星が搭載されるので、いちばんお客さんに近いところのサブシステムということで、ロケットの顔という意味はその2つがあります。今日はそのようなフェアリングの分離放てき試験について皆さんに見ていただこうと思います。
 
 H3ロケット用の大型衛星フェアリングは世界でも最大級の人工衛星を搭載できるものを開発しています。その他に特徴的なのは新型の1段エンジンであるとか、固体ロケットブースターについても非常に簡素な分離機構でコアロケットと結合されて、見た目は(H-IIA/Bと)そう変わらないのですが、全体新しい技術を取り込んでいます。

 開発のスケジュールは佳境に入っています。(配付資料に)システム設計・試験とありますが、最初の3年から4年はずっと設計が続いていまして、どんなロケットにしていくか、三菱重工さんや各社さんといろんな議論を続けてきました。今は試験がどんどん続いています。この試験をしながらシステムを統合していくということで、このロケットの中を統合していっていますし、ロケットと地上設備も最終的には統合して、最後に2020年度には地上総合試験を経て試験機の打ち上げに臨むという状況でございます。

 ロケットの設計は日々変化を続けている部分もあります。それは試験をしながら設計にフィードバックをかけるところもあります。これは設計を最新の状態で維持をしています。これはロケット開発はかなり多岐にわたっていて、非常に速い速度で仕上がっていくものと、慎重に進めているものと、いろいろあります。そこがマネージメントの難しさですけども、今から申し上げるいくつかは、もう認定まで完了していて、つまり開発が終わっているものもあります。その中での例が第2段に搭載されるエンジンLE−5B−3で、これは開発が完了しています。試験機の製造につきましても、そういった開発が完了するところを見計らいながら製造が始まっておりまして、ほぼ完成しているものもあります。

 これまで行ってきた試験について、電気系最終システム試験は、これは各電気コンポーネントを三菱重工さんの工場の中で配線を結合して、電気的にロケットを飛ばしています。つい最近ですが、ロケットが軌道まで到達することが確認できました。
 第1段肉厚タンクステージ燃焼試験は、非常に大規模なロケットの模擬的なタンクとロケットエンジンを結合して燃焼試験を続けています。
 これからの試験に向けて準備中のものですが、フェアリング分離放てき試験は本日公開するものです。その他にも固体ロケットブースターの燃焼試験であるとか、(2段)エンジンの試験が引き続き行われます。

 (資料より)1段のメインエンジンのLE−9エンジンですが、これがこのロケットの非常に特徴的な大型のロケットエンジンですが、これの燃焼試験を続けています。ロケットエンジンの燃焼試験は実機型というのと認定型と大きく2つのフェーズに分けて進めていますが、実機型のフェーズが先日終わりまして、合計31回、約3,770秒の燃焼を完了しています。この中には3Dプリンタで作った部品などをふんだんに盛り込んで設計検証をしています。
 固体ロケットブースターですが、燃焼試験を合計3回やるが、このうち2回が終わっていて、これも順調にデータを取得しています。もうすぐこれも完成に至ると思います。
 固体ロケットブースターのコアからの分離試験ですが、合計2回やるのですが、うち1回は完了しまして、いいデータがとれています。もう一回、少しアンバランスを追加した形で挙動を確かめようと思います。
 第1段厚肉タンクステージ燃焼試験(BFT:Battleship Firing Test)ですが、Battleshipは厚肉という意味でして、タンクとエンジンを結合した形で三菱重工さんの田代の試験場で行っています。LE−9エンジンを3機搭載できるようになっていまして、いま3機の形態での燃焼試験を開始しています。日本初のエンジン3機形態での燃焼試験ということで、かなり緊張度が高かったのですが、3機が無事100%立ち上がって、また停止することが確認できました。

 2020年度ですが、一連の試験が終わった後で地上設備の総合試験をやります。エンジンの認定試験はまだ続きますけども、地上総合試験は実際の試験機を使った試験です。地上総合試験で設備とロケットを組み合わせた試験が終わりますと、いよいよ試験機1号機の打ち上げということで、ここに備えて統合を続けていきたいと考えております。

・H3ロケット フェアリング分離放てき試験概要(奈良)
 フェアリングの役割ですけども、ロケットの上端に衛星を取り付けることになりまして、その衛星を所定の軌道に運ぶのがロケットの役割ですが、そのロケットが大気中を飛行する間に風圧を受けます。その空気との摩擦によって生じる熱がありますので、それから衛星を守るためのカバーとしてフェアリングが用意されているということです。ロケットが大気圏外まで上昇すると、役割が終わるのでフェアリング自体は機体から分離され、衛星が見える形でそのあと飛行を続けるというものになっています。
 フェアリング自体は衛星の大きさに応じて、H3ですとロング形態とショート形態を用意して、それぞれの形態を(配付資料の)図に示しております。ロング形態は高さが16.4m、ショート形態は10.4mと、こういった2種類の大きさのフェアリングを用意して、搭載する衛星の大きさに応じて使い分けるということを考えております。
 フェアリングの開発状況ですけども、H3ロケットとして国際競争力を獲得するために、新規技術を導入し、それとともに他機種の開発成果を活用してコストダウンを図ったフェアリングを開発している。そのベースには今まで実績のある既存技術を活用して、品質そして信頼性のあるフェアリングにするというのがまず基調になります。それに加えてコストダウンを図っているというものを現在開発しているということでございます。開発状況としましては、2015年から着手して現在までに要素試験、部分構造試験を経て強度試験まで順調に完了して、今回の分離試験を迎えているということになっています。今後の予定としては、本日の分離放てき試験で開発試験の項目自体は全て確認したということで完了となりまして、このあと試験機1号機の制作を進めて、来年度半ばに種子島に運び込んで打ち上げの準備を進めていくという運びになっています。

 今の基幹ロケットであるH-IIA/Bと今回のH3ロケットのフェアリングにどういった違いがあるかを簡単に説明します。

 ・構造様式
  H3:CFRPスキン/アルミハニカムサンドイッチパネル
   ※CFRPプリプレグ自動積層による低コスト化、脱オートクレーブ法による接着接合技術による軽量化。
  H-IIA/B:アルミスキン/アルミハニカムサンドイッチパネル

 ・形状
  H3:オジャイブ(ダブルコンター)形状 (先端が滑らかな曲線)
   ※空力荷重を低減し、打上げ能力向上。
  H-IIA/B:コーン形状 (先端が直線的)

 ・パネル枚数(1機あたり)
  H3:8枚(大型パネル)(ロング形態)
   ※分割数の削減による組立コスト低減。
  H-IIA/B:20枚(H-IIB 5S-H型)

 内部の寸法は同程度の打上げ能力を有する競合他ロケットと同等とした。
 他のロケットに搭載できる衛星もH3に搭載できる。

 分離放てき試験の目的について。
 ・フェアリング分離機構の作動確認、開頭機構の設計妥当性確認。
 ・フェアリング分離時の挙動、火工品作動時の衝撃環境、装備品・断熱材等への影響評価。

※このあと試験が行われています。

・試験後の現状報告(駒田)
 試験自体は良好に終了して、フェアリングが無事開頭し、キャッチしております。必用なデータの取得も確実に出来ていることを現時点で確認されておりまして、フェアリングの外観上も良好である。現時点で試験は無事完了したことになっています。このあと夕方に向けてクイックのデータの評価を行いまして、明日以降に詳細解析をしていく予定になっております。


・質疑応答
NHK・間近で試験を見られた率直な心境、H3全体の開発状況を見たときに今回のフェアリング試験の成功はどういう意味をもつか。
岡田・私自身フェアリングの分離を見たのは今日が初めてです。さすがに最大級の人工衛星を搭載できるフェアリングだけあって、それなりの迫力をもって動作した。一見して試験そのものは順調にいったようなので、まずは一安心しています。ただH3ロケットの開発は、まだこれから急な坂道を登っていきますので、こういったことがひとつひとつ積み重ねになって、システムとして統合して、最後は打ち上げの日を迎えたいと思っております。一層身が引き締まる思いです。

読売新聞・H3の重要な課題であるコストの部分で、フェアリングのどの部分が大きくて、H-IIA/Bからどれくらい減らしたか。
奈良・(配付資料より)このように取り組んで、CFRPプリプレグ自動積層ですとか、分割数の削減などと、それ以外に細かいところで地道な活動を川崎重工業さんにしていただいております。
駒田・細かな仕様はお教えすることができませんが、一番大きいのは分割数を軽減していることです。20枚のパネルを組み立てていたのを、ロングの形態で8枚ということで、この部分については随分とコストダウンに寄与している所になっています。あと接着構造を使って、従来はボルトで結合していたところをコストダウンと軽量化の両方の目的で対応しています。部品のひとつひとつ、工程のひとつひとつに及んで全部見直しをかけるところもありまして、トータルでそれなりのコストダウンを達成していることになってございます。

読売新聞・コスト半減がH3の目標だが、顧客の手応え。受注拡大に向けて。
岡田・世界の宇宙開発・宇宙利用の状況が大きく変わろうとしていて、今まで大きな衛星だけだった流れが、小型のコンステレーションを大量に輸送するという動きも世の中に出て来ていて、H3ロケットの開発をする中で大きな変化があります。ですから三菱重工さんとJAXAが共同して、こういった世の中の大きな変化、世界の変化にうまく対応しながらロケットの開発をしていくことに、ある種の難しさを感じながらやっています。これが本当の商品開発なのかもしれないですね。さきほどコストダウンの話がありましたけども、コストそのものが設計パラメータになっていて、常に設計審査の場でもコストを議論する、しかもそのコストが今までに無い細かなレベルでの議論をしながら、マーケットインをきちっとやっていきたいと思っています。三菱さんは非常にそこを世界中を駆け回って受注活動をやられていると思いますので、JAXAとしてもそこを支えていきたいなと思っています。
奈良・コストに関しての競争力に関しては、今目標にしているH3のコストは、なるべく競争力をもつ機体にしたいと思っていますし、実際に日本の基幹ロケット、現行のH-IIA/Bは信頼性がありオンタイムで打ち上げられている。その機体に重ねてコストが安いH3ロケットを作っているということを認知されていて、いろんな衛星オペレータを回っていますが、結構高い評価をいただいておりますので、そういったところで今後、商業衛星をとれればいいと思っています。ただ岡田プロマネがおっしゃったように、世界の市況がどんどん変わってきて安い側に振れてきているのも現実なので、そういった状況の変化に合わせて、我々としても継続的な努力をしていかないと競争に勝てなくなってしまうので、そういった取り組みはずっと続けていきたいと考えています。

読売新聞・打ち上げはいつ頃か。配付資料の図では後半になっているが。
岡田・資料の縦の線は気にしないで、だいたいこれくらい。東京オリンピックよりは後だと言わせて下さい。少し落ち着いたらと思っています。

読売新聞・20年か、21年か。
岡田・我々の目指すところは20年度の中で打ち上げると考えている。世の中のロケットがどんどん新しくなっていく中で、マーケティングのタイミングを逃さない目標として2020年度ということで、その中で開発状況を見ながら。それ以外にもいろいろな判断があるので、相談しながら決めていく。

共同通信・フェアリングを2種類用意したとのことだが、大は小を兼ねるということで大きい物を1つ用意した方がコストが安いのではないか。あえて大小を用意した理由は何か。
奈良・衛星の大きさによって2つ用意している。コスト的に大きい物よりも小さい方がそれなりに安い。小さいものに収まるならユーザーさんもそちらを選択したがることもあり2種類用意した。
2種類用意したがショート形態はロング形態の上部に使われているので、全く別の物を用意した訳ではなくて、共通のところを使える。2種類用意したからといってコスト的に大幅なデメリットがある訳ではない。いろんな衛星のタイプに応じて使い分けられる方が自由度が大きいかなと思って、こういった形で準備しています。

共同通信・開発全体の状況については順調に進んでいるのか。
岡田・ロケット開発に順調という言葉はあまりふさわしくなくて、H3の制約の中で、それなりに苦労はしています。その中で政府の部会の中で報告させていただいたのですが、我々としては2020年度の打ち上げ、ここを確実に仕上げるために、ここを登り切ろうということで、例えばロケットエンジンについて2タイプで認定するなど、いろんな方策を持ちながら最後の仕上げをしようとしているとろです。2020年度で打ち上げたいと思います。

日刊工業新聞・フェアリング試験の実施主体と、開発製造での役割分担について。
岡田・H3ロケットの開発というのは、今までのJAXAのロケット開発と違って、プライム開発というスタイルをとっています。それは何かというと、JAXAが地上設備とロケットの全体を開発します。ロケットに関しては、三菱重工さんをプライムコントラクターとして選ばせていただいて、その中で開発が進んでいます。話がややこしくなるのは、ロケットエンジンとか固体ロケットブースターなどのキー技術と言われているものはJAXAが直接開発に携わって各社さんと直接契約しているのですが、フェアリングに関してはキー技術以外のものという扱いで、三菱重工さんのプライム体制の中で川崎重工さんが開発をされているということで、我々からすると川崎重工さんはサブコントラクターにあたります。
奈良・ロケット開発の大きな部分は三菱重工が開発を請け負っていまして、今回のフェアリングはその範囲の中に入っています。その開発にあたっては今までのH-IIA/Bのフェアリングの実績があるので川崎重工さんに具体的な開発をお願いしていることになります。今回の試験自体は川崎重工さんにやっていただいている開発試験の中の一部の試験なので、試験の実行主体に関しては川崎重工さんで取り仕切ってやっていただいているという形です。

東京とびもの学会・H-IIA/BとH3のフェアリングで、形状の違い以外に、水没するようになったのが大きな差だと思うが、水没化のための仕掛けや技術はどんなものか。
駒田・フェアリングの構造としてはハニカムパネルサンドイッチ構造といって基本的には同じ構造でございます。違うところは、ハニカムの中に溝(スロット)を入れてありまして、パネルの中に水が入った後に、ハニカムパネルのセル(蜂の巣構造)の中に海水が通り抜けるようにしてあります。フェアリングに穴を開けてありまして、パネルの中に海水を入れるような仕組みで水没させることになっています。

東京とびもの学会・フェアリングに開けている穴は何カ所もあるのか。
駒田・それほど多くは無いが、それ用の穴は開けてある。

NHK・フェアリングで衛星の包絡域の拡大とあるが、諸元ではH-IIBのものとあまり変わらない気がするが、衛星のしまいかたの問題なのか。スペースはどれくらい広まったのか。
奈良・H-IIA/Bとの比較でいうと、H-IIAで主力の4m径のフェアリングになりますので、それから比べると今回は5.2mの直径になるので、中の包絡域もずっと大きくなりますし、そういった意味で今までよりも広い包絡域を提供できる。他の外国のロケットもこれくらいの広さで提供しているので、それと遜色ないくらいの包絡域を提供しないといけないということで今回のサイズを決定しております。
岡田・見た目ではわかりにくいので大体のイメージでいうと、H-IIAの4S型とH3のロング形態2.2〜2.3倍くらい体積があります。「こうのとり」に使っている5S−Hフェアリングより10%くらい体積が大きい人工衛星が搭載できるような容積があります。専ら人工衛星を投入するのはH-IIAですけども、それのフェアリングで5Sというものがあります。そのフェアリングと比べても1.5倍くらいの容積がありますので、従来からの比較で言うとかなり大きくなっています。

NHK・フェアリングが開頭する仕組みで、どう信号を送っているのか。試験と実機の違いは。
駒田・フェアリングのバネは最初の状態で開くようになっている。フェアリングの分離機構がそれまでは閉じているが、そこが分離してしまうと、その状態でバネはもともと荷重がかかっていますので、その力をもって開く。分離機構が作動するところがスタートになっている。分離機構が発火するのは電気信号です。電気信号で先端の起爆管と呼んでいる部分に通電して、そこを発火させて、それから伝爆していくという仕組みになっています。

読売新聞・フェアリングの厚さはどれくらいか。
駒田・大体40mmくらい。H2と殆ど変わらないです。

読売新聞・現在開発が八合目とのことだが、いちばんの山場になってくるところはどういったところか。
岡田。山を越えると、またその向こうに山が見える。やはり1段エンジンの認定というのがかなり大きな山場だと思います。それから現在秋田の田代で行っているエンジンのタンクと接続したBFT、これをやりきるということ。その後で2段の実際に近い部品を使った試験があります。そういう大規模な試験がこれから目白押しなので、ひとつひとつが山ではあります。あと2回目の確認という意味で固体ロケットブースターの燃焼試験、そして固体ロケットブースターの分離試験、さきほど一通り説明した物のひとつひとつが山です。最後に全部種子島に持っていって、そこで設備と接続して総合試験をするのが、殆ど打ち上げに近いので、最大の山場がそこにあります。

朝日新聞・今回のフェアリング試験の重要度。これが終わったことで八合目と言えるのか。
岡田・時間的に八合目と考えています。ただ、ここからが急峻な山になるので、体感としてはもうちょっと登りがある気がします。時間的には残り二合ですね。フェアリングそのものは、この試験をもって開発完了というところに至りますので、その意味ではひとつ仕上がるとしいう意味で、非常に大きなステップだと思っています。

NHK・今日の試験が完了して設計開発も完了したのか、実験データを解析した後に完了か。
岡田・後者です。今日は最終的な大きな山場の試験が終わったのは事実です。これから先に何週間というレベルで川崎重工さんを中心に解析をまとめて、最後にPQR(開発完了審査)というのを迎えます。川崎重工さんを中心に開いていただいて、三菱重工さんと我々が参加して、最後の設計審査をします。そこで初めて正式に完了となります。

NVS・今日のフェアリングは暗い色だったが、フライトの時は断熱の塗装をするのか。
駒田・今日のものが暗かったのは素材の色です。CFRPの炭素の色が見えていました。実際にフライトする機体の場合は、上の方は断熱材を貼り付けます。下の方は白色の塗装を行います。ですので大体は白い、H-IIA/Bと同じようなカラーリングになってまいります。

NVS・断熱材はどのようなものか。
駒田・シリコン系の断熱材です。

NVS・今回のフェアリング開発で難しかった部分。
駒田・ひとつひとつのステップを刻んでいるという点では、特にどこというのは無いのですが、今回採用したような自動の積層であるとかオジャイブ形状とか、そういったところを慎重に進めてきた。

SAC渡部・大型パネルでコストが削減ができたとのことだが、これはこのフェアリングのために新しく施設を作ったのか、それとも他の製品を作るための施設か。
駒田・後者だが、使ったのはH3フェアリングが初です。

SAC渡部・それは何用の施設か。
駒田・特に何用というのはありません。

SAC渡部・世界の流れとして大型衛星から小型衛星のコンステレーションとのことだが、フェアリングでそのためにこうしたいというものはあるか。
岡田・フェアリング本体では特に無いと思います。ただ小型の衛星を搭載するときは、例えばこのフェアリングの中に30機くらい搭載することになる。その30機くらいを搭載するための柱がいるが、そういったものが別途必要になってくる。それをロケット本体の中の開発と見るか、お客さんが開発されるか、そこはいろんなやり方があると思います。

東京とびもの学会・H-II、H-IIA/Bに引き続きH3でもフェアリングを担当されて、歴史を重ねるにあたってのコメントをいただきたい。
駒田・川崎重工のフェアリングはH-IIからスタートしている。それから30から40年近いところだと思います。その間脈々と開発を続けさせていただいて、その都度新しい技術を入れたり、一方で信頼性を重視して従来の技術を踏襲したりといったところを個別に選択しながらやってきた。そういった意味でH3は、ある意味集大成で感慨深いところは確かにあります。これからも同じようにいい技術をどんどん取り入れて、まだまだ進化したいと考えています。

以上です。


No.2313 :H3ロケット用フェアリング分離放てき試験 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年12月17日(火)19時03分 投稿者 柴田孔明

2019年12月17日11時40分頃に行われたH3ロケット用フェアリング分離放てき試験の様子。場所は川崎重工業株式会社播磨工場です。思った以上に火工品の音が大きいものでした。


No.2312 :今回の軌跡 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年10月15日(火)00時42分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット8号機の軌跡。
長時間露出による撮影。


No.2311 :飛行中のH-IIBロケット8号機 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年10月15日(火)00時40分 投稿者 柴田孔明

飛行中のH-IIBロケット8号機。多少の雲はありましたが、打ち上げからかなり長時間見えていました。